- 投稿日:2025/06/21
- 更新日:2025/10/08

はじめに
はじめまして、デザイナーのつかさんぽと申します。下積みから数えて11年、広告業界でお世話になってます。
日々の仕事では、デザインだけでなく企画・コピー・撮影ディレクションまで幅広く携わっていますが、どんな業務にも共通しているのが「引き出しの多さ」が求められること。クライアントの大事なお金を預かって新しい表現や、時代に刺さるクリエイティブをつくるには、インプットの質と量が本当に大事だと痛感しています。
今回はそんな僕がこれまでの実務で、特に下積み時代に助けられた書籍・年鑑・雑誌・資料をまとめてみました。
広告系のデザイナーを目指している方、すでに現場で奮闘している方にも、きっと役立つはずです☺️
#001|デザイン表現の幅を広げる本・雑誌
新しい見せ方を模索したい時、トーンの参考、素材探しとしても有効。
📖 Advertising is TAKUYA ONUKI Advertising Works(1980-2020)
佐藤可士和さんの師匠としても知られる、日本広告界のレジェンド・大貫卓也さんによる全仕事集。1980年から2020年までの代表的な広告作品が網羅されています。
完成されたワークスだけでなく、貴重なラフスケッチや構想メモも多数掲載されており、思考のプロセスや試行錯誤の跡がそのまま見られるのが大きな魅力。
📖 小杉幸一の仕事 (HAKUHODO ART DIRECTORS WORKS & STYLES)
博報堂出身・現onehappyのアートディレクター・小杉幸一さんの仕事とスタイルをまとめた一冊。広告・ブランディング・展覧会ビジュアル・書籍装丁など、ジャンルを横断した豊富な事例が収録されています。
『色は性格、フォントは声色、ポイント数はボリューム』と広告デザインを擬人化する考え方にはとても納得しました。
『デザイン』の考え方を、紙面だけでなくイベントやビジネスの場といった全ての領域で活用したいという方に強くおすすめです。
📖 アートディレクションの「型」。: デザインを伝わるものにする30のルール
『コピーライターが言葉で話すように、アートディレクターは「絵で話す」。』という帯の言葉にもあるように、“伝わる”ためのアートディレクションの基本原則を、30の具体的なルールで丁寧に解説した実践書。
企画の立て方、コンセプトの絞り込み、ビジュアルと言葉の関係性、レイアウトの導線設計など、アートディレクターの頭の中をそのまま文章化したような一冊です。
経験やセンスに頼りがちなアートディレクションの工程を言語化してくれているのが最大の魅力。
案件に入る前の思考整理にも使える、実務の羅針盤的な存在です。
余談:以前著者の水口さんのアートディレクション講義を受けたことがありますが、当時の浅はかな思考を悟られ、僕の制作物に対して酷く愛のあるフィードバックを頂いたことは今では苦くもいい思い出です😅
📖 ウラからのぞけばオモテが見える (佐藤オオキ/nendo・10の思考法と行動術)
プロダクトデザインから空間演出、グラフィックまで幅広く活躍するnendo代表・佐藤オオキさんの“思考の原点”に触れられる一冊。
デザインに対する考え方、発想の切り口、プロジェクトの進め方などを、「10の思考法と行動術」というテーマでシンプルかつ具体的に紹介しています。
タイトル通り、「ウラ側」から物事を見ることで“当たり前”の再解釈や新しい視点が得られる思考法が詰まっており、個人的にも『視座』を変えることの柔軟性について価値観を大きく変えられた本で、付箋貼りまくって読み込んだ本のひとつです。
デザインに限らず、企画やコミュニケーションに携わる人すべてに刺さる発想術の本。
やさしい語り口ながら、読むたびに気づきがある名著です。
📖 毎日ロゴ 無名デザイナーが365日、毎日ロゴをつくり続け有名デザイン賞を受賞したロゴデザイン上達法
