• 投稿日:2025/10/22
民泊撮影で差をつける!プロが教える内観撮影の基本!

民泊撮影で差をつける!プロが教える内観撮影の基本!

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ケビン@FAコンサル/フォトグラファー

ケビン@FAコンサル/フォトグラファー

この記事は約27分で読めます
要約
民泊は「リベ大おすすめ副業17選」にも選ばれるほど、今や人気の副業ジャンルです。 その中でも、予約率を大きく左右するのが“写真の印象”。 本記事では、ミラーレス一眼を使って魅力的な民泊写真を撮影するための機材と基本手順を紹介します。

民泊は近年、副業としても大きな注目を集めており、「リベ大おすすめ副業17選」にも選ばれる人気分野です。
そして、数ある集客要素の中でも最も効果を左右するのが「写真」です。

この記事では、ミラーレス一眼を使った民泊撮影における必要な機材と、実際の撮影プロセスをわかりやすく紹介します。

ご自身で民泊撮影に挑戦する方はもちろん、プロに依頼する予定の方も、「実際の撮影現場ではどんな工夫や気配りが行われているのか」を知っておくと、より安心して、気持ちよく撮影を依頼できるようになると思います。

Ⅰ 撮影に必要な持ち物

民泊撮影は特別な機材が必要と思われがちですが、実際は「基本を押さえた最低限のセット」があれば十分です。
ここでは、撮影を行ううえで欠かせない機材と、その選び方のポイントを紹介します。

1. カメラ

民泊の内観撮影では、暗い室内と明るい窓外の両方を自然に表現できるカメラが重要です。

カメラを選ぶときは、次の3つを満たしていることを確認してください。

・ISO・シャッタースピード・F値を個別に設定できる
レンズ交換が可能
ブラケット撮影(露出段階撮影)ができる

これらが揃っていないと、明暗差の大きい室内でHDR合成を行うのが難しくなります。

コストと扱いやすさのバランスが良いモデルとしては、次のような機種が挙げられます。

・フルサイズ:Sony α7IIICanon EOS R8Nikon Z5 II
・APS-C:Sony α6500Canon R50Nikon Z50

2. レンズ

民泊撮影で最も重要なのは、「どれだけ広く、歪まずに部屋を見せられるか」という点です。
その鍵を握るのが超広角レンズです。
一般的な標準ズームレンズでは部屋全体を収めきれず、空間が狭く見えてしまいます。

そのため、建築・民泊撮影では「12〜16mm(フルサイズ換算)」程度の超広角レンズが理想です。

フルサイズ機の場合 → 12〜16mm
APS-C機の場合 → 10〜12mm前後

20mm以上(APS-Cなら13〜14mm以上)のレンズでも撮れないことはありませんが、“部屋の広さ”をしっかり伝えるには12mm前後の広角側があると安心です。

このクラスのレンズは一般的なキットレンズには含まれていないため、カメラ本体とは別に購入が必要です。

代表的なレンズ例

フルサイズ対応:
・Sony FE 12-24mm F4 G
・Canon RF 14-35mm F4 L IS USM
・Nikon Z 14-30mm F4 S
SIGMA 12-24mm F4.5-5.6 EX DG
・Tamron 17-35mm F2.8-4 Di OSD

APS-C対応:
・Sony E 10-18mm F4 OSS
・Canon RF-S 10-18mm IS STM
・Nikon Z DX 12-28mm PZ
・SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN
・Tamron 11-20mm F2.8 Di III-A RXD

民泊撮影では基本的にF8〜F11程度に絞って撮影するため、開放F値の明るさにはそれほどこだわる必要はありません。
むしろ、多少暗めでも軽量で歪みの少ないレンズのほうが扱いやすく、コストも抑えられます。

つまり、F値よりも焦点距離のほうが重要です。
「どこまで広く写せるか」が仕上がりを大きく左右するため、レンズ選びではまず焦点距離を確認しましょう。

🚫魚眼レンズは非推奨

いくら広く撮れるといっても、魚眼レンズ(フィッシュアイ)はおすすめできません。
魚眼は画角が180度前後と非常に広い反面、直線が大きく湾曲して歪んで見えるため、建築写真としては不自然な印象になります。

