• 投稿日:2025/05/28
  • 更新日:2025/10/10
ChatGPTとNotebook LMを活用した海外工場向け3S教育資料作成の成功体験

ChatGPTとNotebook LMを活用した海外工場向け3S教育資料作成の成功体験

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かばら@プラントエンジニア

かばら@プラントエンジニア

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要約
海外で文化の違う人達にモノを伝えるにはどうすればいいの?? と悩みながらもAI(ChatGPTとNotebook LM)の力を借りることで想像以上の成果を出せた成功体験の紹介です。 テクニックよりはマインドに寄った内容ですが、その分汎用性はあると思います♪

はじめに

(注)本記事はChat GPTやNotebook LMの操作を紹介するのではなく、これらの活用に至った経緯と、どのようなアプローチで取り入れたかの説明を重視しました。私は現在、アメリカの化学工場に駐在する日本人エンジニアとして、業務の一環として現地従業員への教育活動にも従事しています。日本では当たり前とされている5S(特に整理・整頓・清掃=3S)ですが、アメリカの現場ではその概念自体に馴染みが薄く、実践も中途半端な状態が続いていました。もちろん、Sort(整理)/Set in Order(整頓)/Shine(清掃)と対応したコトバはあるのですが、いまいち浸透していない状況でした。従来は、口頭での指示や現場巡回による指摘が主な手段でしたが、効果は限定的でした。そこで、「どうすればアメリカ人従業員に3Sを納得感をもって理解してもらえるか」という課題に対し、AIを活用した教育資料の作成に挑戦し、一定の成果を得ることができました。

以下に、その成功体験とノウハウを共有します。

背景:文化の壁を越えるには?

日本の製造業では当たり前とされている3Sですが、アメリカ人にとっては「なぜそれが必要なのか?」という理解の前提が欠けていることが多く見られます。たとえば、整理=不必要なものを捨てる、という行動に対し「これはまだ使えるから取っておきたい」という感覚が強く、整頓においても「見た目より使えれば良い」という意識が先行します。

こうした文化的な違いを乗り越えるためには、単なる命令やルールの押し付けではなく、「なぜそれが重要なのか」を感情面も含めて伝える必要があります。ここで重視したのが、「感情」や「価値観」の部分まで含めて伝えるというアプローチです。相手がなぜ納得しないのかを丁寧に分析し、単なる指示ではなく「共に考える」姿勢が欠かせません。

メラビアンの法則の活用

急に”法則”とか言い出してこいつ怪しいぞ?と思われるかもしれませんね(笑)
多くのアメリカ人の方と接して感じたのは、彼らは視覚優位ではなく聴覚優位の場合が多いということです。これは文章に起こした資料より、話して・聞かせてようやく理解するということです。
とはいえ「単純な言葉だけでは伝わらない」という実感は、現場で指導していると何度も直面します。
そこで参考にしたのが、心理学者アルバート・メラビアン氏の提唱した「7:38:55の法則」です。これは、好意や印象などの感情が相手に伝わるときに、
・言語情報(言葉の意味):7%
・聴覚情報(声のトーン、話し方):38%
・視覚情報(表情、ジェスチャー):55%
という割合で伝達されているという理論です。この理論は、特に「言葉と表現が一致しない時」に非言語情報の影響が強くなることを示していますが、教育資料でもこの傾向は有効です。特に動画形式では、これら三要素をすべて活用できるため、教育効果が高まります。

メラビアンの法則.jpg

なぜ動画?対話形式が生む共感

3Sを伝えるにあたり、従来の「スライド+ナレーション」形式の教材では限界があると感じていました。特に、アメリカ人にとっては「対話」や「共感」が理解の重要な要素です。

動画形式、しかも2人の登場人物の掛け合い形式にすることで、以下のような効果が得られました。
・表情、声の抑揚、ジェスチャーなどが加わることで、感情が伝わりやすくなる
・掛け合い形式にすることで「なぜ?」に答えながら自然な流れで説明が進む
・自分たちの疑問を代弁してくれる登場人物を通して、視聴者の共感を得やすい

最近のYouTube教育動画でも「キャラクター掛け合い型」が増加しており、視聴者の集中力を保つ手段として有効です。学長の動画でも学長とリーマンくんとの掛け合いを聞くと、より動画に入り込めますよね。
同様に今回の職場での教育動画でも同じように、教育における「納得」と「記憶の定着」に大きく寄与します。言われたことを覚えるのではなく、「腑に落ちた体験」を動画で演出できる点が、特に現場作業者への教育では非常に重要です。
ただしアメリカのビジネスシーンではキャラクターの掛け合いは賛否分かれるため、一般的なコメンテーター同士の会話のような雰囲気になるよう気をつけました。

