• 投稿日:2025/04/30
  • 更新日:2025/09/30
今日の政治 「郵政民営化」を決めたのは、小泉さんでも米国でもなく無知な日本国民説

今日の政治 「郵政民営化」を決めたのは、小泉さんでも米国でもなく無知な日本国民説

ガソダム@高配当株決戦仕様

ガソダム@高配当株決戦仕様

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要約
Es ist nichts schrecklicher als eine tatige Unwissenheit. 「活動的な無知より恐ろしいものは無い」 ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

序章

2005年、小泉純一郎首相(当時)は、
郵政解散」において国民に問いかけた。

郵政民営化を賛成してくれるのか、
 反対するのか。
 これをはっきりと国民の皆様に
 問いたいと思います

この言葉に多くの日本国民は賛同し、
自民党に票を投じる。
その結果、郵政民営化法案は成立し、
実行に移された。

歴史を振り返れば、
ドイツのヒトラー政権の台頭もまた、
民意の産物であり、

いわゆる、
「パワハラ知事」が再選される事例も、
民主主義という賜であろう。

いつの時代も、
ろくに考えもせず、
雰囲気だけで投票する国民によって、
世界は大きく歪んでいく。

国民は口を揃えて
「政治家は責任を取らない」
と、大合唱するが、
国民自身は責任を取るのだろうか。

ビジネスにおいて失敗はつきものであり、
そこから学びが生まれることもある。
だが国家運営における失敗の中には、
取り返しのつかないものがあるのも事実だ。

郵政民営化とは、
民主主義がその「無知の危うさ」によって
いかに大きく揺らぎうるかを示した、
象徴的な事例である。

忍び寄るアメリカの影

郵政民営化を強く望んだのは、
他ならぬ日本国民だった。

しかし、その背後で、
より強くその実現を願っていた存在がある。
それが、アメリカ。

郵政民営化の目的は、
「ゆうちょの使い道」
「サービスの向上」
「税金」などなど、

日本国民は適当なことを言っているが、
アメリカの本当の関心は
かんぽ(簡易生命保険)」にある。

当時、世界でも有数の規模を誇る
日本の保険市場は、
アメリカの保険業界にとって
極めて魅力的だった。

小泉純一郎首相は、
確かに郵政民営化を強く推進したが、
その原案は
アメリカからの提言に端を発する。

「かんぽ」は、
日本政府が直接運営する保険機関であり、
外資にとっては参入が困難だった。

だからこそ、
「民営化」という装いの下に、
その障壁を取り払おうとしたのである。

民営化によって「かんぽ生命」は、
一民間企業となり、
新たなビジネスへの参入が可能となった。

例えば、その一つが「がん保険
しかしこの試みに対し、
再びアメリカからの圧力がかかる。

当時の麻生太郎財務・金融担当相は、
かんぽのがん保険参入を見直す
との意向を表明し、
「かんぽ」の事業拡大は制限された。

その台本を書いていたのが、
アメリカの保険会社──
アフラック(Aflac)である。

巨額の利益を日本市場、
とりわけ
「がん保険」で得ていたアフラックは、
利益の約9割が日本市場によるものだ。

そこに「かんぽ」が本格参入すれば、
その牙城が脅かされる。

日本人にとっては、
海を渡ってきたアメリカ企業より、
国営だった「かんぽ」の方が
圧倒的に信用度が高い。

そこでアフラックは再び、
アメリカ政府を頼り、
それが日本政府に経由され、
「かんぽ」のがん保険は握り潰された。

皮肉にも民営化された「かんぽ」は、
今やアフラックの代理店として、
アフラックの保険商品を販売している。

日本の郵便局は、
いつの間にか
アメリカの保険会社の営業窓口となった。

本来国内で循環すべき保険料は、
今や定期的に海を越え、
アメリカ企業の利益として
吸い上げられている。

その構図が、
日本とアメリカの国力の差を、
静かに、しかし確実に広げている。

毒キノコを生産しだす日本

本来、日本には
「がん保険」という保険文化は
存在していなかった。

