- 投稿日:2025/06/21
- 更新日:2025/10/08
※この記事は、施術者向けの内容です。
一部に医学的な表現を含みますが、専門職同士の見立て・戦略を共有する目的で書いています。
ご了承のうえ、お読みいただけますと幸いです。
はじめに|学長の一言から始まった妄想
朝のライブ配信(6月19日)
視聴者さんの「ヘルニアで寝込んでます…」というコメントに対して、
学長がポロリとひと言。
「僕もなんですよー2年前にヘルニアやってて、最近またちょっと痛くなってきてるんよね」
その後、話は、
「学長の腰の痛みを改善する天下一武道会、やろうかなー」という流れに(笑)
──そこで、勝手に妄想が始まります。
もし自分が学長を担当したら?
✅ 僕なら、どう見立てる?
✅ どう判断し、どう提案する?
✅ そして、どんな“技”で回復の道を支える?
僕は理学療法士。
整形外科クリニック勤務時代には、毎日のように「腰部椎間板ヘルニア」と診断された患者さんのリハビリを担当してきました。
まず、前提を整理する
「腰部椎間板ヘルニア」は医師がつける病理学的な診断名です。
大切なのは、それが今の痛みと本当に関係しているのか?を見極めること。
実際には、画像でヘルニアが確認されても
✅ 無症状の人もいる
✅ 症状と画像が一致しない人もいる
✅ ヘルニアが吸収されているケースも多い
だからこそ、医師の診断を尊重しながら、身体機能障害の有無・種類を見極めることが理学療法士の仕事になります。
画像と一致する場合は?
たとえば、L5/S1の外側型ヘルニアなら、L5神経根が障害される可能性があります。
L5神経は、お尻〜太もも外側〜足の甲にかけて感覚・運動を支配しているため、
感覚異常(しびれ・違和感)筋力低下(足首や足指が動かしにくい)腱反射の低下
といった変化が確認できれば、画像所見との一致性が高いと判断されます。
この場合、マッケンジー体操のような「病理に合わせたセルフケア」が有効と言われています。
僕はあくまで医師の方針をサポートする役割に徹します。
一般の方向けヘルニア解説
私たちの背骨の下の方には「腰の骨(ようつい)」があります。
これは1番〜5番までの骨が並んでいて、その下に「仙骨(せんこつ)」という骨が続いています。
それぞれの骨のあいだには、クッションのような“椎間板(ついかんばん)”がはさまっていて、
体を動かしたり重さがかかったときの衝撃をやわらげてくれます。
でも、このクッションがつぶれて飛び出してしまうと、すぐ近くを通っている神経に触れてしまい
おしり太ももの外側すね足の甲などに「しびれ」や「違和感」、「力が入りにくい」といった症状が出ることがあります。
これがいわゆる腰のヘルニアです。
一致しない場合は?
ここからが、僕の得意分野。
「本当に今の痛みはヘルニア由来なのか?」
それとも、身体機能の問題(動き・筋肉・神経系の働き)なのか?を判断します。
どうやって判断するのか?
カウンセリング
目的は、病名を追いかけることではなく
身体機能の障害を見極めるための対話です。
たとえば、
どのタイミングで痛みが出るのか?
動作の中で痛みが強くなる場面は?
生活背景や再発歴は?
回避行動や代償動作のクセはあるか?
などを丁寧に聴き取ります。
身体機能検査
痛みや不調の“真の原因”を見極めるために、以下の6つの視点から体を丁寧に観察・評価します。
姿勢
立位・座位などでの体のバランス、アライメントの崩れ、左右差をチェック。
自動運動
自分で動いたときに、どの方向で痛みや可動制限が出るかを確認。
他動運動
施術者が関節を動かしたときの硬さや可動域の制限、終末感などを評価。
抵抗運動
筋力を発揮してもらいながら、痛みの出方、出力の左右差、筋の反応をみる。
触診
皮膚・筋肉・関節の緊張、圧痛、滑走の状態を手で直接確認。
他動的副運動(Joint Play)
関節の“遊び”を確認する検査です。 通常の可動域では感じにくい「わずかなすき間の動き(副運動)」を確認し、関節の柔軟性や滑りの異常をチェックします。
さらに深く──分類法を活用して分析
具体的には以下のような分類で見ていきます。
痛みの原因を見極め、最適な施術を考えるために、僕が活用しているのが「分類法」です。
以下に、それぞれの分類法の特徴とイメージを文章で紹介します👇
▪サーマン分類(運動機能障害マネジメント)
神経・筋・関節のうち、どのシステムに異常があるかを見極める方法です。
まるで身体の「どこが問題なのか?」を探す地図を広げるような作業になります。
▪メイトランド分類
「痛みの出るタイミング・強さ・可動域の反応性」に注目。
施術刺激の強さをどう調整するかを判断します。
例えるなら、温度計を見ながら料理するように、反応を見て調整していく感覚です。
