• 投稿日:2025/08/13
  • 更新日:2025/10/30
企業型DC(iDeCo)受け取り戦略:一時金と年金の徹底比較

企業型DC(iDeCo)受け取り戦略:一時金と年金の徹底比較

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のぶとら@オルカンとS&P500ごぶごぶ

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要約
56歳で退職金を受給済みのため、65歳時の企業型DCは退職所得控除なし。65歳から公的年金を受け取るため、年金形式では毎年課税+社会保険料が発生。一時金なら受取時に課税後、特定口座で複利運用が可能。試算では全ケースで一時金が有利で、資産が大きいほど差が拡大。一時金受取がベター。

概要

◆退職経緯

56歳(2025年8月退職)時に退職金1,250万円を受給

過去にも退職金を受給しており、65歳時の企業型DCは「同じ会社で積み上げた退職金」とみなされる

そのため、退職所得控除(19年×40万円=760万円)は既に使い切り、65歳時には控除なし

◆65歳時の条件

企業型DC残高:約2,200万円(オルカン50%、S&P500 50%、想定利回り6%)

公的年金:年間200万円受給予定(65歳開始)

公的年金等控除(65歳以上:110万円)は年金でほぼ使い切る

◆受け取り方法の比較

・一時金受取(退職控除なし・2分の1課税)

初年度にまとめて課税

残額を特定口座で長期運用 → 運用益は売却時課税

社会保険料負担なし

・年金形式受取

毎年の受取分+公的年金が合算され、課税・社会保険料負担あり

手取りが減り、運用元本が小さくなるため複利効果が弱まる

◆シミュレーション結果

元本1,000万/1,500万/2,200万、運用期間10年・15年・20年いずれも一時金が有利

特に資産規模・運用期間が大きいほど差が拡大

年金形式は公的年金との合算課税+社保負担が重く不利

◆結論

現行制度・想定条件では、一時金受取→特定口座運用が望ましい

税制・社保料率改正で条件が変わる可能性はあるため、定期的な見直しが必要

1. まえがき

私は今年で56歳になります。2025年8月末で長年勤めた会社を退職することになりました。

今回の退職では、会社から退職一時金として約1250万円を受け取ります。勤続年数は、会社が統合されてからの19年間です。

実は、この会社では過去にも一度退職金を受け取ったことがあります。約20年前、会社が分社化されたタイミングで一旦退職金が支給され、その後、各社が再び統合し、再び退職金制度の積み立てが始まりました。

ですから今回の退職金は「同じ会社で積み上げた退職金」とみなされ、みなし退職金制度は形式的には存在しても、控除額(19年×40万円=760万円)をすでに上回る支給を受けているため、実際には利用できません

さらに、65歳時には現在の企業型DC(確定拠出年金)が約2200万円に育っている見込みです。内訳はオールカントリーとS&P500を半分ずつに分けた運用で、期待利回りは6%としています。

そしてもう一つ大事な条件があります。

私は65歳から公的年金を年間200万円受け取る予定です。これが企業型DCを年金形式で受け取る場合、大きな影響を与えます。なぜなら、公的年金と企業型DC年金は合算して課税されるため、公的年金等控除(65歳以上は110万円)の枠をほぼ使い切ってしまい、企業型DC分はほぼ全額が課税対象となってしまうからです。加えて、所得税や住民税だけでなく、社会保険料(概算7.5%)も負担が増えます。

こうした背景を踏まえ、私は次の二つの受け取り方を比較することにしました。

ケース1:65歳時に企業型DCを一時金で受け取り、特定口座でまとめて運用する方法

ケース2:企業型DCを年金形式で受け取り、毎年の手取りを再投資する方法

本稿では、この二つを公的年金200万円込みの現実的な前提でシミュレーションし、どちらが最終的な資産を多く残せるのかを検証していきます。

2. 退職金と退職所得控除の関係

退職金を受け取るとき、まず考えないといけないのが退職所得控除です。
この控除は、勤続年数に応じて決まる「税金のかからない枠」のようなもので、計算式はこうなります。

--------------------------------------------------------------------
勤続年数 × 40万円(20年を超える場合は21年目から70万円)
--------------------------------------------------------------------

私の場合、今回の勤続年数は19年なので
40万円 × 19年 = 760万円
が退職所得控除額になります。

退職金の税金は、この控除額を差し引いた残りの金額を2分の1にして課税します。つまり、同じ額を受け取っても、この控除の範囲内であれば所得税も住民税もかからず、手取りがぐっと増えます。

ところが、私は過去に一度退職金を受け取っています。
会社が分社化されたときに一旦退職金が支給され、その後、再び統合されて今に至ります。

こうした場合、同じ会社で積み上げた退職金資産とみなされるため、次回の退職金(今回の1250万円)で控除を使い切ると、それ以降に同じ会社で積み立てられた企業型DCを一時金で受け取るときには、この控除が再び使えません。

これが、いわゆる「みなし退職金制度」の壁です。

制度としては存在していても、実際には今回の退職金が控除額760万円を超えているため、65歳で受け取る企業型DCには控除ゼロで課税されることになります。

この条件は、将来の受け取り方法を考える上でとても重要です。
なぜなら、控除がない場合、退職金を一時金で受け取れば初年度にドンと税金がかかりますし、年金形式で受け取れば毎年の課税+社会保険料負担が重くのしかかるからです。

