休む勇気

パン工場の朝は、今日も大忙しだった。

ジャムおじさんは、夜明けとともに目を覚まし、
アンパンマンたちのパンをせっせと焼き上げる。
おなかをすかせたみんなのために、今日もがんばらなきゃ──。

そんなふうに思いながら、
ジャムおじさんは、いつも自分の予定をパンパンに詰め込んでいた。

「もっとおいしいパンを作らなくちゃ」
「みんな、もっと働いてるかもしれない」
そんな気持ちが、心のどこかにあったのだ。

でもある日。
パン生地をこねていたジャムおじさんは、ふと、手を止めた。

胸の奥から、小さな声が聞こえた気がした。

「……もう、動けないよ」

それは、声にならない、かすかな悲鳴だった。

翌朝。
ジャムおじさんは、なかなかベッドから起き上がれなかった。

顔を洗おうとするだけで、涙が出そうになる。
歯を磨く手も、重たくて動かない。

「怠けているのかもしれないな」
「甘えてるだけなのかも」

そんなふうに思って、ますます自分を責めそうになった。
でも、できないものはできない──ただ、それだけだった。

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