• 投稿日:2024/11/23
  • 更新日:2025/10/09
対人援助職のクレーム対応について解説します!【福祉・心理・各種相談員向け】

対人援助職のクレーム対応について解説します!【福祉・心理・各種相談員向け】

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なう@宿題で土台作り!!

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要約
不当要求お断り!がトレンドの昨今。それでも、公務員や対人援助を仕事にしている人は、来所者のニーズに応えるのが仕事であるため、「要求」と「お断り」の間で悩みを強いられます。その悩みに応えます。クレームは「応じるか、応じないか」ではない。「相手に何を与えるか」こそ大切というお話です。

世間は「不当要求お断り」が当たり前になりつつありますが、なかなかそれが成立しない職種があります。

それは「対人援助職」。

例えば、「市民の困りごと」に対応する公務員、いろいろな相談窓口の相談員、福祉や心理支援に携わる人たちです。

この記事では、「対人援助職」の人たちのクレーム対応が難しい理由と、どのように対応するのが良いか、その方法を解説します。

「対人援助職」のクレーム対応が難しい理由

理由は大きく分けて4つあります。

1.クレームを聞くのも仕事だから

2.そもそも「何かして欲しいことがある人」が来るところだから

3.「与えること」が職業的な役割だから

4.相談者の「権利」や「要求」は主張して初めて認められるから

一つずつ解説します。

クレームを聞くのも仕事だから

相談というのは「悩みは何か」「どうなりたいか」だけでなく「なぜ悩むのか」という話題を当然含みます。

その中に、相談者の「感情」がこもります。精神的な苦しみが深い人ほど、「怒り」や「恨み」、「嫉妬」、「なぜ自分がこんなに苦しまないといけないんだ」という行き場のない「悲しみ」を持ってきます。

そして、それを時に支援者に訴え、ぶつけるのです。「どうにもしてくれないのか!」と。

そんな人お断り?わからなくもないですが、それを言ってしまうと「ある程度、落ち着いた人でないと、相談に来てはいけません」という意味になってしまいます。来所者の選別はできません。

なので、「感情」も受け止めるのが仕事となります。

そもそも「何かして欲しいことがある人」が来るところだから

相談には「困っている人」が来ます。「困っている人」は、誰かの力を必要とし、欲している人です。

行政の支援制度は、基準を満たしていれば受けられます。無料で使える制度もあるし、または医療費などの諸費用の減免が受けられるものもあります。相談者の負担なしで受けられるものもあります。誰かの力には、そういう制度も含まれます。それが欲しくて来所するのです。

また、相談窓口で「一体どうすればいいんですか?」と尋ねる人も、同じです。手っ取り早い方法を知りたかったり、支援者に「面倒なことは代わりにやって欲しい」と思っている人もいます。

「困っている人」は精神的にかなり参っているし、解決が見つからず、苦しんでいます。この「苦しみ」こそが、「何かを提供してもらえる」ことの根拠になっているのです。そして、それは事実です。

「困っている人はご相談ください」。これが相談窓口であり、支援制度の要項ですから、「困っている」を訴えるのは当然です。手に入るまでは。

「与えること」が職業的な役割だから

対人援助職は「与えること」こそ職業です。特に、「面接1回◯◯◯円」みたいな対価型でなく、行政や、相談は無料みたいな窓口であれば、そこの支援者は「無料で与える人」です。

なので、相談者との間で容易に「ひたすらに与える人」「ひたすらに貰う人」という人間関係が出来上がってしまいます。掲げられている看板が、「くれ」という来所者の要求を正当化してしまうのです。

また、これは特殊な例かもしれませんが、子育ての深刻な悩みや、いろいろな障害、高齢のために生活上の苦労を余儀なくされている方などに対しては、相談者が自ら来てもいないのに、支援者側から支援を提供していくこともあります。

社会的な役割として、はっきり欲してもいない方に与えに行くことがある。こういう側面があるのも、「与える人たちなんでしょう?だから貰えるでしょう?」という認識を強める理由かもしれません。

相談者の「権利」や「要求」は主張して初めて認められるから

例えば「申請主義」という言葉があります。「自分はそれを必要としている。受ける権利もある」と申し出ることから、サービスが始まるという意味です。普通のことにも思えますが、中には「受ける権利」に該当しない人も要求してきます。そして、さらにその中に「該当しません」という結果に「納得できない」と怒る人もいます。

主張しなければ享受できないのだから、一定数、この流れになる人がいるのは当然と思えます。

むしろ「自分は該当しないかな」と勝手に判断してしまう方が、利益を受け損ねるわけですから、まずは一生懸命主張する方が正しいかもしれません。

理由まとめ

以上4つが「対人援助職のクレーム対応が難しい理由」です。つまり、一生懸命要求したり、「納得できない」「説明せよ」と訴えたりする正当性が、相談者側にある、ということです。

もちろん「私の怒りをなだめよ!土下座だ」とか「勤務時間じゃないとか知らん。俺の都合のいい時間に電話をよこせ」みたいな「不当要求」の正当性はありません。また、何らかの支援サービスに「該当しません」と言われれば、相談者も引き受けざるを得ないのですが。

支援者と相談者は「giver」と「taker」の関係が前提なので、「はっきり断る」という対応は馴染みません。なので支援者も、葛藤しながら折り合っていくしかないと思います。

では、どうするか。対人援助職のクレーム対応!