「1日1ロゴ」をブログで1年間継続し、有名デザイン賞まで受賞したという石川竜太さんの実話ベースのロゴ制作ドキュメント&実践書。
ロゴづくりのスキルを鍛えたい人にとって、思考法・着眼点・継続のコツなど、すぐに実践できるエッセンスが詰まっています。
華やかな完成品だけでなく、「どう考えて手を動かしたか」というプロセスの蓄積が見えるのがこの本の最大の魅力。
特に、SNSでの発信に注力していきたいというデザイナーにとってはいい刺激になる本なのではないでしょうか(自戒)
📖 世界のグラフィックデザインシリーズ gggBooks
後述する『ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)』が刊行する、世界各国のグラフィックデザイナーを一人ひとり丁寧に紹介する冊子シリーズ。
1冊あたりが手頃なサイズ&価格なので、気になったデザイナーから気軽に手に取れるのが嬉しいところ。
ドラフト、井上嗣也さん、新村則人さん、グルーヴィジョンズ、ホワイ・ノット・アソシエイツ、色部義昭さん、大原大次郎さん、菊地敦己さんなど好きなデザイナーのシリーズを挙げるとキリがないくらい。
📖 デザインノート
グラフィックを中心に、パッケージ、ブランディング、書籍装丁、Web、UIなど、幅広いジャンルの“今”を切り取るデザイン専門誌。
毎号異なるテーマで、第一線のクリエイターの仕事やプロセス、考え方を掘り下げて紹介しています。
僕が通っていたデザインの専門学校では毎号この本が配られていて、この本でデザインの基本の『き』を学びました。
📖 アイデア
“グラフィックデザインのオタク本”と称されるほど、濃密でマニアックな特集が魅力の老舗デザイン誌。
ローカルデザイン、次世代クリエイター、アイドルカルチャー、タイプフェイスの特集など、毎号ごとにテーマが大きく異なり、独自の視点で掘り下げられています。
アーカイブ性が高く、一冊まるごと資料集として使えるレベルのボリュームと密度。
メジャーな作品よりも、埋もれがちな実験的表現や社会性のあるビジュアルにスポットを当てているので、「他とは違うインプットが欲しい」というときに本当に重宝します。
デザインを“考えたい人”にこそおすすめしたい一冊です。
📖 デザインのひきだし
特殊印刷や加工技術、用紙の選び方など、物理的な“モノとしてのデザイン”に特化した専門誌。
通常のグラフィックデザイン誌とは一線を画し、印刷・製本・紙質・加工方法に強くフォーカスしているのが特徴です。
毎号、実物サンプルが付録として綴じ込まれていることも多く、「目で見て、触れて、知る」デザイン資料として非常に貴重な存在。
プロダクトやパッケージなど、“紙モノ”にこだわりたいときの表現方法の引き出しを一気に増やしてくれる一冊。
特に印刷会社や加工業者とのやりとりを想定したディレクションにも強くなれるので、実務に直結します。
#002|広告・デザインの“今”がわかる年鑑・雑誌
デザイン表現・コピー・写真・アートディレクションの「今」と「トップレベル」が詰まっている年鑑・資料集。
📖 日本のアートディレクション年鑑(ADC年鑑)
広告、パッケージ、プロダクトなど、さまざまな分野のその年の優れたデザインが一冊にまとめられています。
おそらく、第一線で活躍するデザイナーたちは毎年欠かさず目を通しているはず。掲載作品のレベルはもちろん、今の時代を映すビジュアルの潮流を感じ取れる貴重な資料です。作品に記載されているクレジットを見る → 気になった写真家やアートディレクターの名前をメモ → WebやSNSで調べて深掘り → 作品を漁りながら、周辺の知識や表現の傾向をストック。こうしたリサーチの積み重ねが、自分の引き出しをじわじわと増やしてくれます。
📖 コピー年鑑(TCC年鑑)
その年に生まれた優れた広告コピーを中心に構成された年鑑。テレビCM、新聞広告、ポスターなど、多様なメディアの事例が掲載されています。