実際、がん保険は
世界的にも一般的な商品ではなく、
主に日本や韓国といった
アジア圏に限定された特異な存在である。

公的医療保険が
全国民に整備されている日本社会において、
がん保険のような私的保険の必要性は、
きわめて限定的であった。

ところが、
アメリカ政府の強い要請により、
1995年の保険業法の大幅な改正を経て、

2001年には、
・生命保険会社
・損害保険会社
・損保会社の生保子会社

これらに
第三分野保険の取り扱いが認められ、
多くの保険会社ががん保険などを、
取り扱うようになる。

国民からの希求ではなく、
アメリカの保険会社によって
日本の「がん保険市場」が
人工的に創出された。

アメリカでは、
公的医療保険の不備ゆえに、
医療保険市場は熾烈な競争に晒されており、

民間保険会社は、
より広い市場と高い収益性を求めて
国外への展開を希望していた。

一方で、
十分な社会保障制度が機能していた日本は、
それは本来必要のない輸入文化である。

にもかかわらず、
日本はアメリカの要求を受け入れ、
需要の乏しい保険商品の市場を創出し、
多くの毒キノコを生産し始めた。

すでにお気づきの方もいるだろう。
日本で「がん保険」を作ったのは、
「アフラック」を
日本市場に根付かせるためであり、

郵政民営化は、
アメリカの一企業の
「アフラック」によって仕組まれた。

ここで改めて問い直したい。

郵政民営化に賛成票を投じた日本国民は、
この現実を
どれほど理解していたのだろうか。

小泉純一郎元首相の
「改革」の響きに心を動かされ、

未来への期待を託した人々は、
果たしてこの結果を、
自らの選択として誇れるのだろうか。

それとも今になって、
「アメリカが悪い」「小泉が悪い」と、
責任を他者に押しつけるのだろうか。

郵政民営化は、
アメリカからの外圧と、
日本国民の無知とが結託して進められた、
象徴的な政策であった。

同時にそれは、
民主主義がその成熟を問われた
瞬間でもある。

無知の代償

自らの選択を正当化するためだろうか。
郵政民営化に賛成した多くの国民は、
その是非を問われると、
もっともらしい理由を並べ立てる。

しかし、その大半は事実に基づかない、
いわば「嘘八百」である。

最もよく耳にするのが、
税金の節約になるから」という主張だ。
だが、これは典型的な的外れである。

郵政公社時代、
郵便局の運営には、
国民の税金は
1円たりとも使われていない。

当時の職員は国家公務員であったが、
その給与や運営費用は
すべて独立採算制のもとで、
郵政三事業の収益から賄われていた。

郵政三事業──
「郵便事業」
「郵便貯金事業」
「簡易生命保険事業」

これらが一体として運営されており、
赤字となる「郵便事業」を、
黒字の「郵貯」と「かんぽ」が
支える構造で成り立っていた。

特に郵便事業は、
ユニバーサルサービスの維持という
公共性の高い使命を負っており、

人口の少ない山間部や離島であっても、
全国一律料金で
郵便物を届けなければならなかった。

それは当然、
採算が取れるような仕組みではない。

だからこそ、
三事業をパッケージ化し、
全体としての収益で
赤字部門を補填していたのである。

これは国営事業として
極めて合理的なモデルだった。
しかし、郵政民営化によって
そのバランスは崩壊する。

「日本郵便株式会社」
「株式会社ゆうちょ銀行」
「株式会社かんぽ生命保険」

三分割されたことで、
それぞれが独立採算を迫られた。

問題は明白である。
旧郵便事業を担う「日本郵便株式会社」は、
これまで通り赤字経営が避けられない。

だが、もはや
「ゆうちょ」や「かんぽ」からの
内部補填は不可能だ。

なぜなら、
それぞれには株主が存在し、
黒字を出せばまず
「配当」を要求するからである。

その結果、かつて税金に頼らず
自立していた郵便事業が、
むしろ今や
税金に頼らざるを得ない立場へと転落した。

民営化の名のもとに、
公共サービスの負担が、
再び国民全体に転嫁されるという
本末転倒の状況を招いたのである。

「税金の節約になるから民営化すべき」
という言説は、
根拠を欠いた思い込みであり、

国民の無知が
