- 投稿日:2025/06/18
- 更新日:2025/09/29

はじめに
「最近、子どもが話してくれない」
「ちょっとしたことで怒ったり、泣いたりするようになった。」
思春期に入った発達障害の子どもに戸惑っていませんか?
発達の特性があるからこそ、思春期には自己否定や不安が強くなりやすく、親としてどう関わるべきか悩みが増える時期です。
この記事では、発達障害の子どもに特有の思春期の心の揺れと、親ができるちょうどよい寄り添い方を体験談を交えてご紹介します。
1思春期の発達障害の子が抱える心の葛藤
思春期になると、発達障害の子どもも次のような葛藤を抱きやすくなります。
・「友達とうまく話せない」「みんなと違う」と感じ、孤独や自己否定に陥りやすい
・気持ちをうまく表現できず、感情が爆発しやすくなる
・自立したい思いはあるが、環境の変化に強い、不安を感じやすい
・「なんでできないの?」という声かけに、心を閉ざしてしまう
2親の“よかれと思って”がかえって逆効果に!?
思春期の子に対し、親がついやってしまう対応が、子どもの心を追い詰めてしまうこともあります。
親の言葉 子どもの受け止め方
「みんな頑張ってるよ」 → 「やっぱり自分だけできない」
「学校くらい行きなさい」 → 「気持ちを無視された」
「話さないとわからないでしょ」→ 「わかってくれない」と
シャットアウト
発達障害の子どもは「わかってほしいけど説明できない」ジレンマに
苦しんでいることも。問い詰めず、焦らず、理解しようとする姿勢が
信頼につながります。
3発達障害の子に必要なのは「見通し」と「安心感」
不安を減らすためには、次のような対応が効果的です。
💡考え方のバリエーションを伝える
自分の考え方に固執したり、0か100の思考だけではなく、いろいろなパターンの考え方を示す
💡「今ここでできていること」を整理する
自分の取り組みに対して、今ここでできていることに焦点をあてたり、今の自分のペースを大切にする、その積み重ねが成長につながるということ確認する。
💡結果より"プロセス”をほめる
「自分から準備してたね」「イライラしたけど、落ち着けたね」など、行動の変化に注目。
4家を「安心の避難所」にしよう
外の世界で頑張っている分、家では素の自分でいられる場所が必要です。
💡家庭でできる工夫
・「怒っていい」「泣いていい」など、感情を否定しないルール
・静かに1人で過ごせる時間・空間を用意する
・親も完璧を目指さず、「一緒に成長していこうね」を伝える
5体験談《中2娘(自閉スペクトラム症)の場合》
自信があることだからこその自己否定
中2の娘(現在高1)は、イラストを描くのが大好きで、自分のペースで描くことが中心でSNS投稿のイラスト、ゲームキャラクターを模して楽しんでいました。
そんな娘がある日、「私よりイラストが上手な人がいて嫉妬している。人生終わった。もう何もやる気がしない。」と私に号泣して怒りをぶつけました。
突然のことで私も戸惑ってしまいました。娘は学校への行き渋りもあり、自分は他の人と違うことに悩んでいましたが、そんな娘にとってはイラストは思い入れが強く、大切な自己表現でもありました。娘はオリジナルのキャラクターを生み出したり、表現力も格段に上がっていると感じている一方、SNS等の投稿を見て自分の絵と比較し、なんで自分も同じように描けないんだと極端にモヤモヤし、さらに自己否定をするまでになっていたようです。
「他の人と比べなくてもいいんじゃない?」で火に油を注ぐ
イラストがうまく描けないと落ち込む娘に慰めるつもりで「他の人と比べなくてもいいんじゃない?」と伝えると「比べたくなくてもどうしても見ちゃうんだよ!嫉妬で頭がいっぱいになっちゃうんだよ!!」と逆に怒らせてしまい自分の部屋にこもってしまいました。私も家事をしていて余裕がなく、娘が抱えた悩みについて一緒に考える姿勢がなかったことに大反省・・・(話が拗れる時はだいたいお互い余裕がない時間帯です)
「ちょうどよく向き合う」を意識して話し合う
