- 投稿日:2025/06/10
- 更新日:2025/10/09

どれくらい簡単なの?
どの世界でも「プロ」と聞くと何年もかけてやっと到達できる領域のように感じます。
プロ野球なんかは甲子園に出てドラフト指名されて、
それでやっとなれますからね。
でもボクシングの世界は違います。
はっきり言います。未経験でもがむしゃらに頑張ればたった1年でプロライセンスを取得できます。
他のスポーツに比べるとあっけなくプロになれてしまいます。
ただ、この1年間のほぼ全てをボクシングに費やすことが条件です。
プロライセンス取得が簡単である背景には
やはりお金の問題があります。
本当にライセンス取得は簡単なの?
ライセンス取得は昔に比べて簡単になってしまいました。
理由は放送とスポンサーです。
20,30年前はライセンスの取得が難しかったと聞きます。
しかし昔と比べて圧倒的に合格の難易度が低くなりました。
40代以上の世代の人達なら実感してくれると思いますが
ボクシングをテレビで見る機会が少なくなりましたよね。
20年程前まではボクシングに限らず格闘技の放送が盛んでした。
大みそかになると「どのチャンネルを見ても格闘技」なんてことがありました。
昔は「日本チャンピオン」決定戦をテレビで見ることができましたが、
今では「世界チャンピオン」決定戦ですら見ることがなくなりました。
それに伴い、有名選手がいなくなってきました。
皆さんは日本人の現世界チャンピオンをどれだけ知っているでしょうか。
2025年6月現在の現世界チャンピオンの名前を挙げて見ます。
・井上尚弥
・寺地拳四郎
・中谷潤人
・矢吹正道
・武井由樹
・堤聖也
これは過去にチャンピオンになった人たちではなく、今現在チャンピオンとして現役で活躍されている選手達です。
実はこんなに世界チャンピオンがいるのに、
有名なのは井上尚弥選手だけです。
それだけメディアが放送しなくなったんですよね。
世間からの注目が無くなると、当然企業からの出資が減ります。
企業が集まらなくなると、選手たちにお金が回らなくなります。
僕もファイトマネーを受け取りましたが、1試合で5万円だけをもらいました。
ボクサーは健康面を考え、1年間に多くても3回しか試合に出場できません。
なのでボクサーとしての年収はたったの15万円
とても少ないですよね。
収入がないとボクシングを続けることができなくなります。
当然ボクサー達は生活苦で辞めていきます。
試合をして初めてボクシング市場にお金が流れて来ますが
選手人口が減ると試合数が減り
お金が流れてこなくなります。
なのでボクシング市場の縮小を避ける方法として、
プロライセンス合格のハードルを下げ、プロボクサーの人口増加を図りました。
それにより一昔前に比べ簡単にライセンスを取得できるようになりました。
ライセンスを取得するまでの条件
これは残念ながら地域によってかなり差が出ます。
まず地域差の無いものから説明します。細かい条件はその年によって変わるので、あくまで参考としてみてください。
年齢
プロテストを受けるには年齢制限があります。
満16歳~満34歳まで。
35歳になるとプロテストを受けることができません。
更にボクサーは37歳で定年となり、プロライセンスは自動的になくなります。
年を取ってからの殴り合いはそれだけ危険と言うことですね。
健康面
プロテストを受ける前に簡単な健康診断を受けます。
健康診断は「日本ボクシングコミッション」が指定する病院で、定められた検査項目を受けます。もちろん自費です。
この健康診断に引っかかるとプロテストを受けることができません。
話は脱線しますが、今YouTubeで注目されているブレイキングダウンは健康診断をしているのか心配です。
この健康診断は選手の命を守る上でとても大事です。
例えば生まれつき頭に静脈瘤をもっている人がいますが、
その人が頭に衝撃を受けると
静脈瘤が破裂し命を落とします。
なのでプロになる上でとても大切な診断となります。
続いて地域によって差がある条件を上げていきます。
基本的には大都市が有利です。
プロ登録されているボクシングジムに所属する
ジムにも種類があります。
エクササイズ目的のジム
アマチュア育成(主に学生)のためのジム
そしてプロ登録されているジム等です。
プロテストの受験資格要件には
プロ登録されているジムへの入会が必須
とあります。
ジムが集まっているのはもちろん大都市です。
特に東京はジムが密集してます。
しかし地方に行くとものすごく数が少なくなります。
プロテストを受ける
これが地域で最も大きく差が出る条件です。
プロテストは全国一斉に行われるわけではありません。
地域によって全く頻度が違います。
東京では毎月一回あります。
大阪では2カ月に一回あります。
それ以外は半年に一回、
一年に一回なんて地域もあります。
なぜこんなに差が出るのか、これは
①試験内容と
②「プロ登録されているジム」の量
に関係があります。
試験内容は筆記と実技です。
筆記は名前さえ書けばほぼ合格です。
問題は実技です。
実技は受験者どうしでスパーリングをします。
これは僕がプロテストを受験したときの動画です。
安全面を考えて、できるだけ体重の近い受験者どうしでスパーリングをします。
この時に人数が十分集まっていないと、近い体重の者どうしの組み合わせができません。
地方はプロ登録されているジムが少ないので
必然的に受験者が少なくなり、せっかくテストを開催しても試験ができなくなります。
そのためどうしてもテストの回数が少なくなります。
もしかしたらプロテストが無い地域があるかもしれませんし、今後無くなっていく地域もあるでしょう。
ボクシングの世界でこれだけ選手が集まらないのだから、
他のマイナースポーツはもっと厳しいと思います。
特に金銭面で。
これらの条件がわかった上で、
プロになるまでどんな生活をおくっているのか
