- 投稿日:2025/12/28
行列ができている店を見ると、多くの人は「ここは人気があるのだろう」と感じます。これは単なる印象論ではなく、人が集まっているものを正しい選択だと判断しやすいという、人間の基本的な心理が働いている状態です。いわゆる社会的証明です。
この観点で見ると、行列は非常に優秀な集客装置です。広告を打たなくても、「選ばれている感」「今行くべき感」を自然に演出できます。そのため、結論としてはシンプルで、行列は積極的に作った方がよい場面があります。
ただし、ここに大きな落とし穴があります。行列を作ることに成功した瞬間から、顧客体験のリスクも同時に増え始めるという点です。
行列は「集客装置」であると同時に「離脱装置」にもなる
行列があると、お客様の期待値は自然と上がります。これだけ並ぶのだから、きっと満足できるはずだ、という期待です。
ところが、並んでいる時間が暇で、足が疲れ、どれくらい待つのかも分からない状態になると、その期待は少しずつ不満へと変わっていきます。結果として、「味や商品は悪くないけれど、もう並びたくはない」という評価が生まれます。
つまり、行列で新規客を呼び込めても、行列によってリピーターを失う可能性が出てきます。行列は作って終わりではなく、作った時点から設計対象になるのです。
行列の苦痛は“時間”より“退屈”で増える
行列の辛さは、待ち時間の長さそのものではありません。最も影響が大きいのは退屈さです。同じ30分でも、何かをしていれば短く感じ、何もしていなければ非常に長く感じます。
そのため、行列の負担を減らすうえで最も重要なのは、待ち時間の退屈さをなくすことです。行列中にメニューや商品を選べるようにする、注文や購入のコツを提示する、背景やストーリーを伝えるなど、頭や視線を動かす要素があるだけで、体感時間は大きく変わります。
ここで大切なのは、無理に楽しませようとしないことです。「時間が消費されている」と感じさせるだけで十分効果があります。
足の疲労をなくすと、不満が減る(地味ですが強力です)
行列が辛く感じられる最大の原因は、実は足の疲れです。身体的にしんどい状態では、人は体験の内容よりも「しんどかった記憶」を強く持ち帰ります。
少し体重を預けられる場所がある、地面の硬さが和らいでいる、日差しや雨を避けられる。こうした小さな配慮だけで、行列の印象は大きく改善します。派手な演出よりも、足元の対策の方が効果的な場面は多いのです。
行列記念クーポンを「長さトリガー」にするのは面白い
行列がここまで伸びたら、並んでいる全員にクーポンを配布する。このようなルールは非常に相性が良い仕組みです。
通常、行列は伸びるほど苦痛になります。しかしトリガーを設けることで、行列が伸びること自体が「良いことが起きる条件」に変わります。行列が人気の証明であると同時に、得が発生するきっかけになるからです。
結果として、並んでいる人の意識は「待たされている」から「イベントに参加している」へと変わります。この発想は飲食店に限らず、さまざまな業態で応用が可能です。
トリガー型クーポンの注意点(ここを外すと炎上します)
この仕組みで最も重要なのは、条件の明確さです。どこまで行列が伸びたら配布されるのかが一目で分からなければ、不信感が生まれます。
また、条件達成後の配布が遅れると、期待は一気に怒りへと変わります。クーポンの内容も、高額である必要はありませんが、しょぼいと感じさせない納得感は必要です。不公平感が出た瞬間、行列は強い不満の場に変わります。
整理券は“非効率”になることもある
整理券は行列の物理的な負担を減らせますが、すべての状況で最適とは限りません。行列そのものが社会的証明として機能している場合、行列を消すことで集客力まで弱めてしまうことがあります。
行列を消すべきか、行列を設計すべきかは、業態や目的によって判断する必要があります。整理券は万能な解決策ではありません。
結論:行列は作る。ただし、行列に責任を持つ
行列は、人気を可視化する強力なサインです。だからこそ、意図的に作る価値があります。
一方で、行列を放置すると顧客体験を削り、評価やリピートを落とします。成功する店がやっているのは、行列をなくすことではなく、行列を設計することです。
退屈を減らし、身体的負担を減らし、並んだ人が得をしたと感じる仕組みを用意する。行列は敵ではありません。扱い方を間違えた行列だけが敵になります。