AIツールを活用した制作フロー

ここからは実際の制作フローの紹介です。

1. ChatGPTでスライドの構成と原稿を作成
最初に行ったのは、ChatGPTに3S教育用スライドの構成案を依頼することでした。「現地のアメリカ人従業員に理解してもらう」ことを前提に、ストーリー構成を組んでもらい、英語での説明文も自動生成させました。
スクリーンショット 2025-05-27 20.18.57.png
*画像は実際に生成したスライドのサンプル
ChatGPTを使えば、ゼロから資料を構成するよりも圧倒的に効率的に作成できます。さらに「Before/After」写真を使った構成提案、「作業者の声」を織り込んだスライド内容など、現場感のある資料作りが可能となりました。

また言語も自由自在なので、ネイティブスピーカーにも伝わりやすい自然な表現に仕上がることもChatGPTを使用する利点だと感じました。

2. PowerPointでスライドを作成し、PDFへ変換
ChatGPTの出力を基にPowerPointで資料を作成した次は、Notebook LMで読み込ませるための準備です。

なぜならNotebook LMがPowerPoint形式やWord形式には対応しておらず(将来的に対応することに期待しています)、PDFや画像ファイルに変換する必要がある点です。ここをもし一部のGoogleサービス(Googleドキュメントなど)でしていれば変換の手間も省けますが、IT系以外の特に化学系工業ではそこまで普及していないという現状もあります。

でもここもChatGPTなら安心。なんとPowerPointのファイルを1ページずつのPDFファイルに変換してくれます!

ただし最終的には目視でレイアウトや変換時の表記ミスを確認する必要があります。これを怠ると、読み上げ内容とのズレが発生し、学習効果を損ないます。

3. Notebook LMで音声スクリプト生成
次は音声スクリプトの生成です。先に書いた通り、あえて「一人語り」ではなく「二人の登場人物による会話形式」にすることで、より自然な疑問や反応を取り入れた説明にしたいと考えました。これはメラビアンの法則でも説明されたように、聴覚・視覚情報を伴うことで理解が深まるためです。

このアプローチにピッタリだったのがNotebook LMでした。Notebook LMは、読み込んだ資料から自動で解説用のスクリプトを生成できますが、これがなんとデフォルトで会話形式なんです!しかも適度に感情の起伏も入っていて、人が会話しているようにしか思えない仕上がりで驚きでした。

「なぜ工具が戻っていないと問題なのか?」「どこまで掃除すればいいのか?」といった、現場のリアルな疑問を会話形式でテーマアップすることで、視聴者の当事者意識を高めることができます。

4. 動画編集と人間による仕上げ
動画編集はAIだけでも可能ですが、この工程だけは私自身の手で行いました。話の間の取り方や、感情の込め方などはやはり人間の感性が重要です。この「ひと手間」で仕上がりの質が大きく変わります。特に今回はアメリカ人向けだったので、彼らの文化的に好まれやすい「演出があってもナチュラルであること」を重視し、リアルなやり取りに近づけました。

5. キャラクター音声で読み上げ(ここは+αのある意味趣味の世界です)
英語版の完成だけで満足できず、生成されたスクリプトを再度ChatGPTに文字起こし+日本語訳をしてもらい、キャラクター読み上げソフトで日本語音声化。掛け合いも日本風にアレンジすることで英語版とはまた違ったテンポが生まれ、聞いていて飽きない動画になりました。作って満足して、世には出していないんですが・・・
(本記事ではキャラクターにはボカシをいれています。)

スクリーンショット 2025-05-27 21.24.15.png

実際の反応と成果

こうして作成した3S教育動画は、現地のアメリカ人スタッフに向けて初めて導入されました。その結果、以下のようなポジティブな反応が多く寄せられました。
「これなら何をやればいいか分かる」
「話し合ってる感じがして、押し付けられてる感じがしない」
「Before/Afterの写真で変化が実感できた」

特に「一方通行の説明よりも、対話形式のほうが分かりやすい」という意見が多く、メラビアンの法則が実地でも有効であることが実感できました。

さらに、現場では以下のような行動変容も確認されました:
・整理整頓を意識した作業前点検が増えた
・清掃活動の頻度が増加し、汚れの放置が減少
・チーム間での3Sに関する情報共有が活発化

注意点と今後の展望

AIツールを活用する上での注意点もあります。
・社内ポリシーに反しないよう、機密資料を読み込ませる前に確認すること
・Notebook LMはPowerPoint形式を直接読み込めず、変換作業が必要
・AIが出力する内容は100%正確とは限らないため、人間による最終確認は必須

また、序盤で述べたように対話形式やキャラクター読み上げが全ての対象者に常に適しているとは限らないため、受講者の年齢層・文化背景に応じたカスタマイズも検討する必要があります。

どこの企業にも共通するテーマの動画を各種作成すれば、BtoBでの教育ビジネスの一角にも切り込める余地があると感じています。しかもグローバルに!

結論:AIは教育の伝達力を高める強力なツール

AIの力を借りれば、言語の壁を越えた分かりやすい教育資料の作成が短時間で実現可能になります。しかし、最後に人が「感情」を込めることで、伝わり方はさらに深まります。動画教材がただの説明手段ではなく、受講者に「納得」と「行動」を促す体験となるためには、AIと人のハイブリッドが欠かせません。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が同じような立場で海外で苦労されている駐在員や教育担当者の参考になれば幸いです。

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