自らの首を絞めた象徴とも言える。

前提を揃えない比較

日本国民の多くは「民間>国営」という
単純な優劣構造が常識のように語られ、

郵政民営化にも
「競争によって効率化が進む」
と、いった期待が寄せられた。

その象徴が、
海外との単純な価格比較である。

たとえば当時、
封書1通の料金は日本で80円、
アメリカで約40円。

この数字だけを見て
「日本の郵便事業は非効率」
と、断ずる声も多かった。

だが、比較の前提は整っているだろうか。
米国郵便公社(USPS)は、
配達遅延や紛失の苦情が絶えず、
信用面では日本と比べ物にならない。

価格の安さには理由があり、
質を無視した比較は、誤解を助長する。

日本にとっては、
郵便物が期日通り無事に配達されるのは
至って常識だろうが、
海外ではそうではない。

海外に郵便物を送った経験があれば、
日本の郵便サービスの精度が
いかに世界水準を凌駕しているか、
誰もが実感するだろう。

私はebayで
日本の中古カメラを世界に販売している。

コロナ以前は日本郵便を利用していたが、
海外の郵便局に荷物が渡った瞬間、
状況は一変する。

遅配、紛失、破損、水没――
国によっては日常茶飯事だ。

中でもフランスの郵便事情は劣悪で、
配送不能のため、
ebayでは「発送除外国」として
取引そのものをブロックしていた。

いくらお金があろうが、
カメラ愛好家であろうが、
親日家だろうが、
フランスからの注文は絶対に受け付けない。

理由はただ一つ――
郵便の信頼性がないからだ。

この現状を踏まえたとき、
郵政の完全民営化によって、
果たして日本の「世界No.1の品質」は
守られるのだろうか。

民営化とは、必ずしも向上ではなく、
時に劣化の入口であることを、
我々は冷静に見極めるべきである。

おわりに

郵政民営化法案が廃案となるや否や、
小泉純一郎首相は
郵政解散だ」と叫び、
世論を一気に巻き込んだ。

民営化すれば料金は下がり、
 サービスは向上する
――そう信じて、
多くの国民が投票所へ足を運んだ。

しかし現実はどうか。
郵便料金は上がり、各種サービスは縮小。
約束された未来とは、
正反対の結末を迎えている。

本来、公益性を求められる郵便事業は、
黒字経営が難しい構造である。

それを独立採算に委ねれば、
どうなるかは明白であり、
誰かに教えられずとも、
考えれば分かることだった。

これは単に「騙された」話ではない。
国民が、
自ら考えることを放棄した結果である。

かつて
「小泉劇場」で熱狂した有権者たちは、
自分たちで
郵便事業にとどめを刺したにも関わらず、

郵政民営化の失敗を
まるで他人事のように語る。

だが忘れてはならない。
この政策は、
国民自身の手で実行されたのだ。

だからこそ、次代を担う人々には、
この教訓を深く胸に刻んでほしい。

大きな選択を迫られたとき、
感情ではなく理性で、
煽動ではなく思考で、

真に正しい判断ができる社会を、
これからは築いてほしい。


ありがとうございました。

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ガソダム@高配当株決戦仕様

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この記事のレビュー(1
  • 会員ID:nER27GfT
    会員ID:nER27GfT
    2025/06/08

    とっても、参考になりました。来月の選挙が重要っといろんな場所で目にするようになり子供たちに何が残せるだろうと不安になっていました。わたしたちがしっかりと考えなければと思いました。ありがとうございます(⁠◍⁠•⁠ᴗ⁠•⁠◍⁠)

    ガソダム@高配当株決戦仕様

    投稿者

    2025/06/09

    レビューありがとうございます。 前に学長ライブで、 郵政民営化が話題になり、 勢いで書いたものです。 テレビは偏向報道だと よく言われますが、 ネットの方も、 自分の趣味嗜好に偏りがち。 大人も情報選びには、 注意したいですね。 ありがとうございました。

    ガソダム@高配当株決戦仕様

    投稿者