一見インパクトはありますが、「現実より誇張された写真」に見えてしまうことが多く、民泊撮影では避けたほうが無難です。

IMG_1837.jpegもしiPhoneをお持ちであれば、カメラアプリの倍率を「0.5×」に切り替えると、 おおよそフルサイズ換算13mm前後の超広角画角を体感できます。

ブラケット撮影を行わない場合であれば、iPhoneでもある程度の撮影は可能ですが、HDR処理や壁面の質感、光の階調再現などは、やはり一眼レフ・ミラーレス機には及びません。

IMG_1841 (1).JPG.jpgちなみに私は Sony α7III(フルサイズ) に対して、コストを抑えるために、Canonマウントの SIGMA 12-24mm F4.5-5.6MC-11 マウントアダプタを介して装着しています。

この組み合わせは価格面では魅力的ですが、オートフォーカス性能がやや弱いため、暗い室内では小型のLEDライトでAF補助を行っています。

3. 三脚

屋内撮影ではシャッタースピードが遅くなるため、三脚は必須です。
特にHDR撮影(ブラケット撮影)を行う場合、3〜5枚の写真を連続で撮るため、手持ちではわずかなブレでも画像がずれてしまい、合成時にゴースト(ズレや二重像)として現れてしまいます。

民泊撮影は風の影響がない屋内作業なので、軽量タイプでも十分ですが、水平を正確に保つことがとても重要です。
壁や床のラインが少しでも傾くと、全体の印象が不安定に見えてしまい、素人が撮った写真だとすぐにわかってしまいます。
設置時には水平が出ているかを確認する習慣をつけておきましょう。

💡おすすめの三脚タイプ

三脚には大きく分けて2種類あります。

image.png自由雲台タイプ
 1本のノブで動きを固定できるタイプで、軽量・コンパクト・セッティングが速いのが特徴です。
 出張や移動が多い場合に適しており、コスパも良好です。
 ただし、水平を正確に出すのは難しく、民泊撮影では注意が必要です。
 とはいえ、多少のズレであれば現像処理で補正可能です。

3WAY雲台タイプ
 上下・左右・回転の3軸を独立して調整できるタイプで、正確な水平出しが容易に行えます。
 家具や壁のラインをきっちり合わせたい場合に最も適しています。
 私自身は3WAY雲台付き三脚を使用していますが、より精密な調整ができるギア付き3WAY雲台もおすすめです。
 ダイヤルを回すだけで微調整ができるため、水平出しが圧倒的に速く、再現性も高いです。

4. 他に追加で持っていくと便利なもの

・予備バッテリー・SDカード
 1件の民泊撮影でSDカードがいっぱいになることはまずありませんが、データ破損やカード不調のリスクもゼロではありません。
 また、バッテリー切れは意外と起こりやすいので、バッテリー・SDカードともに予備を1個以上用意しておくと安心です。

・クロスやブロアー(レンズ・鏡・ガラス掃除用)
 民泊撮影では、レンズの汚れだけでなく、鏡や窓ガラスの指紋・ホコリが目立つことがあります。
 照明の反射で汚れが強調されやすいため、現場でサッと拭けるようにクロスとブロアーを携帯しておきましょう。

・小型LEDライト
 民泊では窓の少ない部屋や夜間撮影もあり、暗所ではオートフォーカスが迷いやすくなります。
 そんなときは、小型LEDライトで一瞬だけ被写体を照らしてAFを合わせる方法が有効です。
 照明として使うのではなく、あくまでピント合わせ用の補助光という位置づけです。

・グレーカード
 民泊は照明環境が複雑で、蛍光灯・LED・電球色が混在していることが多く、部屋ごとに色味が異なります。
 グレーカードを使えば、Lightroomなどの現像ソフトで後から正確に色合わせができます。

とはいえ、私自身はいつもグレーカードを忘れがちです(笑)。
というのも、ミックス光の環境では「どれかに合わせる」というより、すべての光源が違和感なく共存する中間トーンを探る形になるため、正確な色合わせはそもそも難しいのです。

