• 投稿日:2025/12/14
資格試験に落ちる人が多い会社で、まず変えるべきは「勉強法」ではなかった話

資格試験に落ちる人が多い会社で、まず変えるべきは「勉強法」ではなかった話

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かぜみどり

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要約
資格試験の不合格が続くのは「勉強法」より「締め切りとゴール設計」の問題かもしれません。大学実験とネイビーシールズの事例から、先延ばしを減らし合格率を上げる仕組みを、現場で回せる具体策付きで解説します。
ある日、私が会社で研修を受けていたとき、一緒に研修を受けていた経営者の方と雑談になりました。
そのとき、その経営者の方は、ひとつの悩みを抱えていました。

その会社ではガス関係の仕事をされており、従業員がある資格を取得しなければ、責任者として仕事ができない状況にあるそうです。ところが、何度も試験に挑んでいるのに落ちてしまう人が非常に多い、という悩みでした。

この話を聞いて、改めて「自分ならどうするだろうか」と考えてみました。勉強法や暗記のテクニックも当然大切ですが、私が特に注目したのは、目標や勉強の進め方(締め切りの設計)に関する部分です。今回は、その考えを共有します。

先延ばしを減らす鍵は「締め切りの置き方」にあります

ここで紹介したいのが、大学の授業で行われた実験です。12週間の学期のあいだに課題レポートを3回提出してもらうにあたり、3つのクラスに異なる条件を設定し、提出方法が成績にどう影響するかを調べました。

Aクラス:締め切りを自分で決める(ただし厳しい条件つき)

Aクラスでは、いくつかのルールを付けたうえで、学生自身にレポートの提出日を決めてもらいました。学生は「私はレポート①を○週目までに提出することを約束します」といった形で、あらかじめ教授に締め切りを申告します。

条件は以下のとおりです。

一度決めた提出期限は、あとから変更できません

期限までに提出できなければ、1日遅れるごとに成績を1%ずつ減点されます

決めた期限より早く提出しても、成績にはプラス評価されません

合理的に捉えると、レポート①②③のすべてを12週目に締め切りとして設定し、あとは自分のペースで進めるのが、ペナルティを避ける点では最も効率的に見えます。
ところが実際には、「好きなように締め切りを決めてよい」と伝えられても、多くの学生は提出日が偏らないように、締め切りを分散させて設定していました。

Bクラス:最終週までに3本提出すればOK(完全自由)

Bクラスでは、3つのレポートについて「最後の講義までに3本すべて提出してあれば構わない」という条件だけを伝えました。
レポートをどのタイミングで進めるかについては完全に自由であり、最も柔軟性が高く、ペナルティもほとんどありません。

Cクラス:締め切りは教授が指定(強制)

Cクラスでは、3つのレポートの提出日を教授側があらかじめ指定しました。

4週目:1本目のレポート

8週目:2本目のレポート

12週目:3本目のレポート

このスケジュールで提出しなければ成績は認められません。学生側に選択の余地は少なく、自由度が低い一方で、負荷やペナルティはもっとも重いクラスです。

成績が高かったのは「締め切りが厳しい」クラスでした

では、最終的にどのクラスの成績がもっとも高かったのでしょうか。

結果は、
Cクラス → Aクラス → Bクラス
の順に成績が高い、というものでした。

この結果から導かれるポイントは次のとおりです。

学生の多くは物事を先延ばしにしがちです

外部から与えられる、比較的厳しめの締め切りは行動を促すうえで効果が高いです

まったく締め切りがない状態と比べれば、たとえ自分で決める形であっても、締め切りを設定したほうが良い結果につながります

AクラスがCクラスに負けた理由は「締め切りの集中」でした

ここで重要なのが、「成績の内訳」です。
Aクラスの平均点はCクラスと比べて極端に低いわけではありませんでした。しかし平均点を押し下げる要因となったグループが存在しました。

それは、「レポートをすべて12週目、あるいは10・11・12週目のように、学期の終盤に締め切りを集中させる」という選択をした一部の学生たちです。

締め切りが学期の終盤に固まると、多くの学生は先延ばししやすくなります。そして提出期限が迫ってから慌てて3本のレポートを仕上げることになり、結果としてレポートの質が下がり、成績も低くなってしまいました。

整理すると、次のようになります。

Aクラスで締め切りを学期末にまとめた学生:Bクラスに近い、低めの成績でした

Aクラスで締め切りを分散した学生:Cクラスに近い、比較的高い成績でした

つまり、締め切りを自分で決めるか、誰かに決めてもらうかに関わらず、「適切な締め切りの置き方」こそが先延ばしを減らすカギになるということです。

ネイビーシールズも「ゴールの分解」を重視しています

同じ結論に別方向からたどり着く例として、ネイビーシールズの訓練「ヘルウィーク」の話があります。
この過酷な訓練を乗り越えた人たちに共通するのは、根性だけで耐えているのではなく、「あと10分だけ頑張る」「次の食事まで」といった分解されたゴールを使っていることだと言われています。

目標が大きすぎると、脳は「達成できない」と判断しやすくなり、やる気のスイッチが入りにくくなります。逆に簡単すぎても満足できません。また、目標が長期すぎると疲れがたまり、やる気が削がれてしまいます。

そのためネイビーシールズでは、ゴールを細かく区切り、成功の感覚を作りながら「次にやるべきこと」に意識を向ける工夫が散りばめられているのです。

資格の勉強には「適切な締め切り」と「適切なゴール」が必要です

ここまでの2つの話から、資格の勉強を進めるには、適切な締め切りとゴールの設計が必要だと考えます。

たとえば資格の問題集が10章あり、期間が3ヶ月あるとするなら、次のように締め切りを細かく作るのが有効です。

1ヶ月後:1〜5章に関する小テスト

2ヶ月後:6〜10章に関する小テスト

3ヶ月後:全体を通したテスト

これにより、学習が「最後にまとめてやる」状態になりにくくなります。

追加の運用案(現場で回しやすい形)

最後に、より現場で使いやすくするための追加案も紹介します。

① 小テストで合格ライン未満なら「計画見直し面談」

各小テストで合格ライン(例:60点)に届かなかった場合、個別に勉強計画を見直す面談を行います。
次のテストまでに「○時間の自習記録」を提出する、などの形にしても良いと思います。

② 週ゴールを設定し、週末にチェックを入れる

「今週は○章まで解く」「この範囲の問題を○問までやる」といった週ゴールを設定し、週の終わりに簡単なチェックテストや進捗報告を行います。
月単位だけよりも、先延ばしを抑えやすくなります。

③ “いつ受けるか”だけ本人が宣言する(選択の余地を残す)

「1ヶ月目のどこかで1〜5章テスト」「2ヶ月目のどこかで6〜10章テスト」という枠は決めつつ、その中で何週目に受けるかは本人に事前に宣言してもらう方法もあります。

例:
「1〜5章テストは3週目末、6〜10章テストは7週目末に受けます」

これにより、「命令されている」よりも「自分で選んだ」という感覚が生まれ、取り組みやすくなる可能性があります。

まとめ:意志ではなく、設計で勝率を上げます

資格試験の合否は、本人の努力や能力だけで決まるわけではありません。先延ばしが起きやすい環境では、締め切りが遠いほど、そして区切りがないほど、人は動けなくなります。

だからこそ、組織としてできる現実的な打ち手は、
「締め切り」と「ゴール」を適切に区切って設計することだと思います。

勉強を「させる」よりも、勉強が「進む仕組み」を作る。
そのほうが、再現性のある改善につながりやすいはずです。

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