掲載されているのは、当然ながら一線級のコピーライターたちによる作品ばかり。そして、そのコピーと組み合わされているグラフィックもまた、同じく一流のデザイナーたちによるものです。グラフィックの表現バリエーションがとにかく豊かなので、ビジュアルアイデアを考えるときの資料としてよく読み漁っています。
コピーとビジュアルの掛け算による伝え方を学ぶには、最高の教材です。
📖 GRAPHIC DESIGN IN JAPAN
幅広いジャンルのグラフィックデザインを網羅した年鑑。広告に限らず、書籍、CI、パッケージ、展覧会ビジュアルなど、多彩な分野の作品が掲載されています。
遊び心のある表現や、アート寄りで実験的なアプローチも多く、見ているだけで発想が刺激されます。グラフィックの表現方法がとにかく多様で、トーンや構成、タイポグラフィの使い方など、新しい視点を得たいときにぴったりの一冊です。
📖 ブレーン
広告・クリエイティブ業界の“今”を総合的に捉える老舗雑誌。
テレビCM、グラフィック、Web、プロモーション、空間演出など、あらゆるメディアを横断したクリエイティブ事例を幅広く取り上げています。
第一線で活躍するアートディレクターやコピーライターのインタビュー、制作背景の特集、広告賞の紹介なども充実しており、実務と発想をつなぐ情報源として重宝します。ビジュアル多めな点も嬉しい。
kindle unlimitedでも読めるので、是非。
#003 |写真の力を知る・活かす本・雑誌
「写真で伝える」ために知っておきたい構図・トーン・作家の思考。
📖 年鑑 日本の広告写真
時代をリードする広告写真家やビジュアルクリエイターの仕事が一堂に会した、写真表現に特化した年鑑です。構成としてはTCC年鑑に近いですが、こちらはより写真そのものにフォーカスしているのが特徴。
CM・ポスター・ビジュアル広告などにおける写真の役割や、印象を左右するライティング・色調・構図のトレンドを学ぶのに最適です。
📖 COMMERCIAL PHOTO
広告写真からアート寄りの写真表現まで、幅広いジャンルのビジュアルワークを毎号特集する老舗の専門誌。写真技術やライティングの解説はもちろん、第一線のフォトグラファーやアートディレクターとの対談や制作秘話も多く、読み応えがあります。
📖 広告写真アーカイブス (別冊コマーシャル・フォト 1)
上田義彦さん、藤井保さん、操上和美さんなど、日本の広告写真の礎を築いてきた巨匠フォトグラファーたちの仕事を一冊にまとめたアーカイブ本。広告写真の“名作”とも言えるビジュアルがずらりと並び、まさに教科書的な存在です。
僕自身、下積み時代にこの本を何度も何度も見させられて(というか叩き込まれて)きました。
その分、今の自分の中にある「写真の基準」は、かなりこの本の影響を受けています。
広告における“写真の説得力”を学ぶならまずこれ。今でも時々見返したくなる、原点のような一冊です。
#004|タイポグラフィ・レイアウトの基礎と応用
文字の扱いで“上手い”と“刺さる”は変わる。実践前に必読。
📖 欧文書体―その背景と使い方
欧文タイポグラフィにおける書体の選び方・組み方・背景知識まで丁寧に解説された、まさに「文字の扱い方に関する教科書」。
グラフィックデザインにおいてよく使われる質の高い欧文書体の特徴や歴史、実践的な使い方が体系的にまとめられています。
昔インターン先の先輩に「これだけは読んどけ」と渡された一冊。
それ以来、フォントで迷ったときには今でも必ずこの本を開きます。
📖 Typography(タイポグラフィ)
英文から和文、手書き文字からフォントデザインまで、「文字」にまつわる事例や考察を毎号異なるテーマで幅広く紹介する専門誌。
フォントの設計思想や歴史、活用事例、デザイナーインタビューなど、読み応えのある内容が詰まっています。
特に和文フォントの文字詰めや文字組の実践的なノウハウが学べるのが貴重。技術的な知識も自然と身に付きます。
