• 投稿日:2025/11/30
【公認心理師が語る】心臓バクバクは脳の誤警報!?逃げると悪化する「不安の仕組み」

【公認心理師が語る】心臓バクバクは脳の誤警報!?逃げると悪化する「不安の仕組み」

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ゆうき@youtube、図書館投稿

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要約
「不安で動悸が止まらない」それは性格ではなく、脳の警報装置(扁桃体)の誤作動です。実は「怖いから逃げる」と、脳は余計に恐怖を学習してしまいます。不安の正体と、脳のバグを修正する「小さな実験」の方法を解説。性格のせいにするのは終わりにして、脳をアップデートしませんか?

皆さん
こんにちは。こんばんは!
ゆうきです。😊

今日は心理学の知見に基づいて
「不安」って何だろう?
という漠然とした
言葉について
一つずつ
かみ砕いて説明していき
たいと思います。

はじめに:
そのドキドキ、あなたのせいじゃありません

・「明日、学校や会社に行くのが怖い」
・「人前で話すことを想像しただけで
心臓が早鐘を打つ」
・「電車に乗ると、息ができなくなりそうになる」

こんな「得体の知れない不安」
を感じた方や
なんでそんな不安が出てくるんだ?
と疑問に思った方いらっしゃいますか?

結論から言いましょう。
それは
脳にインストールされている
「防衛アプリ」が、ちょっと高性能すぎて
「誤作動」を起こしているだけ
なのです。

この記事では
米国国立精神衛生研究所(NIMH)や
最新の脳科学・心理学研究
などの信頼できるデータに基づき
「なぜ不安になるのか?」そして
「どうすればそのバグを修正できるのか?」を
解説します。

第1章:
脳内で起きている「火災報知器」の誤作動

まずは
ハードウェア(身体)の話です。
私たちが不安を感じている時
脳の中では何が起きているのでしょうか?

1. 扁桃体(へんとうたい)
=「超敏感なセキュリティソフト」

脳の奥深くには「扁桃体(Amygdala)」
というアーモンドの形をした部位があります。
これは、いわば「恐怖のセキュリティソフト」です。

役割: 目や耳から入る情報をスキャンし
「危険か? 安全か?」を瞬時に判定します。

特徴: とにかく「速さ」重視。
「正確さ」は二の次です。

例えば、道端に落ちている「ホース」を見て
「ヘビだ!」と飛びのいた経験はありませんか?
これは扁桃体が、理性が働くよりも先に
「とりあえず危険信号を出せ!」と命令したからです。

2. 前頭前野(ぜんとうぜんや)
=「冷静な管理者」

通常であれば、脳の司令塔である
「前頭前野(Prefrontal Cortex)」が働きます。
「落ち着いて。あれはただのホースだよ」
「メールの返信が遅れても命は取られないよ」と
セキュリティソフト(扁桃体)の暴走をなだめます。
これを専門用語で「トップダウン制御」と呼びます。

3. バグの発生(不安症の状態)

しかし、強いストレスや疲れがたまると
この「管理者」の機能が弱まり
制御不能になります。
すると、セキュリティソフト(扁桃体)
が好き勝手に暴れだします。
「トースターからパンの焦げた匂いがしただけで
ビル全館の非常ベルを鳴らす」ような状態です。
これが「頭では大丈夫とわかっているのに
不安が止まらない」現象の正体です。

第2章:
なぜ「身体」がおかしくなるのか?(闘争・逃走反応)

非常ベルが鳴ると
脳は「戦闘モード」に入ります。
これを「闘争・逃走反応(Fight or Flight Response)」
と呼びます。
ハーバード大学医学部などの解説によると
これは原始時代から続く
「生き残るためのプログラム」です。

身体の不快な症状には
すべて「生き残るための理由」があります。

心臓がバクバクする(動悸):
 戦うための酸素と栄養を
筋肉へ大量・高速に送り届けるため。

息が苦しい(過呼吸): 
酸素を多く取り込もうとして呼吸が速くなるため。

手足が冷える・汗をかく:
 重要な臓器に血液を集めたり
体温上昇を防ぐ冷却水(汗)を出したりするため。

お腹が痛くなる・吐き気: 
戦闘中に消化活動は不要なため
胃腸をストップさせるため。

つまり
あなたの身体は壊れているのではありません。
「脅威に対して、ものすごく優秀に準備を整えた」
のです。
ただ悲しいことに
現代社会の「会議室」や「教室」では
その戦闘モードは不要であり
ただ苦しいだけになってしまっています。

第3章:
ここが重要! 不安を「悪化」させる本当の犯人

「脳の誤作動」は、きっかけに過ぎません。
不安を長引かせ
雪だるま式に大きくしてしまう本当の犯人は
実は私たちの「行動」にあるそうです。

それはズバリ
「回避(逃げること)」です。

脳が学習する「負のループ」

認知行動療法(CBT)の理論では
不安は以下のように強化されると
考えられています。

不安発生: 「人前で話すのが怖い」と感じる。

回避行動: 仮病を使って休む(逃げる)。

結果: ホッとする(不安が下がる)。

一見、解決したように見えますよね?
でも、脳はこう学習してしまいます。
「ほら見ろ! 逃げたおかげで助かったぞ。
やっぱりあの場所は危険なんだ。
次も絶対に逃げなきゃダメだ!」

