- 投稿日:2025/11/20

はじめに〜なぜこの記事を書こうと思ったのか〜
車椅子って、街でも病院でもよく見かけるのに、
「どう調整したらいいのか」「どこを触っていいのか」
意外と知らないまま使っている人がとても多いんです。
僕自身、理学療法士として働く中で、
そしてスーパーや街中で車椅子の方を見かけるたびに、
「あ、この車椅子…身体に合ってないかもしれない」
そう感じる場面が何度もありました。
足がフットサポートに届いていなかったり、
肘置きが高すぎて肩が上がっていたり、
背中が丸まってつらそうにしていたり……。
でも、それは乗っている人のせいではありません。
ただ単に、車椅子のどの部位がどんな役割なのか
そして 身体にどう合わせるとラクになるのか
それを教えてもらう機会がないだけ。
だからこそ、この記事を書きました。
リベシティという「安心して学べる場所」がある今、
車椅子を使うことになった人も、介助する家族も、
そして新人スタッフや福祉に関わる人も——
この記事さえ読めば大丈夫。
そんな “超・基本” を、
できるだけやさしく、わかりやすくまとめました。
🦽 車椅子の基本構造を知ろう
車椅子は一見シンプルに見えますが、
実は 14ヵ所以上のパーツが組み合わさってできた精密な道具 です。
それぞれの部位には「支える」「守る」「動きを助ける」といった役割があり、
どれか一つの調整が合わないだけで、
姿勢が崩れたり、疲れやすくなったり、ケガにつながったり します。
それでは各部位の説明をしていきます📝
気になるところから読んでいってくださいね😊
① アームサポート

役割
肘を支えて体幹を安定させる。立ち座りの補助にも使う。
身体との合わせ方
肩が上がらず、肘が自然に90°に曲がる高さが理想です。
車椅子のタイプによっては高さ調整機能がついているものもあります↕️
高すぎると肩こりの原因になりますし
低すぎると肘を伸ばさなくてはいけないので快適さが損なわれてしまいます💣️
ワンポイント
移乗(ベッド⇔車椅子)する時に邪魔になってしまうことがあるので、跳ね上げ式や脱着可能なタイプのものを使用すると乗り移りしやすいと思います。
② サイドガード(別名:スカートガード)

役割
衣類がタイヤへ巻き込まれるのを予防。体幹の横側の安定補助。
身体との合わせ方
座幅と直結しますので狭すぎれば窮屈に感じますし、逆に広すぎれば座っている時の安定感が損なわれると思います。縦拳一個分のスペースが空いていればちょうどいいかと思います💡
③ 座シート

役割
骨盤を支える“座位姿勢の土台”。
身体との合わせ方
中古車椅子だったりするとシートがたわんでいることもあるのでまずはシートにたわみがなく“ピン”と張っているか確認しましょう!
車椅子の種類によってはシートの張り具合を調節できるものもあります。
あと、膝が曲がるところぴったりにシートがあたると座っている時に不快な思いをする方が多かったので指2〜3本分くらい余裕をもたせると快適に座れます👌
注意点
シートが伸びてたわむと骨盤が後傾しやすいです😅
骨盤が後傾すると猫背の原因となり人によってはむせの原因となりますのでシートのたわみ具合は確認しておきましょう!
④ クッション

役割
圧抜き・姿勢保持・座位の安定。褥瘡予防にも必須。
身体との合わせ方
実はクッションが車椅子においては超・重要ポイントなんです‼️
しかし、日本ではクッションの重要性はさほど認知されておらず、「クッションなんてなんでもいいんでしょ?」なんて声もしばしば聞かれます🥲
クッションでまず絶対に選んでほしくないのは低反発素材のもの🙅
これは骨盤が後傾しますし、身体が沈み込んでしまいますし、汗蒸れも生じやすいので可能な限り避けたいクッションです。
では逆にどんなモノが望ましいのか?
●坐骨受けがある:坐骨で身体を支えられる形状になっているもの
●クッション底部が硬い素材でできているもの
●褥瘡(=床ずれ)予防構造があるもの
上記3点がそろっているとクッションとしては申し分ないです🙆
例えばJAY2クッションなんかがいい例ですね。
ワンポイント
車椅子の快適さに直結するパーツです。
いいクッションを選べば褥瘡予防や姿勢改善にも貢献します🏥
⑤ レッグサポート

役割
ふくらはぎを支える。
むくみ・痛み・麻痺のある人で非常に重要。
身体との合わせ方
ふくらはぎが圧迫されない程度の張り具合に調節してください💡
⑥ フットレスト(=フットサポート)