これをちょこっと紹介します。
プロボクサーになるための生活習慣
ほとんどの人がアルバイト生活です。
理由は練習時間の確保ができるからです。
ジムによって練習方法は違うと思うのですが、
僕のジムでは
早朝6:30~7:15まで走り込み
夕方18:00~20:30まで練習
これを毎日こなします。
この練習に全て参加しようと思うと、ジムの周辺に引越し、その周辺でアルバイトを探すことになります。
僕はもともと銀行員だったのですが、仕事が終わって家に帰ってくると
20:00になっていたので練習に参加することができません。
仕方なく仕事を辞めました。
そこまでしてボクシングを始めた理由はこちらのブログに載ってます。
「かっこいい父親になりたくて、銀行員を辞めてプロボクサーを目指す」
練習時間に合わせて出勤できるのであれば
わざわざ仕事を辞める必要はないと思います。
練習内容はどこのジムに行ってもやっていることはほぼ同じで、
縄跳び
シャドーボクシング
サンドバッグ
ミット打ち
スパーリング
筋トレ
これらの同じサイクルを毎日がむしゃらにこなします。
ここで問題になるのがスパーリングです。
小規模のジムはあまり選手を抱えていません。
スパーリングをしたくても、自分の体格と技術に合った選手がいないので、
他のジムに出稽古をしに行くことになります。
収入が少ない中、交通費はとても痛手になります。
更に移動時間ももったいないですね。
幸い僕が所属していたジムは選手がたくさんいたのでスパーリング相手には困りませんでした。
なのでできるだけ選手層の厚いジムに行くことをお勧めします。
ボクシングトレーナーも実は厳しい
初めてジムで練習したとき、僕のトレーナーはボクシング経験がありませんでした。
ボクシング好きの理学療法士の先生が僕の担当トレーナーでした。
これにはとても驚きました。
確かに体の使い方などを勉強されてはいるのですが、
未経験者にボクシングを教えてもらう日が続きました。
僕のジムには何人かのトレーナーがいましたが、プロ経験が無いトレーナーばかりでした。
更にトレーナーを本業としてる人は一人だけ。
ほぼ全員副業でトレーナーをしていました。
ここにもお金が関係します。
そもそも選手に回すお金が無い中で、トレーナーに十分なお金を出すことはできません。
恐らく月給8万円くらいです。
ボクシングトレーナーはほぼ趣味の領域です。
特に専門的な知識があるわけではないので
トレーナーたちも我流で筋トレを教えて、我流で栄養学を教えます。
そんなトレーナーたちに囲まれているので、減量前の食事は主にファミチキなんて選手もいました(笑)
絶対だめですよね。
専門的な筋トレ、栄養学を学びたければ
自分でお金と時間を使ってどこかのパーソナルジムに行くしかありませんでした。
これもアルバイト生活をしている選手にはとても厳しい。
でもプロのライセンスを取ることだけが目的なのであれば、中学校で教えてもらうレベルのトレーニングと、家庭科の授業で習う栄養の知識だけで十分です。
専門的な知識を使って毎日を過ごしているのは世界チャンピオンくらいです。
まとめ
プロテスト難易度
30歳からでもプロボクサーになれます。
理由は合格基準が低くなっているからです。
大げさではなく1年間くらい頑張ればプロライセンス取得のレベルに達します。
お勧めのジム
都市圏にジムが集中しており、それによりテスト開催の頻度も変わります。
お勧めは都市圏のジムです。
その中でも選手が多いジムをお勧めします。
スパーリング相手の見つかりやすさは成長のスピードに大きく影響します。
なのでできるだけ都市圏且つ選手層の厚いジムを選びましょう。
もし所属するジムにちょうどいい相手がいなかったとしても、都市圏であれば少し移動するだけでスパーリング相手が見つかります。「都市圏のジム」は最低限押さえておきましょう。
金銭面
基本的に注目されていない人がボクシングの世界で収入を得ることはできません。
アルバイトの収入で賄えるくらいまで生活費を抑える必要があります。
ちなみに日本チャンピオンでもアルバイト生活です。
世界ランクに入ってもアルバイト生活をしている人がいます。
練習内容
早朝ランニング
シャドーボクシング
サンドバッグ
ミット打ち
スパーリング
筋トレ
この流れはどこのジムに行っても一緒ですし、レベルが上がっても基本的な流れは一緒です。
特にプロライセンスを目指すだけなら特別な練習は必要ありません。
していることは簡単ですが、ライセンスを取るまでの1年間はとてもしんどくなることは覚悟しておいてください。
最後に
何か強い想いがあるのであれば別ですが、ライセンスを取るだけが目標であればあまりボクシングの世界はお勧めしません。
十分な技術を習得しなくてもライセンスを取れてしまいます。
実際道端で悪い人に絡まれた時に、
自分のボクシングスキルが全く使い物にならないことを強く実感すると思います。
正直誰も守れません。
喧嘩が強くないのに
身を守るために殴り返してしまうと
過剰防衛として逆に罪に問われます。
ライセンス取得レベルではパンチなんて避けれませんし、ガード技術も不十分です。
さらに使い物にならない上に、練習中に死ぬリスクも抱えています。
実際僕と練習していた人が、早朝に様子がおかしいことを母親に発見され救急車で運ばれていきました。
少し遅れたら死んでたらしいです。
一命はとりとめたのですが、一生ボクシングができない体になりました。
ボクシングはそれだけ危険な競技です。
相当な覚悟を持って挑んでください。
これだけのリスクや困難を乗り越えてボクシングの世界は成り立っています。
あのリングに上がる人たちには大きな覚悟があります。
例え面白味の無い試合であっても、あの場所に立つだけで尊敬に値します。
殴り合いは確かに見てても怖いですが、
必死で生き様を表現していることを感じ取れると、
ボクシングの見方が少し変わりませんか??