- 投稿日:2025/10/15
尾道を旅行中、外国人女性と日本人男性のカップルに出会いました。
連れ添って30年の夫婦が、どうやって国際結婚の困難を乗り越えたのか?
その実体験から学んだことは、深い信頼関係を築く最強の方法でした!
国際結婚した夫婦との出会い

尾道には、「古寺めぐりコース」というものがあります。
迷宮のような坂の路地に入り、尾道に点在する古いお寺を回る道です。
このコースで散歩を楽しんでいたところ、1組の夫婦に出会いました。
チリ人の奥さんと、日本人の旦那さんです。
話を聞くと、なんと国際結婚をして30年も経つのだそう!
その記念として、尾道を二人で旅行しているのだとか。
30年という長い年月を共に歩んできた二人からは、深い信頼関係と温かさが伝わってきました。
「おもしろそうな話が聞けそう」
そう思った僕は、一緒にベンチに腰かけて色々と話を伺いました。
するとそこには、想像以上にドラマチックなストーリーがあったのです。
国際結婚のなれそめ

二人が出会ったきっかけは、アメリカ留学です。
大学のキャンパスで出会い、そこから交際が始まったとのこと。
それから1年も経たない間に、二人は結婚を決めます。
「この人となら、どんな困難も乗り越えられる!」
そう確信したと、奥さんは当時を振り返っていました。
そして大学を卒業後、夫婦として日本で生活することに。
しかし、ここで大きな問題が起こります。
旦那さんのお母さんが、この国際結婚に大反対したのです!
「私たちの血筋に外国人を入れるなんて、ご先祖さまに申し訳ない」
「この外国人が家の敷居をまたぐぐらいなら、私は首を吊って死ぬ」
なんでも旦那さんの家は、けっこう由緒正しい家系だったらしく・・・
しかもお母さんは、とても昔気質の人だったのです。
当時の70代だったお母さんにとって、「国際結婚」という概念は受け入れがたいものだったのかもしれません。
想像を絶する花嫁修業

それから長きにわたる説得の末、お母さんはようやく結婚を許し始めます。
しかし、それに一つの条件を出してきたのです。
「この外国人には、これから一人で私の家に住んでもらう」
「そこで3ヶ月の花嫁修業に耐えられたら、結婚して良い」
旦那さんは別居させられ、奥さんは一人で姑の家で生活することになりました。
この花嫁修業が、奥さんにとって想像以上の地獄だったのです!
たとえばお客さんが家に来たとき、お嫁さんとしてお茶を出すのですが…
「お茶が不味い」と、お客様の目の前で熱いお茶をかけられたのだそう。
日本茶の淹れ方・作法・タイミング、すべてが厳しくチェックされました。
また「近所の人にはチリ人ではなくアメリカ人と言え」と、命令されていました。
なぜ国籍を偽らないといけないのか理由を聞くと、「チリは貧乏で汚いから」と。
自分のアイデンティティを否定される辛さは、計り知れないものがあったでしょう。
さらに日本語の発音を馬鹿にされたり、料理の味付けを全否定されたり、掃除の仕方を細かく指摘されたり…
肉体的・精神的にいたぶられ、奥さんは毎日泣いていました。
「何度も逃げ出そうと思った」と奥さんは言います。
しかし旦那さんのことが大好きだったので、なんとかその3ヶ月を耐え切ったのだそう。
そしてようやく、結婚させてもらえることになりました。
しかしそれからも嫁姑問題は続き、チクチクとイジメられ続けたとのこと。
子育ての方法や親戚付き合いなど、あらゆる場面で批判され続けたそうです。
嫁姑問題を解決した方法

「じゃあ今も、旦那さんのお母さんとは仲が悪いんですか?」
僕がそう聞くと、奥さんは大きく首を振りました。
「いいえー、今はとても仲良しよ」
「旦那よりも、私を頼ってくるわ」
なぜ、お母さんはそんなにも変わったのでしょうか?
それには一つ、大きなきっかけがあったのです。
それは、お母さんをチリに連れて行ったこと!
結婚から5年ほど経った頃、旦那さんのお母さんをチリに招待しました。
そして、奥さんの家族と会わせたのです。
2週間の滞在でサンティアゴやバルパライソなど、チリの主要都市を案内しました。
チリでお母さんが目にしたのは、想像とはまったく違う光景でした。
近代的なビル群、整備された街並み、豊かな食文化。
そして何より、温かく迎えてくれる奥さんの家族。
奥さんのご両親は医師と教師で立派な家に住み、教養豊かな会話を楽しむ人々でした。
お母さんが持っていた「貧しい発展途上国」というイメージは、完全に覆されたのです。
そこから、お母さんの態度は大きく変わりました。
帰りの飛行機の中、お母さんは奥さんに向かってこう言ったそうです。
「あなたは息子の嫁じゃないわ」
「もう私の娘よ!」
それからは本当の家族のように、お互いを思いやる関係になったとのこと。
実体験が持つ圧倒的な力

