- 投稿日:2026/04/19
こんにちは
ハヤヒデです。
今回は30年以上前のバイト経験の話ですので
ゆる〜い気持ちで読んでください。
タウンページから始まった、不純すぎる動機
放課後、友達と二人でダラダラしてたんですよ。
で、なんとなく「バイトでもするか」
って話になって。
当時の僕らが求めていたのは、ただ一つ。
「楽して稼げる仕事」
土建は日当が高いって評判だったんですけど
体を酷使するのは絶対イヤ。
できれば室内で、
できれば座ってできて、
でも金だけは欲しい。
そんな都合のいい仕事、
あるわけないじゃないですか。
でも、高校生ってバカだから本気で探すんです
タウンページをパラパラめくりながら。
そして、指が止まった。
「葬儀屋」
なぜか分からないけど、「これ、楽そうじゃね?」
って思ったんです。
今考えると失礼極まりないんですけど、
当時は本気でそう思ってた。
バイト募集なんてしていないのに。
僕ら、電話しちゃったんですよね。
高校生特有の、謎の行動力。
「あの、バイト募集してませんか?」
電話に出た女性(後で知る社長夫人)は、
明らかに戸惑ってました。
そりゃそうですよね、
いきなり高校生から電凸ですよ。
「...とりあえず、お話だけ聞こうかしら」
この言葉を聞いた瞬間
僕らもう家飛び出してましたからね。
行動だけは早い。
社長夫人との、ゆるすぎる採用面接
葬儀屋って、もっとこう、厳かな雰囲気の建物を想像してたんですよ。
行ってみたら、普通の家でした。
職場と自宅が一体型の、昭和な感じ。
出てきた社長夫人は40代くらいで、
思ったより気さくな人でした。
色々聞かれたんですけど、
正直内容は覚えてない。
ただ、僕ら二人とも
当時まあまあイケメンだったので(自分で言う)
夫人の第一印象は悪くなかったみたいです。
で、ここからが今では考えられない展開。
「うちね、初めて高校生のバイト雇うの。
相場が分からないんだけど...
最近の土建屋さんって、いくらくらいなの?」
え、そこから聞くんですか。
土建屋の相場なんて知るわけないですよね。
でもここで「分かりません」とは言えない。
僕、適当に答えましたよ。
「8,000円...くらいですかね??」
完全に勘です。
根拠ゼロ。
「じゃあ、それでいい?」
即決。
僕も即答しましたよ。
「お願いします!」って。
こうして日当8,000円が確定。
今考えると、もっと高く言えばよかった(笑)
学校終わってからだと勤務時間(8時5時)に
間に合わないってことで、
夏休みから働くことになりました。
まさか本当に採用されるとは思ってなかった。
人生、案外なんとかなるもんです。
裏側を知った瞬間、「イメージと違う」が止まらない
初出勤で、僕が最初に思ったこと。
「葬儀屋の仕事って、こんなに手作業なの?」
商品は完成品ってイメージがあったんですが、
実際は、驚くほど人の手で作られてた。
クジラとの戦い
まず任された仕事が、「クジラの巻き直し」。
クジラって何?って思うじゃないですか。
花輪の脚に巻いてある白黒の布のことです。
脚の縞々のことです。
これがボロついたら、カッターで切り裂いて
剥がして、新しいのを巻き直す。
地味。本当に地味。
でもこの地味な作業がないと、
あの花輪は成立しないんですよね。
参列者が見てる「きちんと整えられた葬儀」の
裏で、高校生がカッターで格闘してる。
そんなこと、誰も想像しないですよね。
「篭盛」の衝撃
次に驚いたのが、篭盛の製作。
葬儀とか法事の会場に置いてある
高級そうな缶詰の篭盛。
あれ、誰が作ってると思います?
バイトです。僕らです。
しかも作り方がすごくて。
「桃の缶詰在庫多いから今日は桃セット作るか」
そういうノリで決まるんですよ、中身。
僕らがバランス見ながら缶詰を配置して、
綺麗にラッピングして完成。
遺族の方々は絶対知らないでしょうね。
高校生が「今日は桃推しで」
とか言いながら作ってるなんて。
そして、15万円の棺桶
この仕事で一番衝撃を受けたのは、これです。
棺桶の製作。
その会社では「べた」って呼ばれる、エントリーグレードの棺桶。
素材は、ホームセンターで売ってるような合板。
それを使った組み立て式。

こういう箱に入っている材料を組み立て
僕の仕事は、その合板に釘を打ち込んで、
棺桶を組み立てること。
真夏の倉庫で、汗だくになりながら、
トンカントンカンと釘を打つ。
で、時々やらかすんですよ。
力加減間違えて、釘がはみ出ちゃう。
最初はマジで焦りました。
「やばい、これどうすんの...」って。
でも先輩社員が涼しい顔で言うんです。
「大丈夫、大丈夫。最後に白い布かぶせるから」
なるほど、そういうことか。
葬儀で棺桶に白い布がかかってるの、
見たことありますよね。
あの布の下には、
もしかしたら高校生が打った
はみ出た釘があるかもしれない。
そしてここからが本当の衝撃。
この棺桶、いくらで売られてたと思います?