また、現場で完璧に色を合わせても、仕上げ段階で「もう少し暖かい雰囲気にしたい」とクライアントからリクエストを受けることも多く、最終的には雰囲気重視で調整するケースがほとんどです。
そのため、グレーカードは“あれば便利”くらいの感覚で十分です。

必要な機材まとめ

・カメラ:ミラーレス一眼(APS-C またはフルサイズ)
・レンズ:超広角(目安:フルサイズ12〜16mm/APS-C 10〜12mm)
・三脚:水平を正確に出せるもの(3WAY雲台推奨)
・予備:バッテリー・SDカード、クロス&ブロア、小型LEDライト、グレーカード

Ⅱ カメラ設定と撮影の基本

民泊の室内撮影では、露出・ピント・色味をしっかり管理することが重要です。
オート設定のままだと、明るい窓や暗いカーテンに引っ張られて、思った通りの明るさにならないことがあります。
ここでは、安定して撮るための基本設定を紹介します。

1. 保存形式

保存形式はRAWまたはRAW+JPEGに設定します。
RAWデータは明るさや色を後から自在に調整できるため、HDR合成や現像に最適です。
JPEGのみだと補正幅が狭く、白飛びや黒つぶれを戻せない場合があります。

2. 撮影モード

撮影モードはマニュアル(M)を基本とします。
F値・シャッタースピード・ISOを個別に設定できるため、明るさを安定させやすくなります。
絞り優先モード(A / Av)でも撮影は可能ですが、カメラが自動補正を行うため、HDR撮影時に明るさがバラつくことがあります。
安定した露出を保つためには、マニュアル設定が最も確実です。

3. ISO設定

ISOは100固定が基本です。
高くするとノイズが発生し、壁や天井の質感がザラついて見えることがあります。
三脚を使えばシャッタースピードを遅くしても問題ないので、常に低感度で撮影しましょう。

4. 絞り(F値)

F8〜F11の範囲がおすすめです。
被写界深度を深く取り、手前から奥までピントを合わせるためです。
F16以上まで絞ると小絞りボケが発生し、全体が少し眠たい印象になります。
解像感を保ちながら奥までピントを合わせたい場合は、F8前後が最もバランスが良いです。

5. シャッタースピード

F値とISOを固定した上で、露出がちょうど良くなるようにシャッタースピードを調整します。
三脚を使っているため、1秒以上の低速シャッターでも問題ありません。
ただし、カメラを直接触るとブレが出やすいため、2秒セルフタイマーで撮影すると安心です。

6. ホワイトバランス

ホワイトバランスはオート(AWB)で構いません。
RAW形式で撮っていれば、現像時に色温度を自由に補正できます。
ただし、照明の色が混ざって不自然に見える場合は、電球モードや晴天モードなどに固定すると安定します。

7. ドライブモード(2秒セルフ・ブラケット撮影)

2秒タイマー.jpgドライブモードとは、シャッターボタンを押したあと、どのようにシャッターが切られるかを設定する機能です。

民泊撮影では、シャッターを押す瞬間のわずかなブレを防ぐために「セルフタイマー2秒」を使います。
10秒セルフは集合写真などで使われますが、2秒セルフは星景や夜景など、ブレを極力抑えたい場面で使う設定です。

2秒セルフは、三脚撮影時のブレ防止に非常に有効です。
特にHDR撮影(ブラケット撮影)では複数の露出を連続で撮るため、最初のシャッター操作による振動を防ぐことが大切です。

また、カメラによってはブラケット撮影の設定もドライブモードの中に含まれていることがあります。
設定方法はメーカーごとに異なりますが、まずは2秒セルフを基本にして撮影してみましょう。

8. ブラケット撮影(HDR撮影)について

image2.png日中の室内撮影では、
 ・部屋を明るく撮ると窓の外が白く飛ぶ
 ・外の景色を出そうとすると室内が暗くなる
といった明暗差の問題が起こります。

ブラケット撮影(露出段階撮影)は、こうした明暗差を補うための方法です。
1回のシャッターで明るめ(+EV)、標準、暗め(−EV)など、複数の明るさで自動撮影し、
それらを後でHDR合成して、窓の外も室内も自然な明るさに仕上げます。