これを心理学で
「負の強化(Negative Reinforcement)」
と呼びます。
逃げれば逃げるほど
脳のセキュリティ設定は「危険レベルMAX」
に書き換えられ
次はもっと強い不安が襲ってくるようになります。

厄介な「安全行動(隠れ回避)」

「私は学校や会社に行ってるから大丈夫」
という人も要注意です。
その場にいながらこっそり逃げている
「安全行動(Safety Behaviors)」
があるかもしれません(Salkovskis, 1991)。

パニック症の人: 「常に水を持ち歩く」
「出口の近くに座る」

対人不安の人: 「スマホを見て会話を避ける」
「事前にセリフを完璧に暗記する」

これらは「お守り」のようなものです。
これを持っていると
「お守りを持っていたから助かった
(本当は危険だけど)」と脳が勘違いし続け
いつまでたっても「何もなくても実は安全だ」
という事実(反証)を学べません。


第4章:
解決策「脳の再インストール」実験

では、どうすればいいのでしょうか?
英国の国立医療技術評価機構(NICE)
のガイドラインでも推奨されている
最も効果的な方法は、「脳に『実は安全だよ』
という新しいデータを学習させる」ことです。
これを「曝露療法(ばくろりょうほう)」
と言います。

最近の研究(Craske et al., 2014「抑制学習モデル」)
では、単に慣れることよりも
「予想(悪いこと)が外れる体験」
をすることが重要だとされています。

ステップ1:仮説を立てる(バグの特定)

まず、自分が何を恐れているか書き出します。

思考(バグ): 
「発表中に声が震えたら
クラス全員に笑われて人生が終わる」

確率予想: 100%

ステップ2:
安全行動を外して実験する(デバッグ)

あえて、その場面に飛び込みます。
ただし、ここが重要です。
「お守り(安全行動)」を捨てて挑みます。

スマホを見ずに、誰かと目を合わせる。

水を飲まずに、電車に一駅乗ってみる。

ステップ3:結果を検証する(アップデート)


やってみると
不安は一時的にピークに達しますが
下がっていくことを体験することができると思います。
そして、「意外と大丈夫だった」
「誰も笑わなかった」という事実に気づきます。

これを繰り返すことで
脳は「なんだ、警報を鳴らす必要なんてなかったじゃん」
と学習し
扁桃体の感度設定を「正常」
に近づけてくれるそうです。
これを「期待違反(Expectancy Violation)」
による学習のアップデートと呼びます。


まとめ:
今日からできる「小さな実験」

不安は、性格の問題ではなく
「脳の警報システムの誤作動」×「逃げることによる強化」
で作られたプログラムです。
プログラムである以上
正しい手順を踏めば書き換えることができます。

まずは
今日一日の中で「小さな安全行動」
を一つだけやめてみませんか?

いつもより一本遅い電車に乗ってみる。

自分から「おはよう」と言ってみる。

その小さな「実験」の積み重ねが、あなたの脳をアップデートし、本来の自由な心を取り戻す鍵になります。


📚 参考文献・信頼できる情報源


この記事は、以下の信頼できる医学的・心理学的情報を元に作成しています。

米国国立精神衛生研究所 (NIMH)

Anxiety Disorders (不安障害の概要)

公式サイト(英語)

ハーバード大学医学部 (Harvard Health Publishing)

Understanding the stress response (ストレス反応と闘争・逃走反応の仕組み)

記事リンク(英語)

パニック障害の認知モデル

Clark, D. M. (1986). A cognitive approach to panic. Behaviour Research and Therapy.

身体感覚(動悸など)を「危険だ」と誤解釈することがパニックの原因であるとする古典的理論。

PubMed (PMID: 3741311)

安全行動と社会不安

Rapee, R. M., & Heimberg, R. G. (1997). A cognitive-behavioral model of anxiety in social phobia.

「安全行動」が不安を維持させてしまうメカニズムについての基礎研究。

ScienceDirect

曝露療法の最新理論(抑制学習モデル)

Craske, M. G., et al. (2014). Maximizing exposure therapy: An inhibitory learning approach.

「慣れ」よりも「期待を裏切る(悪いことは起きない)体験」が重要であるとする現代の標準的アプローチ。

PMC全文(英語)

【免責事項】 この記事は教育・情報提供を目的としており、医師による診断・治療に代わるものではありません。不安が強く日常生活に支障がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。updated_image_with_text_shadow.pngAIツールを使った時短術から
運動や心理学を通じた心と体の健康まで。
私が記事を書き続ける原動力は
「皆さんの毎日が、昨日より少しでも豊かで
軽やかになってほしい」
という、ただ一つの願いです。

テクノロジーは
私たちの生活を便利にしてくれます。
そして
自分自身の心と体についての正しい知識は
私たちの人生そのものを豊かにしてくれます。

これからも
この両輪で皆さんの「知りたい!」
に応え続けていきたいと思います。

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何よりのエネルギーになります。

長くなりましたが
最後まで読んでいただき
本当にありがとうございました。
また次回の記事で
新しい発見を一緒に楽しみましょう!😊

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