結論は「相談者のためになるものだけを与える」ということです。

相談者がものすごく威圧的だったり、またはしつこかったり、本当にかわいそうに感じてしまったり、言葉が巧みで「要求」に若干の説得力を感じてしまったりすると、「断るべきは断る」の姿勢がぐらつくことはあるでしょう。

でも、支援者のポリシーは「相談者の利益」が基本だと思います。なぜなら支援者だから。その場はしのげても、不利益になるものは与えません。

では、支援者が「与えられること」とは、具体的にはどういうことか、例を挙げて解説します。

共感しながら相手の話をよく聞くこと

「共感」「傾聴」といった言葉は、対人援助職の人でなくても聞いたことがあると思います。実はとても難しいのですが、相談対応のイロハの「イ」でもあります。

「困っている人」にとって、自分の話をしっかり聞いてくれる人や、わかってくれる人がいると、感情がおさまって、冷静に物事を考えられるようになるという効果があります。

これも、支援者が「与えられること」です。

内省を促す質問をすること

話を聞きながら、相談者が自分の思考や感情について考え、把握することを助ける質問をすることです。相談者が無理な要求をするとしても、その背景を問うことはできます。「どんなことが不安で心配なのか」「どういう体験から、心配を抱くようになったのか」という掘り下げも良いでしょう。

相談者が冷静に自分について考えることができると、解決について自分の考えを持てるようになることがあります。

問題の整理をする

悩みの深さ、問題の大きさに圧倒されている相談者は、「あれもこれも」と過剰な要求を並べることがあります。解決を「要求」に込めるのです。

傾聴も大事なのですが、「相談者が望んでいる状態はどういう状態?」「目的地はどこ?」と考えることも重要です。「それが、どうなったらいい?」と問うと、相談者も自分の望みがわかるし、少し前向きに考えられるかもしれません。

リソースの提供

これが、いわゆる相談援助のメインパートなのですが、相談者が利用可能な資源を紹介したり、実際に利用できるまでサポートしたりすることです。

相談者の期待とは違っても、他の支援策があるかもしれません。

例外の発見

相談者の話を聞いていると「健康上の問題」を訴える方が、何か活動的な時間を過ごしたエピソードがあったり、「親子関係の悩み」を訴える方が、「ちょっとしたことで親子で笑った」みたいな出来事を語ることがあります。

それが「問題ばかりだ」と訴える相談者の語る「例外」です。この「例外」が「どのように起きたのか」「再現できるか」を考えると、状況を見直すことができるかもしれません。

対応まとめ

以上が、「何を与えるか」の例です。

怒りの感情をぶちまける相談者に譲歩しても、相談者のためになりません。「怒りで人を動かす」というパターンを強化してしまうだけです。

「痛いから、しんどいから、あれして。これして」と要求する方に親切にしたとしても、おそらく「しんどいと言えばなんとかなる」という経験値が上がるだけでしょう。

もっとも、支援者の考えとして、「こうやって親切にすることで、信頼関係を築くんだ」という信条があれば、方法としてあり得ると思いますが。

「応じるか、断るか」ではなく「何を与えられるか」が重要です。

総括

対人援助職の優れたクレーム対応は、鮮やかにクレーマーを撃退することではありません。

支援者と相談者の関係は「giver」と「taker」になりがちなので、怒りをぶつけられたり、不当な要求をされたりする場合も少なくありません。支援者も、心身ともにかなり辛くなります。

それでも、葛藤しながら折り合っていく、そういうお仕事だと言えます。頑張って「相談者のためになること」を求める対応が、優れたクレーム対応となると思います。

対人援助職の皆さま。

相談者のために自分がやっていることに自信を持ちましょう。

相談者の怒りは、本人の事情によるのであり、支援者の失敗によるのではありません。

それでも苦しい時は、人に会いましょう。同じ仕事をしている仲間たち、バイザーや少し先をゆく経験ある先輩と話をすると、自分が間違っていないことがわかります。

怒りやクレームをぶつけられることは苦しいけど、ひとりではなく、支援者自身も誰かに支えられながら働いていくのが良いと思います。

以上です。

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