▪マッケンジー法
「動かす方向」によって、痛みが中心に戻る(中心化)か、広がる(末梢化)かを見ます。
その反応に応じて、セルフケアの方針を決める羅針盤のような存在です。
▪マリガンコンセプト
関節の位置異常や微細なズレがあるとき、
その場で痛みや可動域が改善するかを評価します。
“今ここで変わるか?”というその場限りの変化を探すヒントになります。
▪オサリバン分類
その人の動作戦略・クセ・回避パターンに注目。
過用・制御不全・代償といった「動き方のくせ」を可視化して、
まるで鏡を見せてあげるような評価を行います。
ゴール設定は“登山ルート”を決めること
「どこが問題か」が見えたら、次はどう登るか=どんな施術手段を選ぶかです。
施術スタイル別アプローチ一覧
※それぞれの強み・得意分野を活かして、痛みや不調にアプローチできる仲間たち
【関節・動きにアプローチする系】
・関節モビライゼーション(メイトランド・カルテンボーン・Mulliganなど)
リハビリ職(理学療法士・作業療法士)に多い。関節の動きを評価し、滑り・可動性を整える。
・AKA(関節運動学的アプローチ)
仙腸関節・骨盤帯のアライメントに注目した繊細な手技。
・マリガンテクニック(MWM)
関節のズレや位置エラーに対して、動きながら整える施術。
【筋・筋膜系へのアプローチ】
・筋膜リリース(浅層〜深層)
筋膜の滑走や癒着を整える手技。整体師・オステオパスなどに多い。
・トリガーポイント療法
筋肉の過緊張による関連痛のポイントを捉え、ピンポイントにアプローチ。
・筋膜調整
全身の構造を重視し、筋膜バランスを深層から整える。
【運動・動作パターンを変える系】
・運動療法(理学療法士・トレーナー)
評価に基づいた筋力・柔軟性・安定性の再構築。
・ピラティス
体幹の安定性・呼吸・姿勢制御に強い。理学療法士も導入。
・ヨガセラピー
ポーズ・呼吸・マインドフルネスを組み合わせたセルフケア型。
・ファンクショナルトレーニング
スポーツ現場に多い。日常・競技動作に直結したトレーニング。
【癒し・自律神経・リラクゼーション系】
・あん摩マッサージ指圧師や整体師による筋緊張緩和・血流改善・癒しによる回復力促進。
・リフレクソロジー/足つぼ
末梢から全身への刺激で、自律神経にアプローチ。
・アロマセラピー/リンパドレナージュ
嗅覚刺激と穏やかなタッチで、リラックスを促す。
【東洋医学的アプローチ】
・鍼灸
経絡・ツボを用いて、痛み・自律神経・体質改善に多角的にアプローチ。筋膜性疼痛にも効果。
・指圧
点刺激による深部の圧迫。体のエネルギーの流れ(気)も重視。
・整体(東洋型)
骨格・筋・経絡などのバランスを調整する独自メソッドも多い。
【その他の専門的アプローチ】
・カイロプラクティック
神経系と脊柱の整合性に注目。背骨のアジャストを通じて症状改善を目指す。
・オステオパシー
構造と機能の関連に着目。全身のつながりを重視。
ボディートーク/エネルギーワーク
量子医学的視点や内面へのアプローチ。施術の枠を超えたアプローチも。
どれが正解ではなく、“その人に合うものを”
どれかが絶対ということはありません。
状況と目的に応じて「登山ルート」を選ぶように、適材適所のアプローチがあるだけです。
そして、どの職種も──
「今より、少しでもよくなってほしい」という思いは共通です。
施術者によって得意分野は異なります。
僕は評価と施術が一体化している関節モビライゼーションが得意です。
あとは、再評価をしながら登っていくだけ。
ときには、コース変更や休憩も必要。まさに登山のような施術です。
まとめ|静かなる一撃とは
僕の“技”は、派手ではありません。
見た目も映えないし、やっていることも地味かもしれません。
でも、「これは本当に原因なのか?」を見極める力と、
そこに最短で届く“静かなる一撃”を放つこと。
それが、僕の武道会スタイルです。
皆さんは、どう戦いますか?
見せ技?裏技?それとも、静かなる一撃?必殺技?
まあ、本当の武道会だったら──
お互い、手の内は出さないと思いますが(笑)
僕はリベのおかげで、人生が変わりました。
リベシティがずっと続いて欲しいと思っている一人です。
だから、僕が知っていることは、全部、出して行きたいです。
学長ライブで「ヘルニア大丈夫ですか?」って聞かれたとき、
「えっ?全然痛くないよ!」って笑って答える学長の姿──
そんな未来を、勝手に想像してます。
「施術家の天下一武道会」という表現には、競争ではなく、
多職種が協力し合い、ひとりのクライアントのために最善を尽くす
そんな“技と知恵の共創の場”だと理解しています。
みんなの力(知恵や技術)を合わせれば、
きっと、どんな痛みも乗り越えられる。
僕は、そう信じています。