- 投稿日:2025/05/21
- 更新日:2025/10/05

『前歯の治療はインプラントで出来ますか?』
『インプラントが2本必要な場合、費用はどれくらいかかりますか?』
『前歯のインプラントは2本だと見た目が綺麗にならないって本当?』
このようなご質問をいただくことは少なくありません。これまで前歯を2本連続して失った際の治療は、ブリッジと部分入れ歯の2択が常識でした。しかし近年、しっかり噛めるようにインプラントで治療したいという方も増えています。ですがインプラントは高額なイメージがある上、2本必要となると費用面で不安が大きいでしょう。
そこで前歯2本にインプラントを入れる費用相場や、実際の治療内容について、インプラント治療を専門的に行う私が解説致します。
前歯のインプラント治療を検討している方や、費用面などさまざまな不安をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
前歯2本をインプラントにしたいとき、まず知っておきたいこと
前歯2本をインプラントにしたいとき、まず知っておきたいことは、以下の3点です。
・前歯に2本横並びでインプラントを埋入するのは実はレアケース
・前歯のインプラントは「見た目と機能性」が重要
以下でそれぞれ、詳しくご説明します。
前歯に2本横並びでインプラントを埋入するのは実はレアケース
前歯は見た目に大きく影響する場所です。左右対称のバランス、歯の白さ、歯ぐきとの境目など、1本1本が笑顔全体の印象を左右します。
ところが、前歯2本を横並びでインプラントにするのは、実はあまり一般的ではありません。歯間の三角形の歯ぐき(歯間乳頭)をインプラント間で自然に再現するのは非常に難しく、見た目に「インプラント感」が出てしまうリスクがあるからです。
さらに、前歯部は骨の厚みが少ないため、2本を並べて埋入するには十分な骨量が必要になります。
前歯は見た目にかかわる部分なので、できれば天然歯のようにきれいな見た目にしたいものです。しかし、前歯2本を横並びでインプラントを埋入するのはレアケースなのです。
その理由として、インプラントを2本横並びで入れると、天然歯のような自然な「歯間の空間(歯間乳頭)」を再現するのが難しく、人工的な印象を与えてしまうことがあります。
また、前歯は奥歯と比べて歯の幅が狭いため、インプラント2本を並べて入れるには、ある程度の骨幅が必要です。もし十分なスペースがなければ、2本のインプラントが近すぎてお互いに干渉し、将来的なトラブルの原因となる可能性もあります。
実際には、3本以上の前歯を失ったケースで、2本のインプラントを支台として使用し、その間にダミーの歯を補綴する「インプラントブリッジ」が採用されることが多くなります。
歯と歯の間に適切なスペースを保てること、見た目を自然に仕上げやすいこと、強度のバランスがとれることなどがその理由です。
この点を知らずに「2本失ったら2本インプラント」と思ってしまう方も多いため、まずは専門医に相談し、適切な設計を行うことが重要です。
前歯のインプラントは「見た目と機能性」が重要
前歯のインプラント治療では、「見た目」と「機能性」の両方を高いレベルで満たすことがとても重要です。前歯は笑ったときや話すときに自然と見える部分のため、少しでも人工的な見た目になってしまうと違和感を与えてしまいます。
前歯には「噛む」「切る」といった機能もあり、見た目だけでなく、しっかりと噛めることも欠かせません。噛み合わせが不安定だったり、力のバランスが悪いと、インプラントに過度な負担がかかってしまい、将来的なトラブルの原因になることもあります。
そのため、前歯のインプラントは単に歯を入れるだけではなく、周囲の骨や歯ぐきの状態、噛み合わせのバランス、顔全体の印象まで総合的に考えた治療計画が必要になります。
前歯は「噛む」「切る」だけでなく、「笑う」「話す」といった社会的な動作でも目立ちやすい場所です。そのため、ただ歯を入れるだけではなく、以下のような要素を高いレベルで両立する必要があります:
自然な歯ぐきラインの再現(特に歯間乳頭)
噛み合わせの調整と力のバランス
周囲の歯との色・形の調和
表情や発音への影響の最小化
前歯のインプラントでは、機能性と審美性を同時に考えたフルオーダー設計が欠かせません。
2本同時に治療するケースのよくある理由
2本同時に治療するケースのよくある理由は、以下の2つです。
・事故・外傷による欠損
・虫歯・歯周病による抜歯後の治療
前歯を2本同時にインプラントで治療するケースとして多いのが、事故やスポーツ中の外傷などによる歯の欠損です。