役割
足を安定させ骨盤の姿勢を整える。
身体との合わせ方
下腿長に合わせて高さを調整する。
高すぎると膝が持ち上がり腰が丸くなる⏫️
低すぎるとフットレストが地面や段差に引っかかり移動の阻害要因となる⏬️
注意点
これは実際にあったことなんですが、立ち上がる際にフットレストを跳ね上げず、立とうとした方がいてフットレストを踏みつけてしまった時車椅子がてこの原理で前方へ倒れあわや転倒しそうになったことがありました😅
立ち上がるときは絶対に跳ね上げてから立つようにしてください🤞
⑦ キャスタ(前輪)

役割
方向転換の中心。小回り性能を担います。
注意点
小回りを担うとのことで地面に落ちてる髪や砂利なども車軸に巻き込まれやすいです。定期的に取り除いてグリースなどで円滑さを保持しておくと移動の負担軽減となります🥸
⑧ ブレーキ(タイヤロック)

役割
車椅子を停める機能
注意点
ブレーキは左右1本ずつ付いています。
よく片方だけブレーキをかけ立とうとする方がいるのですが、立ち上がる際に車椅子が動いてしまい危ないので私は必ず左右ともにブレーキをかけたか確認するよう伝えています🥺
⑨ 駆動輪(後輪)

役割
車椅子の推進力を得る箇所
注意点
ノーパンクタイヤであればいいのですが、そうでない場合継続使用することでタイヤの空気が抜けてきます👩🦽
自転車のタイヤと同様に指で押した時タイヤが凹まないか確認しましょう👆️
⑩ ティッピングレバー
役割
段差越え時に後輪へ荷重を移すための踏みレバー。
使い方(介助者側)
レバーを足で踏み前輪を浮かせてください🙆
注意点
勢いよく踏むと“乗っている人の背中が急に倒れる”危険ありがありますから、レバーを踏む前に必ず使用者に対して「今から、車椅子が傾きますから驚かないでくださいね」などといった声掛けをしておくといいでしょう🙆
⑪ ハンドリム

役割
自走者が手で漕ぐ輪。速度・方向を操作します。
操作方法
前進:ハンドリムを掴んだ状態で後ろから前に向かって押す
後進:ハンドリムを掴んだ状態で前から後ろに引く
右回転:左側のハンドリムを前/右側のハンドリムを後ろにそれぞれ動かす
左回転:右側のハンドリムを前/左側のハンドリムを後ろへそれぞれ動かす
注意点
たまに後輪を掴んで車椅子を操作しようとする人がいるのでハンドリムを掴むように伝えてください🙌
⑫ 介助ブレーキ
役割
坂道や停止時に介助者が使うブレーキ。
注意点
急ブレーキは“前のめり事故”につながる危険があるので、徐々にかけて制動してください👌
⑬ ハンドグリップ

役割
押すときに使う握り手。介助者の疲労を大きく左右。
注意点
稀にハンドグリップを使用して車椅子・前輪を浮かせようとする方がいますがフレーム破損の原因となりますので、ティッピングレバーを使用するようにご注意を!
⑭ 背シート(バックサポート)

役割
背中のカーブに合わせて姿勢を支える部位。
身体との合わせ方
バックサポートがマジックテープ等で調節可能なタイプの場合は仙骨座りとならないように仙骨から腸骨翼にかけてマジックテープをしっかりしめて固定します。逆に胸椎あたりは自然な後弯となるように締めすぎず身体のラインに沿って調節をしてください📝
ワンポイント
ちなみに肩甲骨の下(肩甲骨下角)がバックサポートの上部に合うのが適正なサイズです📝
車椅子は、ただ“座って移動する道具”ではありません。
14カ所以上のパーツが、それぞれしっかり役割を持ちながら
乗る人の身体を支えてくれています。
でも実際の現場や街では、
高さが合っていないフットサポート、
浅くて前滑りしそうな座位、
腕がうまく置けず肩が上がっている姿……。
「あと少し調整できれば、もっとラクなのにな」
そんな場面を本当にたくさん目にしてきました。
この記事が、
よーちゃんと同じように「大切な人を支えたい」と思う方にとって
少しでも安心の材料になれば嬉しいです。
もし家族や利用者さんが車椅子を使い始めたら、
今日の記事の中から、たった1つだけでもいいので調整ポイントを思い出してください。
それだけで、座り心地も、疲れやすさも、ケガのリスクも確実に変わります。
車椅子は、知ることで使い方が変わり、
使い方が変われば「暮らしの質」が大きく変わります。
これからも、
現場で出会った“本当に役立つ知識”を、
わかりやすく、丁寧に、安心して使える形で届けていきます😊✨




