- 投稿日:2025/07/11
- 更新日:2025/10/09

病気やケガに備えて医療保険に加入している方は多いと思いますが、「どこまで公費でカバーされるか」をきちんと把握している人は、意外と少ないのではないでしょうか。実は、一定の条件を満たせば、医療費の一部または全部を公費でまかなってもらえる制度が複数存在します。
こうした「公費負担制度」を知っておくことは、いざというときに安心できるだけでなく、今入っている医療保険の内容を見直すきっかけにもなります。この記事では、市町村で申請できる公費負担制度の概要と、医療保険をどう見直す材料になるかについて解説していきます。
また、市町村によって助成範囲が変わってくる制度については、イメージの参考になるよう、岡山市の場合の情報をあてはめて解説していきます。ご自分の状況はお住まいの自治体のホームページなどでご確認ください。
用語説明
所得制限:本人や世帯員の所得によって、受給できないことがある制度を「所得制限あり」と表現します
負担割合:全額公費で負担してくれる場合は「負担割合なし」、窓口で1割だけ負担すればいい場合は、「負担割合1割」と表記します。
自己負担限度額:1ヶ月あたりにここまで医療費を払えば、それ以上の金額は要求されない、という金額です。受診した医療機関が複数にまたがっている場合は、あとから差額が返ってきたりもします。
償還給付:支払時には制度が使えないが、後から申請でお金が返ってくる給付方法のことです。
子ども医療費
(乳幼児医療費、小児医療費と表記する自治体もあります)
市町村が子どもに対して医療費を助成していることをご存じの方も多いかと思います。岡山市の場合は小学生までが無料です。中高生は負担割合が1割で自己負担限度額が44,400円です。
なお、子どもの医療費の助成の中でも、特定の病気の助成制度として、小児慢性特定疾病・未熟児養育医療・自立支援医療(育成)というものもあります。(この3つは病院指定あり)
ひとり親家庭等医療費
同じく市町村ですが、ひとり親家庭や親のいない家庭等への医療助成制度があります。所得制限があったりするので、所得が多いご家庭だと対象にならない場合もあります。
岡山市の場合は負担割合は1割、世帯収入によって4段階の自己負担限度額があります。
なお、DV等の理由により住民票を動かせない状態で引っ越してきた場合も制度を受けられる場合があります。
障害者等の医療制度
自立支援医療(更生医療)(病院指定あり)
身体障害者手帳を持っている方で、継続した治療が必要な方が使う公費負担です。例えば人工透析や、臓器移植に伴う免疫治療などで使われます。
負担割合は1割で、4段階の自己負担限度額があります。
自立支援医療(精神通院)(病院指定あり)
上記の更生医療と同じく、負担割合は1割で自己負担限度額は4段階です。精神障害者手帳を持っていなくても、交付を受けることができます。障がい者就労の申請で手帳の代わりに使える場合もあります。
障害者医療
重度の障害を持っている人が助成を受けられる制度です。岡山市では「重度の障害を持っている」=身体障害者手帳1~3級、療育手帳A、精神障害者手帳+自立支援医療(精神通院)のどれかを持っているという定義になっています。こちらもひとり親等医療と同じく所得制限があります。負担割合は1割で4段階の自己負担限度額があります。
特定医療費(難病患者への医療支援) (病院指定あり)
完治までに時間を要する病気で、国が指定した病気については、原則2割負担、5段階の自己負担限度額があります。
終わりに
高額療養費制度だけでなく、さまざまな公費負担制度を知ることで、実際に医療費がどの程度かかるのか、より具体的にイメージできるようになります。人工透析や難病治療など、高額と思われがちな医療でも、制度を活用すれば自己負担が大幅に軽減される可能性があります。
うした制度を踏まえてあらためて医療保険の内容を見直すことで、本当に必要な保障を把握しやすくなります。「なんとなく不安だから手厚い保険に入っておく」から、「公的制度でここまでカバーされるから、これだけ補えば安心」といった形に変えていけるのです。
将来のリスクに備えるためにも、一度ご自身やご家族の状況に照らして、公費負担制度を確認し、医療保険を見直してみることをおすすめします。