しばらく経ってまた同じようなことがあり号泣。今度はまず気持ちが落ち着いたところで、改めて娘と話し合う時間をとりました。まず「自分の悩みを言葉にして話してくれたんだね」と伝えると「他の人に嫉妬している自分が嫌いになっていたから話を聞いて欲しかった。」と冷静に自分の気持ちを話してくれました。その後3つの気持ちについて紙に書き出しながら話し合いました。
①他の人に嫉妬してしまうことについて
「人に嫉妬することもだめだし人を嫉妬している自分も嫌いになる」という娘の言葉に対して
→「人を嫉妬することは自然なことだし、そういう感情を持ってはいけないということもない。嫉妬しているんだなと気づいていることがすごい!その気づきから自分はどうしたいんだろうと苦しくなったらまた一緒に考えよう」
と伝えました。大人でもそういうネガティブな感情を昇華するのに時間がかかったり、人に話すことでスッキリしますよね。ネガティブな感情を誰かに話すことで気持ちが軽くなったり、そういう感情を持っても自分自身を寛容に受け入れることでその先を考えられるのかなと思います。(子どものストレスを受け止めるので、保護者はなかなかハードな作業ですが・・・😅)
②“今描きたいこと”の今に注目する
「このまま練習していてもSNSで見た人みたいにうまくなる気がしない。練習したいけどめんどくさい」
→娘はたまにこの「めんどくさい」という言葉を使います。イラストやあらゆることが努力を必要とすることが多いですよね。娘の場合はその努力の具体的な積み重ねをイメージすることが苦手なのと、自分が描きたいものへのこだわりやブームが明確にあるので、どうしても自分のペースで進めたいようなんです。それなのにどのように練習したらいいのか見通せない、練習して本当に上手になるのかという漠然とした不安があります。
娘の言葉を受けて、自分自身がうまくなった描き方・今練習している、しようとしていることを考えてもらいました。具体的にたくさん出てきたので、それが今まで自分なりに努力して上達してきたこととちょっと先の目標=“今描きたいこと”になるね、今を積み重ねていけたらいいよね、と確認しました。
③他の人のイラストは参考に。前の自分と比べることを確認する
「みんなうまくなっているのに私今まで何してきたんだろう」
娘はとにかく絵を描くのが好きで小さい頃からひたすら女の子を描いたり、ゲームキャラクターの2次創作をしたりと、膨大な量と時間をイラストに費やしてきました。そんな姿を見てきたので、その素晴らしい表現力に自信を持って欲しいと思っているのですが、やはりそこは思春期の成長や特性ゆえの不安定さから、かなり気持ちが揺らいでいたようです。 娘には、「他の人と差じゃなくて違いがあるとは思うよ。小さい頃からずーっとイラストを描いてきて今はこんなに細かいところまで描いてるよね。何時間も試行錯誤して完成させるなんてなかなかできないよ!少し前の○○ちゃんと比べてみても全然違うと思うよ。」と話しました。
前の自分と比較して今の自分は成長したなと自信をもってもらいたい!そんな思いで話をし、娘も「そっか、どうしても嫉妬しちゃうんだよね。でも確かに沢山イラストを描いてきたしうまくなってるよね。」と気持ちを持ち直しました。
その後もこのやりとりは軽く5回はしました笑 何度も泣いて怒ってその度に話し合いました。(目で見てわかりやすいように話し合いの要点の図解を書くと、スムーズに気持ちの整理ができました。)
現在は高校生になりましたが、相変わらず他の人のイラストに嫉妬することはあるようです。でも以前のようにその思考から抜け出せなくなることは少なくなりました。マイペースに学べるようにイラストのキャラデザインや構図の本を買ってと自分なりに工夫してSNS等との距離をとっているようです。自分の気持ちに気づくようになったのは大きな成長だなと感じています。
🩷おわりに
思春期の発達障害の子どもは、誰よりも繊細で、誰よりも「自分らしく生きたい」と願っています。
でもその気持ちをうまく言葉にできず、反発や沈黙という形で表してしまうこともあります。
親としてできることは、“正しさ"を教えることではなく、「あなたのことを理解しているよ」「どんなときも味方だよ」と伝え続けること。
うまくいかない日があっても大丈夫。
「一緒に生きていく」関係を大切に育んでいきましょう。