おそらく、お母さんの中には「チリは貧乏な発展途上国」というイメージがあったのでしょう。
そしてそこの娘が、由緒正しい自分の家に来たのが嫌でたまらなかったのかもしれません。
しかし実際、チリは南米の中で一番の先進国です。
先進国クラブと言われるOECD(経済協力開発機構)にも、2010年に加盟しています。
一人当たりGDPは約1万5千ドルで、南米ではトップクラスの経済力を誇ります。
経済的に発展していて、治安が良い。
しかも自然が豊かで、人々は優しい。
アンデス山脈・アタカマ砂漠・パタゴニアの氷河など、多様な自然環境に恵まれた美しい国です。
それを直に見て、お母さんのチリに対するイメージはガラリと変わったのではないでしょうか?
それに応じて、奥さんに対する態度も変わったのだと思います。
しかし、「実際に体験する」って本当に強いですね!
あれだけかたくなに嫁を拒み続けてきた、昔気質のお年寄りが…
たった1回のチリ訪問で、こんなにも大きく変わったのです。
この話を聞いて、僕は「百聞は一見に如かず」という言葉の重みを改めて感じました。
どれだけ言葉で説明しても、実際に体験することには敵わない。
偏見や先入観はリアルな体験によってのみ、本当の意味で解消されるのかもしれません。
信頼関係を築くヒント

この夫婦の経験から、僕たちが学べることはたくさんあります。
国際結婚に限らず、日常の人間関係にも応用できる普遍的な教訓がここにはありました。
①実際に足を運んで直接対話する
お母さんがチリについて誤ったイメージを持っていたのは、正確な情報や実体験が不足していたことが原因でした。
日常生活の中でも、相手について表面的な知識だけで判断してしまうことがあります。
実際に足を運んで直接対話することで、思わぬ発見や協力の可能性が見えてくるのです。
「人に会いやー!」の精神は、ここからくるものだと考えます。
②忍耐力と時間が必要と理解する
奥さんが3ヶ月の試練に耐えられなければ、この関係は終わっていたでしょう。
またそれを乗り越えた後も、お母さんの心が変わるまでには5年かかりました。
人の心を動かして本当の信頼関係を築くには、忍耐力と時間が必要です。
少しずつ相互理解を深めていくプロセスこそが、揺るぎない信頼の土台となります。
③場所を変えることが重要と知る
この話では「チリ」という場所が、ブレイクスルーのきっかけになりました。
新しい環境に身を置くことで固定観念から解放され、フラットな視点で相手を見ることができたのです。
日常生活でも旅行先での会話や共通体験がきっかけで、より仲良くなったりします。
硬直した関係をゆるめるには、普段とは違う場所に行ってみるのが良いです。
最後に
特定の民族や国を嫌っている人たちって、どこにでもたくさんいます。
特に最近では選挙などを通じて、分断をあおる傾向があるでしょう。
しかし一度でもお互いの家を訪問して交流し合えば、大半の人たちは仲良くなれるのではないでしょうか?
現代はインターネットで、世界中の情報が手に入る時代です。
しかし画面越しの情報だけでは、本当の信頼関係は築けません。
実際に会って、話して、相手の世界を体験する。
そうすることで初めて心からの理解と尊重が生まれ、強固な信頼関係が構築されます。
尾道の坂道で出会ったこの夫婦は、僕に大切なことを教えてくれました。
違いを恐れるのではなく、違いを知ろうとすること。
そして何より人と人との直接的な交流こそがあらゆる壁を乗り越え、深い信頼関係を築く最強の方法なのだということを。
30年という長い年月を共に歩んできた二人の笑顔は、その真実を物語っていました。