次の章では、そうした課税の仕組みと、公的年金200万円が加わった場合の影響について説明していきます。

3. 公的年金と企業型DCが重なると何が起こるのか

私が65歳になったとき、企業型DCの残高はおそらく2200万円程度になっているはずです。
この資産をどう受け取るかが今回のテーマですが、ここで忘れてはいけないのが公的年金との関係です。

年金受け取りの落とし穴

私は65歳から公的年金を年間200万円受け取る予定です。
公的年金には「公的年金等控除」という非課税枠がありますが、65歳以上の場合は年間110万円です。つまり、公的年金200万円を受け取る時点で、この控除枠のほとんどを使い切ってしまいます。

そうなると、もし企業型DCも年金形式で受け取った場合、その分はほぼ全額が課税対象になります。
さらに、課税されるのは所得税や住民税だけではありません。65歳以降でも社会保険料(概算で所得の7.5%程度)がかかります。この社会保険料が思った以上に重く、手取りを減らす大きな要因になります。

一時金との違い

一方で、企業型DCを一時金として受け取れば、税金はその受取時にまとめて計算されます。今回の私の場合は退職控除がないので、金額の半分が課税対象(2分の1課税)となりますが、その後は特定口座に入れて運用すれば、毎年の社会保険料負担は発生しません。
運用益には売却時に20.315%の税金がかかりますが、それまでは非課税で複利運用ができます。

こうして見ると、「毎年税金と社会保険料がかかる年金受け取り」と、「最初に税金を払ってしまって、その後は複利で運用できる一時金受け取り」では、資産の増え方に差がつくのは当然です。

問題は、その差がどれくらい大きいのかということです。

次の章では、この2つのケースを現実的な条件でシミュレーションし、その結果を見比べていきます。

4. 一時金と年金形式、シミュレーション結果

ここまでの話を踏まえて、65歳時に企業型DC(2200万円)を

(1)一時金として受け取る(退職控除なし・2分の1課税後に特定口座で運用)

(2)年金形式で受け取る(毎年税金+社会保険料差し引き後に再投資)

この2つを比べるシミュレーションを行いました。
運用利回りは6%、期間は10年・15年・20年で比較しています。
また、現実的な条件として公的年金200万円/年も合算して課税計算しています。

計算の流れ

一時金受け取り(ケース1)
・受け取り時に退職所得として2分の1課税 → 税金を差し引いた手取りを特定口座に入れ、運用
・運用益は最終的に売却時にまとめて課税

年金受け取り(ケース2)
・毎年の年金受取額と公的年金を合算 → 所得税+住民税+社会保険料を差し引き
・受取額を特定口座で運用し、毎年課税
・残りは企業型DC(iDeCo)で運用継続

結果の概要

65歳時に企業型DCの資産1000万円、1500万円、2200万円の場合をシミュレーションしてみました。

Book1_2.png試算の結果、すべての期間で一時金受け取りの方が最終的な手取り額が多いという結果になりました。
特に期間が長くなるほど差が開きます。理由はシンプルで、年金形式の場合は毎年課税+社会保険料負担があるため、運用に回せる元本が少なくなり、複利効果が大きく削がれてしまうからです。

一方、一時金の場合は最初にまとまった税金を払うだけで、その後は運用益に課税されない期間が続くため、複利の効果がフルに活かされます。

重要なポイント

この結果は「公的年金200万円を含む」という条件が大きく影響しています。
もし公的年金がなかったり、受け取り時期をずらせる場合は、年金形式の不利さが緩和される可能性があります。
しかし現状の私の条件では、一時金受け取りの優位性がはっきり出る形となりました。

次の章では、この結果を踏まえて、どのような受け取り戦略が考えられるのかを整理します。

5. まとめと私の選択

今回の検討では、65歳時点での企業型DC(またはiDeCo)資産を一時金として受け取り、特定口座で運用するケース(ケース1)と、年金として受け取り、その手取りを再投資するケース(ケース2)を比較しました。

試算額は1,000万円・1,500万円・2,200万円の3パターンで、年金受取時には公的年金200万円と合算して税金・社会保険料を計算し、残りを年利6%で運用する前提です。特定口座運用分は、受け取り時または最終取り崩し時に譲渡益課税(20.315%)を反映しています。

結果は明確で、すべての元本・期間においてケース1がケース2を上回るというものでした。特に元本が大きく、運用期間が長いほど差は拡大し、2,200万円を20年運用する場合では最終手取りの差が1,200万円を超えました。

一方で、元本が小さい場合(例:1,000万円)では、年金形式では毎年の税・社会保険料負担が運用益を上回り、最終的に元本を下回るケースも見られました。

これらの結果から、私の場合は以下のような判断に至りました。

・65歳での受取時、退職所得控除は既に使い切っているため、一時金でも課税は避けられない

・しかし、課税後の金額を特定口座で長期間運用すれば、年金形式に比べて複利効果を最大限活かせる

・元本が大きいほどこの差は顕著で、私の想定資産(約2,200万円)では一時金受取が有利

以上を踏まえ、私は65歳時点で企業型DC(またはiDeCo資産)を一時金として受け取り、その後特定口座で運用する選択をしようと考えています。

もちろん、今後の税制改正や社会保険料率の変動によって有利不利は変わる可能性がありますが、現時点での前提条件では、この方法が最も効率的と判断しました。

付録:

Book1_1.png

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