15万円。
合板と釘と、高校生の未熟な技術で作られた棺桶
15万円で販売されてるんですよ。
別に業界を批判したいわけじゃないんです。
葬儀には人件費も会場費も色んなコストがかかるのは分かってる。
ただ、倉庫で合板叩きながら「これが15万円か...」って思った
高校生の素直な驚き。
それだけは今でも鮮明に覚えてます。
葬儀にはそれぞれの「重さ」がある
バイトを通じて、一つ気づいたことがありました。
葬儀って、全部同じじゃない。
お年寄りが亡くなった葬儀は、悲しみの中にも
和やかな雰囲気があるんですよ。
「長生きしたよね」「あの時はこうだったね」
遺族の方々が思い出話に花を咲かせて、
故人を偲びながらも
どこか穏やかな時間が流れる。
でも、若い人が亡くなった現場は、
全く違いました。
40代のお父さんが亡くなった葬儀に立ち会った
時のこと今でも忘れられないです。
会話がない。
誰も言葉を発しない。
聞こえてくるのは、すすり泣く音だけ。
重苦しい沈黙が、会場全体を支配してる。
高校生の僕には、その空気が耐え難かった。
何か作業しなきゃいけないのに、手が震える。
早くこの場から立ち去りたい。
そんな気持ちが頭の中をぐるぐる回ってました。
同じ「葬儀」でも、こんなにも違うものなのか。
バイトの僕でさえそう感じるんだから、
遺族の方々の悲しみは、どれほど深いものだったのでしょうね。
休みがない、という宿命
葬祭業には、休みがないんですよ。
正確に言うと、「亡くなる方に休日はない」から、
葬儀屋にも休みがない。
僕が働いた夏休みと冬休みの期間、
基本的にほぼ毎日出勤でした。
お盆も、年末も、正月も
1月2日でも祭壇作ってましたからね。
短期のバイトだったから耐えられたけど、
正社員の方々、本当に大変だと思います。
あと、この会社には印象的な方針がありました。
バイトには絶対に仏様を見せない。
入棺(にっかん)の時間になると、
僕らは必ず外で待たされてた。
「ちょっと外で待っててね」
当時はその配慮の意味を完全には理解してなかったかもしれない。
でも今思えば、高校生のバイトに無用な精神的負担をかけないという、会社なりの優しさだったんでしょうね。
命を扱う仕事。
そのことを、僕は間接的に、
でも確実に感じてました。
社長夫人との、忘れられない思い出
厳しい話ばかりじゃないです。
温かいエピソードもありました。
夏祭りの日
社長夫人が僕に1万円を渡してくれたんですよ。
「これで遊んできなさい」
日当より高いじゃん。
高校生には、とんでもない大金でした。
今の時代にはなかなか無いですよね。
もう一つ、絶対忘れられないハプニング
ある日、夫人に用事があって
自宅の方に声をかけに行ったんです。
職場と自宅が一体型だから、
引き戸開けると茶の間なんですよ。
「夫人、ちょっといいですか〜」
返事がない。
もう一度呼んでも反応なし。
仕方なく引き戸を開けて中を覗いたら——
夫人、着替え中でした。
下着姿の夫人が、そこにいた。
今なら確実にアウトな状況ですよね。
でも、一瞬驚いた後、
夫人は笑って「もう、ノックしなさいよ」
って言っただけでした。
高校生だったから許されたのか、
時代がおおらかだったのか。
コンプライアンスなんて言葉が一般的じゃなかった時代の、夏の思ひ出です。
あの夏、合板を叩きながら学んだこと
「楽して稼ごう」
そんな不純な動機で始めたバイトでした。
でも、楽な仕事なんてどこにもなかった。
クジラを巻き直す手は痛くなったし、
真夏の倉庫での棺桶作りは暑くて辛かった。
休みもほとんどなくて、
友達と遊ぶ時間も減った。
でもね、この経験は間違いなく貴重でした。
整然と整えられた葬儀会場の裏側で、
誰かが地道に作業をしてる。
参列者が目にする完璧な会場は、
休みなく働く人々の努力の結果だ。
世の中のあらゆる仕事には、
見えないところに必ず裏側がある。
そして、その裏側では必ず誰かが汗を流してる。
当時の僕は、それを肌で感じました。
タウンページをめくったあの日から、
もう30年以上経ちました。
でも、倉庫でトンカンと釘を打つ音は、
今でも耳に残ってます。
あの音が、僕に教えてくれたことは多い。
働くことの厳しさ、
世の中の複雑さ、
そして、どんな仕事にも
必ず誰かの努力があるということ。
楽を求めて始めた仕事が、
結果的に一番大切なことを教えてくれた。
人生、本当に分からないもんです。
この記事を読んで、もしあなたも「見えない裏側」を意識するようになったら嬉しいです。
どんな場所にも、どんな商品にも、必ず誰かの
ストーリーがあります。