- 投稿日:2024/09/17
- 更新日:2025/10/09
こんにちは。
名古屋市守山区で痛みと身体機能の改善に特化した整体院を経営している理学療法士のきむです。
私は15年間、医療・介護業界に理学療法士として勤務し、3年前に個人事業主(整体院)に転職しました。
私のように理学療法士からの転職で悩む方は少なくないかと思います。
この記事では、理学療法士から整体師へとキャリアチェンジをした私の経験をもとに、同じように転職を考えている方に役立つ情報をシェアしたいと思います。
キャリア選択の参考になれば幸いです。
はじめに
私が所属している日本理学療法士協会(JPTA)は、これまで様々な目標を達成してきましたが、理学療法士の開業権の取得は未だに実現しておりません。
現在、日本において、理学療法士には開業権がありません。つまり、理学療法士が独自に(仮名称)理学療法クリニックを開設し、自らの判断で治療を提供することは法律上許可されていないのです。この現実は、理学療法士としてのキャリアに大きな影響を与える一方で、整体という選択肢に目を向けるきっかけにもなりました。
ここでは、日本と海外の理学療法士の開業権の違いについても触れてみたいと思います。
日本の理学療法士と開業権の現状
理学療法士は専門知識を持ちながら、なぜ日本では開業できないのか疑問に思う方も多いでしょう。実は、日本の医療制度では、理学療法士が独自にクリニックを開設し、自らの判断で治療を提供することは法律で制限されています。
日本の理学療法士に開業権がない理由
医療法と医師法の規制
日本の医療法や医師法では、医療行為のほとんどが医師の責任のもとに行われることが定められています。理学療法士が治療を行うには、医師の診断と指示が必要であり、医師の監督下でしか業務を遂行できません。この法律は、患者の安全を最優先にするため、医師が病状の総合的な管理を行うことを目的としています。
医療保険制度の制約
日本の公的医療保険制度において、理学療法士の治療行為は、医師の指示がある場合にのみ保険適用が認められています。この制度により、理学療法士が独自に開業して診療行為を行うことは認められておらず、医療機関の一部として働くことが前提とされています。
歴史的背景
日本における理学療法士の制度は、1950年代に導入され、米国の影響を受けましたが、その役割は当初から医師の指示のもとで行われるものでした。この役割分担が今でも続いており、理学療法士が単独で診療を行うことを制限する法律的な枠組みが維持されています。
日本の理学療法士の教育カリキュラムは、あくまでも医師の指示のもとでリハビリテーションを行う専門家としての訓練を重視しており、最短3年間の専門学校教育で資格を取得できます。短期間の教育では、診断能力や経営・法規に関する知識が不足しているとされ、独立した医療提供者としての準備が不十分と見なされます。
一方、他国では、理学療法士になるために、より長い教育期間が求められることが一般的です。たとえば、アメリカやカナダでは理学療法士は大学院レベルの教育(修士や博士号)が必要で、より深い専門知識と診断能力を身につける機会があります。これにより、独立して診療を行う能力が養われ、開業権が認められています。
理学療法士に開業権が認められるには、より長期的で総合的な教育や継続教育が必要となる可能性があります。
海外では理学療法士に開業権がある
海外では理学療法士に開業権が認められている国が多く存在します。これにより、理学療法士は医師の指示を受けずに直接患者を診療し、治療を行うことができます。これを「ダイレクトアクセス」と呼び、患者が医師を介さずに理学療法士に直接相談・治療を受けられるもので、特に北米や欧州で広く普及しています。
アメリカ
アメリカでは、州ごとに法律が異なりますが、ほとんどの州で理学療法士がダイレクトアクセスの権利を持っており、患者は医師の紹介なしに理学療法を受けることが可能です。アメリカでは理学療法士が独立してクリニックを開業し、自らの専門的な判断に基づいて診療を行うことが認められています。
オーストラリアとカナダ
オーストラリアやカナダでも同様に、理学療法士は独立して開業でき、ダイレクトアクセスのシステムが確立されています。これにより、患者は理学療法士の専門的なケアを迅速に受けられるため、医療システムの効率化や患者の満足度向上に繋がっています。
(私自身、研修会目的でオーストラリアに行き、現地の理学療法クリニックのダイレクトアクセスを肌で感じる経験が出来ました)
イギリス
イギリスでは、理学療法士が医療行為を行うための資格をさらに発展させ、理学療法士が薬の処方や特定の医療行為を行える権利を取得することが可能です。これにより、理学療法士は独自のクリニックを開業し、患者により幅広いサービスを提供できるようになっています。