「EV(Exposure Value)」とは露出の段数を示す単位で、1EVは明るさが約2倍または1/2になる変化を意味します。
たとえば、
・シャッタースピード:1/60秒 → 1/30秒
・ISO:100 → 200
・絞り:F8 → F5.6
といった変化で1段(1EV)明るくなります。

9. 推奨ブラケット設定

民泊撮影では、シーンによって明暗差が異なるため、まずは

 「±2EV・5枚撮影」

をベース設定としておすすめします。
この設定であれば、晴天・曇天・逆光など、ほとんどのシーンを自然にカバーできます。

主な目安は以下の通りです。
 ・曇り・日陰(明暗差が少ない) → ±1EV/3枚
 ・晴天・窓の外が白飛びしやすい → ±2EV/5枚(定番)
 ・強い逆光や直射日光 → ±3EV/5〜7枚(プロ用途)

10. Sony α7シリーズでの設定例

私が実際に使っているSony α7シリーズの場合の設定をまとめると次のようになります。
 1. 保存形式:RAW+JPEG
 2. 撮影モード:マニュアル(M)
 3. ISO:100固定
 4. 絞り:F11
 5. シャッタースピード:状況に合わせて調整
 6. ホワイトバランス:オート(AWB)
 7. ドライブモード:セルフタイマー2秒
           連続ブラケット(2.0EV/5枚)

この設定をベースにすれば、室内と窓外の明暗差を自然に表現でき、HDR合成時にも安定した仕上がりになります。

Ⅲ 撮影前の準備と部屋の整え方

民泊撮影で最も大切なのは、写真を見た瞬間に伝わる「清潔感」と「明るさ」です。
実は、仕上がりの印象の半分以上は撮影前の準備で決まります。
HDRや機材よりも、まずは「整えること」を意識しましょう。

1. 清掃と整頓は“撮影用”にもう一歩

001.jpg.png宿泊用としての清掃と、写真で映える清潔感は別物です。
以下のような+αの仕上げを行うと、印象が大きく変わります。

・ゴミ箱やリモコン、コード類は視界から外す
・ベッドシーツやカバーはピンと張る(シワが残ると安っぽく見える)
・テーブル上は小物を最小限に(花や観葉植物、カップ程度)
・窓ガラスや鏡は逆光時に汚れが目立つので必ず拭く

2. 照明は「状況に応じて使い分ける」

基本はすべての照明を点けて撮影します。
昼間でも照明を点けることで、空間全体が明るく、温かみのある印象になります。

ただし、次のような場合は調整が必要です:
・電球色と昼白色が混ざって色ムラが強く出る場合
  → どちらかに統一(電球色寄りがおすすめ)
・日中の強い自然光で照明の光が不自然に見える場合
  → 一部を消して自然光を活かす

つまり「全部点ける」が原則ですが、明るさよりも自然さを優先します。

3. カーテンと窓の扱い方

自然光は最も美しい照明です。
外の景色が見える場合はカーテンを全開にして光を取り込みましょう。

ただし、直射日光が強いときはレースカーテンを閉めて、柔らかく拡散させるのが理想です。
カーテンを閉めるときは、シワをしっかり伸ばして見た目を整えることも忘れずに。

4. 家具と小物の配置

DSC06849.jpg「生活感ゼロ」では冷たい印象になってしまいます。
目指すのは、少し理想的な日常の雰囲気です。

・テーブルにワイングラスやカトラリーを置く
・花や観葉植物を飾る
・ベッドサイドや浴室にきれいに畳んだタオルを置く
・窓辺に椅子を置いて滞在のひとときを演出する

過剰にならないよう、1〜2ポイントだけ整えるのがちょうど良いです。

5. 撮影時間の選び方

民泊撮影では、自然光をベースに、必要に応じて照明を補助的に使うのが基本です。
一般的に「東向きは朝」「西向きは午後」と言われますが、実際には建物や地形、季節によって光の入り方は大きく変わります。

最も安定して撮れるのは、太陽が高く光が均一な10:00〜14:00頃
この時間帯なら直射日光の影響も少なく、どの方角の部屋でも自然でバランスの良い明るさになります。

また、曇りの日は時間帯を問わず柔らかい光が得られるため、あえて曇天を狙うプロも多いです。
ただし、朝の東向きや夕方の西向きなど、直射日光が強く差し込む時間帯は、光が黄色く偏ったり、明暗差が極端になりやすいので注意が必要です。