とはいえ決して堅苦しいわけではなく、読み物としても面白く、「文字って奥深いな」と思わせてくれる一冊。
デザインにおける“文字の表情”を磨きたい人にオススメです。
📖 Tokyo TDC(TDC年鑑)
東京タイプディレクターズクラブが刊行する、タイポグラフィに特化した年鑑。ADC年鑑と並ぶ評価軸を持ちつつ、こちらは特にロゴやタイプフェイスの造形美や表現力にフォーカスしており、文字を主役にしたグラフィック作品が多数掲載されています。
掲載作品に使用フォント名が記載されている年もあり、気になる書体の使われ方や組み方、表現の意図などを学ぶのにとても役立ちます。一流のデザイナーたちが“文字でどう世界観をつくるか”をじっくり見られる、タイポ好き・ロゴ好きにはたまらない一冊です。
#005|実物に触れる!都内おすすめギャラリー
本に載ってない展示や、絶版資料にも出会えるリアル体験スポット。
🖼️ アドミュージアム汐留・広告博物館
汐留にある日本唯一の広告専門ミュージアム。これまで紹介してきた書籍が自由に閲覧できる広告系クリエイターの“聖地”的なスポットです。
常設展では日本の広告史を振り返る展示もあり、広告というメディアの進化や文化的背景も学べます。
正直、時間を忘れて何時間でもいられます。
「気になる本があるけど高くて手が出ない…」というときも、まずはここで読んでみるのがおすすめ。インプットの質を高めたい広告関係者にとっては、本当にありがたい場所です。
🖼️ ggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)
東京・銀座にあるグラフィックデザイン専門のギャラリー。
毎年開催されるADC展(日本のアートディレクション)やTDC展(タイプディレクション)をはじめ、国内外の著名デザイナーによる企画展示が定期的に行われています。
展示のクオリティが非常に高く、第一線のデザイナーがどのように思考し、形にしているかを間近で体感できます。
しかも入場無料。展示替えのたびに訪れたくなる、インスピレーションの宝庫です。
🖼️ 21_21 DESIGN SITE
デザインを「考える」「体験する」ための文化施設として、東京・六本木に構えるデザイン拠点。
グラフィックだけでなく、プロダクト・建築・テクノロジー・社会課題など、さまざまな切り口からデザインを深掘りする企画展が開催されています。
展示ディレクターの一人にグラフィックデザイナーの佐藤卓さんが参加しており、彼の独自の視点や思想が反映された展示構成も見どころのひとつ。
「視覚表現」だけでなく、「なぜデザインするのか?」という本質的な問いに触れられる場所。
デザインの幅を広げたい人、思考を深めたい人におすすめのインスピレーション空間です。
さいごに
今回ご紹介した本や資料は、すべて僕自身が実務のなかで悩んだとき・詰まったときに手を伸ばしてきた“引き出し”の一部です。
デザイン・ビジュアルに関する情報はPinterestやBehance、Instagramなど、インターネットで無限に情報が手に入る時代。
だからこそ、紙の本やアーカイブに触れることで、他の競合がつくるクリエイティブと似ないオリジナリティが生まれる要素になるのではないかと感じます。
“編集された情報”や“残される価値のある記録”だからこそ、たまたま寄り道して目に入った情報がすごく刺さった、なんてことは多々ありますもんね☺️
デザインもコピーも、センスや表現の出発点は「知ること」から始まる。
目で見て、手でめくって、気になる名前を調べて……そうした丁寧なインプットの積み重ねが、いざというときに自分の中でちゃんと形になってくれるんだと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました🙏少しでも役立った!と思った方のいいねやコメントなど、ハチャメチャ喜びます☺️