- 投稿日:2025/09/15
- 更新日:2025/11/16
1.はじめに
日本の公的年金制度は「終身で受け取れる安定収入」という大きな特徴があります。特に国民年金(老齢基礎年金)は、全員が最低限確保できるベース収入です。
国民年金は原則として20歳から60歳までの40年間、保険料を払い続ける仕組みです。しかし、学生時代は経済的に厳しいため、「学生納付特例制度」に申請すれば保険料を納めなくてもよくなります。
この期間は「未納」とは異なり、将来の年金受給資格には影響しません。
ただし、保険料を払っていない分、年金額は減少します。そこで、社会人になってからその分を払い直すのが「追納」です。
この記事では、令和7年度の最新数値を用いて、追納の収支シミュレーション、回収年数、節税効果 を具体的に解説します。
読後には「追納は投資商品より効率的だ」と実感できるはずです。
2.令和7年度の基準額
国民年金保険料:17,510円(1か月)
追納1か月あたりの将来年金増加額:1,730円(年額)
つまり 17,510円の支払いで、老後の年金が毎年1,730円増える という仕組みです。
3.追納は何年で元が取れる
では、単純に計算してみましょう。
17,510円 ÷ 1,730円 ≒ 10.1年
👉 約10年で元が取れる計算になります。その後はずっとプラスが積み重なります。
長寿リスクに備える「終身年金」
追納による増加額は、65歳から亡くなるまで一生涯支給されます。
仮に1か月分追納した場合にもらえる年金額
10年受給 → 17,300円(支払った17,510円に対してほぼ回収完了、その後は純粋な利益)
20年受給 → 34,600円(+17,000円)
30年受給 → 51,900円(+34,000円)
平均寿命を考えると、男性81歳・女性87歳ですから、特に女性は「大きく得をする」仕組みになっています。
4.節税メリットで回収年数はさらに短縮
追納した金額はすべて 社会保険料控除 の対象になります。
課税所得がある人なら、実質負担はさらに小さくなります。
例:課税所得400万円、税率30%のケース
1か月追納(17,510円)で節税効果は 約5,250円
実質負担は 約12,260円
実質ベースでの回収年数は 12,260 ÷ 1,730 ≒ 7年に短縮されます。
👉 「実質7年で元が取れる」という計算になります。
5.年金はインフレに強い ─ マクロ経済スライド
老齢基礎年金は、毎年度「物価や賃金」に応じて改定(スライド)されます。そのため、追納による増加額1,730円も、将来インフレが進んでも自動的に増額されます。預金や債券のように価値が目減りしません。購買力を守る長期的な資産形成になリます。
6.追納手続きの流れ
最寄りの年金事務所に「国民年金保険料 追納申込書」を提出する。
マイナンバーカード、委任状(本人以外が手続きする場合)
追納可能期間の確認
学生納付特例や納付猶予を受けた月のうち、10年以内が対象
年金定期便や追納勧奨状で納められる月数や加算金の有無を確認
納付書の受領と支払い
手続き後、2週間程度で納付書が郵送される。銀行・コンビニ・スマートフォン決済(AEON Pay・auPAY・d払い・PayPay・楽天ペイ)で支払い可能。一括納付でも分割納付でも可能です。
7.加算金に注意 ─ 3月31日までの納付がお得
追納には「加算金(利子)」が発生する場合があります。
2年度以内の追納 → 加算金なし(令和7年度:令和8年3月31日までであれば、令和5年4月以降の保険料には加算金が付きません)
3年度以上 → 経過年数に応じて加算金が加算 。(令和7年度現在、令和5年3月以前の保険料には加算金が付きます)なお、加算金は毎年4月に改定されます。
つまり、年度を超えると加算金がついたり、加算金が上乗せされたりするので、3月31日までに納付するのがお得です。
8.最後に(追納に関するよくある疑問)
Q1. 未納との違いは?
追納:学生納付特例・納付猶予などを利用した場合の不足分を後から支払うこと。3年度以上経過すると加算金がつきますが、約10年前まで遡って支払えます。
未納:何も申請せず未払いの状態。障害年金や遺族年金の受給要件に影響し、もらえなくなる可能性がある。
Q2. 親が子どもの代わりに払える?
はい可能です。子ども本人に代わって追納申出書を提出・納付することができます。節税効果は親の所得控除として反映できます。
Q3. まとめて払うべき?分割でもいい?
一括でも分割(1ヶ月単位)でも可能。一括で払った場合でも割引はありません。
👉 詳細・手続きは 日本年金機構公式サイト をご確認ください。