そのような場合は、レースカーテンやディフューザーで光をやわらげ、自然な印象になるよう調整しましょう。

Ⅳ 構図・アングルの基本と実践テクニック

ここまでで、撮影前の準備とカメラ設定が整いました。
次はいよいよ現地での構図(アングル)です。

構図の取り方次第で、同じ部屋でも「広さ・明るさ・居心地」の印象は大きく変わります。
この章では、プロが実践している構図の決め方と、アングル選定のコツを紹介します。

1. 現地で最初にすべきこと

現地に到着したら、まずは部屋全体を見渡して間取り・窓の位置・照明の向き・動線を把握します。
同時に、時間帯による自然光の入り方を確認し、どの方向から撮れば最も部屋が明るく広く見えるかを判断します。

理想は昼間の自然光をベースに、必要に応じて照明を補助的に使うことです。
自然光は壁や床の質感を最も自然に見せ、柔らかい影が清潔で明るい印象を作ります。

ただし、自然光と電球の色が混ざって不自然に見える場合は、どちらかに寄せる(電球色に統一する)と自然です。
また、クライアントによっては「昼の明るく爽やかな印象」を求める場合もあれば、「夜の温かく落ち着いた雰囲気」を重視する場合もあります。

そのため、撮影前にどんなトーンで仕上げたいかを確認しておくことが大切です。

2. 構図の基本は「正対構図」と「振り構図」

正対構図(正面構図)
021_1.jpg壁や家具に対してカメラを垂直に構える構図です。
左右のパースが抑えられ、整然とした印象や清潔感が強調されます。

特にリビングや寝室など、対称性のある空間に効果的です。
まずはこの正対構図を1枚、必ず押さえます。

振り構図(斜め構図)
003.jpgカメラを少し横に振って、部屋を斜め方向から撮影する構図です。
正面から撮る正対構図が空間の整然さを表現するのに対し、振り構図は奥行きや空間のつながり、生活の雰囲気を伝えるのに適しています。

正面を外して少し角度をつけるだけで、リビング・テーブル・ソファといった複数の要素を自然に1枚の中に収められます。
結果として、空間の広がりや立体感が強調され、「この部屋で過ごすイメージ」がよりリアルに伝わります。

たとえば、
・廊下からリビングを見通す構図
・ベッドと窓と照明を一枚に収める構図
・キッチンとダイニングをまとめて見せる構図
などが該当します。

私はまず、正対構図で部屋全体のバランスを把握したうえで、最終的には振り構図をメインカットとして採用することが多いです。
正対構図で整然とした印象を作り、振り構図で奥行きと温かみを加える。
この2つの組み合わせが、民泊撮影を最も自然で魅力的に見せる王道のアプローチです。

3. 「アングル」よりも重要な「カメラの高さ」

内観撮影では、カメラの角度を上下に振らず、水平を保つのが基本です。
壁の縦ライン(柱・窓枠・ドア枠など)が少しでも傾くと、空間が歪んで見え、不安定な印象になります。

下の図は、同じ部屋を異なる高さから撮影した際の、テーブル上の見え方の違いです。
・上段(赤)=カメラを高く構えた場合(ハイポジション
・下段(青)=カメラを低く構えた場合(ローポジションimage3.pngアイレベル(約150cm)を基準にカメラをセットし、見せたい被写体に応じて三脚の高さを数センチずつ変えながら、最も自然に見える位置を探します。
三脚の高さを数センチ変えるだけでも印象は大きく変わります。

傾き補正.jpgまた、撮影時に少しカメラを上向き・下向きにしてしまっても、Lightroomの「垂直補正(Vertical)」機能で簡単に修正できます。

 1. 写真を選択 → クロップ → トリミングとジオメトリを開く
 2. 「垂直(Vertical)」スライダーで、壁や柱がまっすぐになるように調整
 3. 「Constrain Crop(トリミングを自動補正)」をONにして余白を整理

これだけで、上向き・下向き撮影の歪みを自然に補正できます。
多少の傾きなら後で直せる、という気持ちで構図探しに集中しましょう。

4. 撮影方向の決め方(例:1部屋につき4方向)