このような突発的なトラブルでは、隣り合った前歯が同時に折れたり脱落したりすることがあり、見た目にも大きな影響を与えます。事故後の治療では、機能性だけでなく審美性まで考慮した精密な治療計画が重要です。
重度の虫歯や歯周病が原因で、隣り合う前歯2本を抜歯しなければならなくなるケースもあります。このような場合、見た目や噛み合わせの機能を早く回復するために、2本同時にインプラント治療を行うことがあります。
しかし、虫歯や歯周病で骨や歯ぐきが大きく失われていることが多く、そのままではインプラントを安定して埋入できないことも少なくありません。
前歯2本のインプラント費用の相場
前歯2本をインプラントで治療する場合、費用の相場は一般的に1本あたり35万〜50万円程度が目安となり、2本で70万〜100万円前後が想定されます。
これはインプラント本体(フィクスチャー)、アバットメント、上部構造(人工歯)すべてを含んだ金額となります。ただし、治療に必要な検査や診断、CT撮影、仮歯の作製、メンテナンス費用などが別途かかる場合もあり、最終的な総額はクリニックによって異なります。
また、前歯は見た目の美しさが特に求められる部位のため、審美性を重視したセラミック素材の被せ物を選んだり、歯ぐきの形を整えるための追加処置(歯肉移植や骨造成)を行ったりするケースも多く、その分費用が高くなる傾向にあります。
使用する材料やインプラントメーカーによる費用の差
インプラント治療の費用は、「どの材料を使うか」「どのメーカーのインプラントを使用するか」によって大きく変動します。特に前歯のように見た目が重視される部位では、審美性に優れた素材を選ぶことが多いため、費用に差が出やすいのが特徴です。
上部構造(被せ物)の種類による価格差
ジルコニアセラミック:通常使われて自然な白さ・耐久性が高い
メタルボンド(金属フレーム+セラミック):やや安価で耐久性あり
オールセラミック(金属なし):見た目は非常に自然、費用はやや高め
アバットメント(接続部分)
チタン製:一般的で安定性あり
ジルコニア製:白く目立ちにくいが高価
インプラントの費用は、使用するメーカーによって異なります。
世界的に信頼されているブランド、例えばストローマン(スイス)やノーベルバイオケア(スウェーデン)は、高い品質と長期的な実績があるため、価格は高めになります。
これらのメーカーは特に審美性が重要な前歯治療に選ばれることが多く、耐久性や精度が優れているため安心感があります。
骨造成や歯肉移植、仮歯の有無などによっても追加費用が必要
インプラント治療を行う際、骨造成や歯肉移植、仮歯の有無などによって、追加費用が必要となることがあります。
例えば、インプラントを埋入するために十分な骨の量がない場合、骨造成を行う必要があります。骨が不足している部位に骨を再生させる処置であり、この手術は費用がかさむことがあります。
また、歯ぐきの形を整えるために歯肉移植が必要な場合もあります。
特に前歯などの見た目が重要な部分では、自然な歯ぐきのラインを作るために歯肉移植が行われることがあり、これも追加費用が発生します。
治療の過程で仮歯を使用することもあります。仮歯は、インプラントの手術後に見た目を整えたり、機能を保つために一定期間使用されることが多く、これも別途料金が発生する場合があります。これらの追加的な治療や処置が必要な場合、初期のインプラント治療費用に加えて、さらに費用が発生することを考慮しておくことが重要です。
インプラントブリッジなどで対応する場合
インプラント2本使う場合、前述したように、実際には3本以上の前歯を失ったケースで、2本のインプラントを支台として使用し、その間にダミーの歯を補綴する「インプラントブリッジ」が採用されることが多くなります。
その場合はインプラントの2本の費用に加えて、ポンティックよばれる間をつなぐ被せ物の費用が必要になります。ポンティックの費用は10万〜15万ほどしますので、合計120万ほどになることもあります。
ただしこの方法では3本欠損に対して3本のインプラントを入れるよりも費用的に抑えられますし、審美的にも良好な結果が得られる事が多いです。
技工士の先生の技術
前歯のインプラントは、見た目の自然さが求められるため、技工士の設計や精度も非常に重要です。インプラントやインプラント周囲の歯肉に対する知識があり、審美的に仕上げる技術をもっている技工士の先生に依頼する場合、当然ながら費用は高くなる傾向にあります。
まとめ:
前歯のインプラント治療は、見た目と機能性を高い次元で両立させるために、歯科医師の診断力・技術力、そして設計段階からの丁寧な取り組みが求められます。
ぜひ参考にされてください。