このように、海外では理学療法士が医療現場でより積極的に役割を果たし、患者に対して独自に治療を提供できる環境が整っているのです。
理学療法士が整体を選ぶ理由
理学療法士としての知識やスキルを活かしながら、自分自身で(仮名称)理学療法クリニックを開設したいという思いを持つ人にとって、整体という選択肢は自然な流れかもしれません。
以下の理由から、整体として独立する道を選ぶ理学療法士も増えています。
自由診療としての整体の魅力
整体は、医療保険の適用外であるため、自由診療としての位置づけになります。これにより、施術内容や料金設定、運営方法に自由度があり、理学療法士としての経験や技術を独自の形で活かすことができます。顧客のニーズに合わせた個別対応が可能であり、独自の治療メニューを提供することもできます。
開業の自由度
整体としては、法的制約が比較的少なく、個人事業主として整体院を開業することが可能です。理学療法士が病院やクリニックの一部として働かなければならないという制約から解放され、自分自身のビジネスとして整体院を経営することができます。
予防医療や自費リハビリ分野への対応
理学療法士としての知識や技術を活かし、予防医療や自費リハビリのニーズに対応することができます。高齢化社会の中で、特定の痛みに対する施術、腰痛や肩こり、姿勢改善を目的とした施術を求める人々は多く、さらに、保険のリハビリに対する不満から自費リハビリに対するニーズが生まれ、整体という枠組みで理学療法士のスキルを応用することが可能です。
理学療法士としてのスキルと整体の融合
理学療法士としての解剖学的知識や運動機能の専門性は、整体師としても大きな強みとなります。理学療法士として得た経験を整体に応用することで、他の整体師との差別化も図れます。
実践的な例
たとえば、スポーツ選手向けの整体を行う場合、理学療法士としての知識が非常に役立ちます。選手の身体機能や筋力、柔軟性の評価を的確に行い、怪我の予防やパフォーマンス向上に繋がる施術を提供できます。これは、整体師として独自のメニューを作成し、差別化を図るポイントにもなります。
整体と理学療法の違いを理解する重要性
整体と理学療法は、アプローチや法的な位置づけが異なるため、それぞれの違いを理解しておくことが重要です。整体は主に自由診療の範囲内で行われ、施術者の技術や経験に基づいて施術が行われます。
一方、理学療法は医師の指示のもと、科学的根拠に基づいてリハビリテーションが行われる点で異なります。整体師として活動する際には、この違いを踏まえて施術を提供することが重要です。
理学療法士が整体師として開業する際の課題
1. 法的・倫理的な問題
理学療法士が整体として開業する場合、医療行為と整体の法的境界線が曖昧になる可能性があります。理学療法士は本来、医師の指示のもとで行うべき診療行為が法律で定められていますが、整体という自由診療では、その監督がなくなることから、法的な問題が生じる可能性があります。
整体院の理学療法士の施術は医療行為ではなく、自由診療の枠組みのため、医療を連想させるような表現(具体的な疾患名を出しての広告表記など)は誤解を招く可能性があるので、注意しなければいけません。
では、医師の指示があれば、整体院で理学療法を提供していいのか?
整体院は医療機関ではないため、理学療法士が医師の指示があっても整体院で理学療法を提供することは、医療法違反になる可能性があります。
2.不正確な判断のリスク
医師の診断なしに理学療法を提供することで、適切な医療行為を受けられないリスクがあります。特に、重篤な疾患が隠れている場合には問題となる可能性があります。
3. 保険の非適用による患者負担
整体は自由診療のため、保険適用外となります。理学療法士が整体業を行うことで、患者は高額な施術費用を全額自己負担する必要があり、経済的負担が増す可能性があります。
4. 質の担保
理学療法士が整体として開業する際、自費リハビリやある特定の施術が提供される一方で、医療機関との連携が失われることで、質の担保がされにくくなる懸念もあります。特に、医師との連携がない状況での診療は、誤った治療方針や悪化のリスクが高まる可能性があります。
まとめ:理学療法士の新たな道を見つけよう
日本では理学療法士に開業権が認められておらず、医師の指示のもとでのみ治療が行える仕組みになっています。一方で、海外の多くの国では、理学療法士に開業権が認められており、患者は医師を介さずに理学療法士に直接相談できる「ダイレクトアクセス」が普及しています。
日本の理学療法士にとって、整体という選択肢は自由診療として独立できる一つの道ですが、将来的には日本でも理学療法士の役割が拡大し、海外のように開業権が認められる日が来ることを私は大いに期待しています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。