理論上は8方向(手前・奥・右・左+4つの斜め)から撮影できますが、実際には4方向(正対×2+斜め×2)で十分です。image5.png 1. 正対構図①:入口側から真正面
 2. 正対構図②:反対側から真正面
 3. 振り構図①:左手前から全体を見渡す
 4. 振り構図②:右手前から全体を見渡す

まずは広角で全体を押さえ、その後に小物や照明などディテールを寄りで撮ると構成が自然です。

5. 吹き抜けや外観など特殊構図の扱い

image6.png吹き抜けや階段などは、カメラを上に振って撮影し、Lightroomの垂直補正で自然に仕上げます。
外観撮影も同様で、やや上向きに撮ってから垂直補正で整えます。

建築写真ではティルトシフトレンズを使うこともありますが、民泊撮影では後処理で十分対応可能です。

Ⅴ 現像処理(Lightroom Classic

撮影したブラケット写真は、LightroomでHDR合成すると「窓外も室内も自然に見える」写真に仕上がります。
ここでは Lightroom Classic を使ってHDR合成・現像・レタッチする手順をまとめます。

1. 写真を読み込む(インポート)

RAWデータをLightroomに読み込み(インポート)。
同じ構図の露出違いが3〜5枚で1セット(例:-4EV/-2EV/0EV/+2EV/+4fEV)。

2. HDR合成(結合)

異なる露出で撮影した複数の写真をまとめて選択し(例:5枚)、右クリックしてHDRを作成します。図1.jpg🔸HDR結合の操作手順:
 1. 対象の写真を複数選択(例:±2EV×5枚)
 2. 右クリック → [写真を結合]>[HDR] を選択
 3. プレビュー画面が開いたら、下記の設定を確認

図2.jpgHDR結合プレビュー:
 ・自動整列:ON
  → 三脚撮影で生じるわずかなズレを補正します。
 ・自動設定:OFF
  → 後処理にて調整するので、自動設定はOFFで問題ありません。
 ・ゴースト除去:弱〜中を推奨
  → カーテンの揺れなど、微細な動体ブレがある場合に有効です。
    必要に応じて「オーバーレイ表示」で補正範囲を確認します。

設定を確認したら「結合」をクリック。
Lightroomが自動で複数画像を合成し、高ビット深度(.DNG形式)のHDR画像として出力します。
その後の処理はすべて、このDNG形式の画像に対して行います。

3. 基本補正(現像モジュール)

HDR画像を生成したら、次はLightroomの「基本補正(現像モジュール)」でトーンと色味を整えます。 まずは自動補正で全体のバランスを確認し、そこからハイライトシャドウを中心に微調整していきます。図3.jpg🔸明るさの操作手順:
 1. 「基本補正」パネルを開く
 2. 「自動補正」をクリックして、おおまかな露出バランスを確認
 3. ハイライト: −80〜−100(外や照明の白飛びを抑える)
 4. シャドウ: +40〜+80(暗部を持ち上げる)
 5. 露光量: +1.5〜+2.5(最後に全体の明るさを軽く調整)

「ハイライトを下げる」「シャドウを上げる」だけでも、HDRらしい自然な明るさに近づきます。
トーンカーブは慣れるまでは不要。基本補正だけで十分です。

4. ホワイトバランス(色味)

明るさが整ったら、次にホワイトバランスで色味を微調整します。図4.jpg🔸 色味の操作手順:
 1. 「基本補正」パネルの上部で [撮影時]→[自動] に切り替え
 2. 「色温度」スライダーで暖かさを微調整(+方向で暖色寄りに)

Lightroomの自動設定はかなり精度が高く、まずは「自動」に切り替えるだけでも自然なトーンになります。
そこから、色温度をわずかに暖色寄り(+方向)に調整すると、部屋が柔らかく居心地のよい印象になります。

