• 投稿日:2025/06/20
  • 更新日:2025/10/04
鍼灸治療はなぜ効くのか 鍼灸によって引き起こされる身体の生理反応

鍼灸治療はなぜ効くのか 鍼灸によって引き起こされる身体の生理反応

  • -
  • -
りょうすけ@ツボに鍼刺す鍼灸師

りょうすけ@ツボに鍼刺す鍼灸師

この記事は約4分で読めます
要約
今回は少し治療家目線の話となりますが、なるべく一般の方にもわかりやすいよう書いたつもりです。 困ったときにどこで治療を受けるか、その参考になれば幸いです。

こんにちは。大阪府堺市で一人鍼灸整骨院を運営している、りょうすけです。

この記事は、私自身のアウトプットも兼ねていますので、少し専門的な治療家目線の内容も含まれます。

近年は「骨盤矯正」「姿勢矯正」「美容整体」「自律神経を整える」などをうたった治療院が増えていますよね。
もちろん、どんな施術であっても、患者さんが満足し、身体が良くなっているのなら素晴らしいことだと思います。

ただ今回は、もう少し根本的な、“生理学的な観点”から鍼灸治療の効果についてお話します。

鍼灸治療で期待できる3つの効果

血流が良くなることで、筋肉のコリが改善される

鎮痛効果(痛みをやわらげる)

自律神経のバランスが整う

看板やSNSなどでよく見かける表現ですが「なぜそれが起こるのか」を
ご存じでしょうか?
ここからは、その仕組みを生理学的に解説します。

① 血流が良くなる理由

人の体には「ポリモーダル受容器」というセンサーがあります。
これは痛みを感知する神経受容器で、以下のような刺激に反応します。

・鍼や圧などの「機械的刺激」
・熱(43度以上)などの「温熱刺激」
・炎症物質(ブラジキニンやプロスタグランジンなど)の「化学刺激」

鍼を打つことで、身体にごく軽い“傷”がつきます。すると

①ポリモーダル受容器が刺激を受ける
②局所に軽度の炎症反応が起こる
③炎症に伴い血管が拡張し、血流が増加する
④酸素や栄養が患部に届きやすくなり、回復が促進される

鍼治療のあと、一時的に「少し痛みが増したように感じる」ことが
あるのは、この炎症物質の影響です。
これらは血流を増やす一方で、痛みを感じやすくする性質もあるためです。

② 鎮痛効果がある理由

鍼灸が「痛みをやわらげる」とされるのには、以下のような生理学的根拠があります。

● 内因性オピオイドの放出

鍼を打つことで、脳や脊髄からモルヒネ様の鎮痛物質(内因性オピオイド)が放出されます。
代表的なものにはエンドルフィンやエンケファリンがあり、これらは
神経の痛み信号の伝達をブロックします。

つまり「脳が鎮痛スイッチを入れてくれる」という状態です。

※あくまで体内で作られる物質ですので、モルヒネのような薬物とは
異なり、安全です。

● ゲートコントロール説

子どもの頃、「痛いの痛いの飛んでけ〜!」と、親にさすってもらった
経験はありませんか?
実はこれ、生理学的にも正しい鎮痛メカニズムなんです。

痛みの信号は、脊髄の「ゲート(門)」を通って脳へ届きます。
このゲートには「痛みを通すかどうか」を調整する仕組みがあり、
皮膚をこするような“触覚刺激”があるとゲートが閉じ、痛みが感じにくくなることが知られています。

鍼やマッサージも、この“触覚刺激”として働き、痛みの緩和に効果があると考えられています。

③ 自律神経が整う理由

治療院のキャッチコピーでよく目にする「自律神経を整える」。
でも「なぜ整うのか」まで説明されていることは少ないですよね。

私が現場で感じている答えは、“筋肉がゆるむから”です。

● 筋肉と自律神経は連動している

人は緊張しているとき、肩や首、背中の筋肉に力が入り、ガチガチに
なります。
このとき、交感神経が優位(=ストレスモード)になっています。

逆に、筋肉がゆるむことで心身の緊張がとれ、副交感神経が優位(=リラックスモード)に切り替わるのです。

鍼灸やマッサージの後に「よく眠れる」「気分が落ち着く」という声を
いただくのも、こうした生理学的な反応のあらわれです。

まとめ

鍼灸治療は、ただ「なんとなく効いてる気がする」ものではなく、
身体の自然な生理反応を引き出すことで効果を発揮している治療法です。

・ポリモーダル受容器の刺激 → 血流促進
・内因性オピオイドやゲートコントロール → 鎮痛作用
・筋肉の弛緩 → 自律神経の安定化

こうしたメカニズムを理解していただければ、鍼灸治療がもっと身近に、そして信頼できるものとして感じてもらえると思います。

ブックマークに追加した記事は、ブックマーク一覧ページで確認することができます。
あとから読み返したい時に便利です。

りょうすけ@ツボに鍼刺す鍼灸師

投稿者情報

りょうすけ@ツボに鍼刺す鍼灸師

パンダ会員

この記事に、いいねを送ろう! 参考になった記事に、
気軽にいいねを送れるようになりました!
この記事のレビュー(0

まだレビューはありません