昼間の自然光中心の撮影では、自動設定または5200〜5800K前後が目安です。

もし「太陽光」プリセットでやや青く感じる場合は、+100〜200Kほど上げると自然になります。

夜間や電球照明では、3200〜3800K程度に調整し、緑っぽく見える場合は「色かぶり補正」を少しマゼンタ方向へ寄せます。

また、昼白色と電球色が混ざるようなシーンでは、壁の白さを基準に手動で微調整すると違和感が出にくいです。

Lightroomのスポイトツールを使って、壁やカーテンなど白っぽい箇所をクリックすれば、ほぼ正確なホワイトバランスに自動で整えてくれます。

まずは「自動」または「スポイト」でおおまかに整え、そのあと自分の目で見て少しだけ暖かく仕上げる——という方法がいちばんスムーズだと思います。

5. レンズ補正

広角レンズで撮った室内写真は、歪みと垂直の処理が仕上がりを大きく左右します。
まずは「レンズ補正」でレンズ固有の歪みを補正し、基礎を整えましょう。図5.jpg🔸 操作手順:
 1. 「レンズ補正」パネルを開く
 2. 「プロファイル補正を使用」にチェックを入れる
 3. 使用レンズのメーカー・モデルなどを確認/選択する
  → Lightroomが自動で使用レンズを認識し、
   歪みと周辺減光(周辺の暗さ)を自動補正してくれます。

補正前後を比較すると、壁や柱の縦ラインがまっすぐに整い、全体の空間が安定して見えるのが分かります。図6.jpgもし自動でプロファイルが選択されない場合は、「手動」タブに切り替えてゆがみの「適用量」スライダーを +5〜+25ほど動かし、ラインが真っ直ぐに見える位置で止めます。

補正を行うと、上図のように写真の端に空白(余白)が発生することがあります。
その場合は、「切り抜きを制限」にチェックを入れることで、Lightroomが自動的に余白を除去し、自然な構図にトリミングしてくれます。

補正は“まっすぐにしすぎない”ことも大切です。

家具や床のラインを見ながら、自分の目で見て最も自然に感じる位置で調整しましょう。

6. 変形補正(Upright)

レンズ補正で歪みを整えたら、次に垂直補正(Upright)で建物の傾きを正します。
この工程で、壁・柱・家具の縦ラインがまっすぐに揃い、空間が引き締まります。図7.jpg🔸 操作手順:
 1. 「変形」パネルを開く
 2. 「Upright(アップライト)」の中から構図に応じて選択

まずは「自動」をクリックしてみましょう。
Lightroomが写真内のラインを解析し、垂直・水平のバランスを自動で補正してくれます。

それでも傾きが残る場合は、「垂直方向」や「水平方向」スライダーを使って微調整します。

もし建物の歪みが複雑でうまく補正できない場合は、「ガイド付き」モードがおすすめです。図8.jpgガイド付きでは、写真の中の縦のラインを2本指定することで、確実に垂直を取ることができます。
たとえば、左右の柱やドア枠など、「実際に垂直なはずの部分」に沿って2本のガイドをドラッグすればOK。
Lightroomがそのガイドを基準に正確に補正してくれます。

自動補正 → 微調整 → ガイド付き、という順番で進めると、ほとんどの写真で自然に整います。

とくに壁やドアの縦ラインが揃っていると、写真全体がスッと安定し、プロが撮ったような完成度になります。

7. 部屋ごとのトーン設計とシリーズ全体の統一感

民泊写真では、まず「明るい=清潔」を最優先に考えます。
その上で、部屋ごとにわずかにトーンを変えると、シリーズ全体にストーリー感が生まれます。

・リビング:明るめ+ほんのり暖色(+100〜200K)=快適さ・温かみ
・寝室:中程度の明るさ+柔らかい影=落ち着き(暗すぎると狭く見える)
・キッチン:明るく+やや高コントラスト=清潔感・機能性
・浴室:白基調+シャドウ高め+ハイライト抑制=清潔感・透明感

8. シリーズ全体のバランスを確認する

現像が終わったら、一度出力して一覧で確認します。図10.pngGoogleフォトなどにアップして並べてみると、明るさや色温度の「ズレ」が客観的に見えてきます。

ポイントは、時間をおいて複数回見ることです。

作業直後は目が慣れていて違和感に気づきにくいため、1〜2日後に見返すと「少し暗い/黄味が強い」といった微妙な差に気づけます。

さらに、MacBook・iPhone・iPadなど異なるデバイスで確認すると、光の環境や画面特性の違いから、より正確に全体の統一感を判断できます。

こうして「現像中の印象」ではなく、「見る人の目線での印象」に合わせて微調整を重ねることで、最終的に安定したクオリティと統一感のある納品写真に仕上がります。

9. 書き出し(納品・掲載用)

Lightroomでの現像が終わったら、最後に書き出し設定を整えます。
AirbnbやBooking.comなど、Web掲載を前提とした一般的な設定は以下が目安です。図11.pngLightroomの「書き出し」画面で、次のように設定します:
・ファイル形式: JPEG
・カラースペース: sRGB IEC61966-2.1
 → Webやスマホで最も正確に色が再現されます。
   AdobeRGBはブラウザでくすむこともある様です。
・画像サイズ調整: オフ(オリジナル解像度のまま書き出し)
 → 一般的なカメラでは長辺が3000px以上あるため、そのままで十分。
・画質: 85〜95
 → 90前後が、画質とファイルサイズのバランスが最も良好です。
・出力シャープ: スクリーン用・標準(高でもOK)
・メタデータ:
  - 人物情報:削除
  - 位置情報:削除(物件保護のため必須)
  - 著作権情報:保持
  → Lightroomの著作権・キーワード設定は残しておくと便利です。

💡 補足:
・AirbnbやGoogleマップなど複数の媒体で使う場合は、「納品用」と「バックアップ用」にフォルダを分けておくと管理が楽です。
・ファイル名は「Minpaku_部屋名_番号.jpg」など、施設や部屋が識別できるよう統一しておくと後の検索性が高まります。

10. 現像〜納品までの最短ワークフロー(完全チェックリスト)

1. セット選択 → HDR結合
自動整列を ON。ゴーストはプレビューで「なし/低/中」を見比べて決定。

2. 基本補正(明るさ)
自動補正で全体の当たりを見る → ハイライトを下げ、シャドウを上げる。
露光量は、最後に全体の明るさを見ながら +1.5〜+2.5 で軽く調整。

3. ホワイトバランス
WB を「自動」に切り替え → 色温度をわずかに+方向(暖色寄り)へ。
必要に応じてスポイトで白基準をクリックして微調整。

4. 歪みと垂直補正
レンズ補正:[プロファイル補正を使用]にチェック(見当たらない場合は手動で適用量を+5〜25)。
Upright:まず自動 → 足りなければ垂直/水平スライダーで微調整。
それでも傾く場合はガイド付きで縦2本を指定(確実に垂直が取れる)。

5. トーンの仕上げ
部屋の用途に合わせて雰囲気を微調整。
例)リビング=ほんのり暖色、浴室=白を清潔に、寝室=やや落ち着きトーン。

6. 書き出し(納品)
JPEG/sRGB/長辺 2000px以上/画質 90 前後/スクリーン用シャープ「標準」。
位置情報は削除、著作権情報は保持。

💡 効率アップのポイント
・同一条件のカットは 「設定を同期」
 (前の補正を適用 → 必要箇所だけ微修正)
・レンズ補正・Upright・書き出しは プリセット化 してワンクリック化
・最後に Googleフォト等で一覧確認 → 1日おいて見返す
    → 気になるカットだけ再調整

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、私自身の経験をもとに、民泊や室内撮影の現像手順をできるだけ実践的にまとめてみました。

内容の多くは私の独自のやり方ですが、執筆にあたってはさまざまなサイトや書籍を参考にしています。

建築・インテリア写真というと「難しそう」と感じる方も多いかもしれませんが、この記事がきっかけとなって、少しでも多くの方が民泊撮影にチャレンジしてみようと思っていただけたら嬉しいです。

また、「この部分が足りない」「こういう方法もある」「この考え方も良いよ」といったご意見やアイデアがあれば、ぜひコメントやメッセージで教えてください。
内容に応じて、今後も記事をアップデートしていきたいと思います。

「スマホで完結する民泊撮影(仮称)」については、また追って記事を投稿したいと考えています。

今後も、現場で役立つ撮影・現像のノウハウを共有していきますので、どうぞよろしくお願いします。📸

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ケビン@FAコンサル/フォトグラファー

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