- 投稿日:2024/09/19
- 更新日:2025/10/11
こんにちは、ざわと申します。
私は2023年11月に第一子が産まれ、現在子育て中です。
出産後1ヶ月強の間、育児休業(育休)を取得しました。
今回は育休中の手取り額を最大化させるにはどのように育休を取得すれば良いか、考え方について解説したいと思います。
ちなみにこの記事の投稿日9/19は「育休を考える日」です。
(並べ替えると19/9→いくきゅうとなるから)
この記事があなたにとって「育休を考える」きっかけになりますと幸いです。
注意点
筆者が男性のため、男性視点での育休取得が内容のベースとなっています。女性の場合、産前産後休暇等が別で存在するため、その点をご了承いただけますと幸いです。
本記事は2024年9月現在の情報となります。2025年4月以降、育休給付の実質手取り10割化(最大28日間)が検討されています。最新の情報もご参照ください。
また各種制度や個別の相談については、お勤め先の人事担当者や、社労士等の専門家、下記相談窓口への問い合わせもご検討ください。
その他・相談窓口|育児休業特設サイト|厚生労働省
育児休業給付金について
育児休業給付金は、育児休業を取得した際に雇用保険から支払われる給付金で、休業中で給与所得の無くなるサラリーマンの貴重な収入源となります。厳密には「出生時育児休業給付金」と「育児休業給付金」の2種類がありますが、ここでは「育休給付金」として同じものとして扱います。
制度の詳細については下記の厚生労働省サイトもご参照ください。
育児休業給付について|厚生労働省
支給額
支給額は以下の式で表されます。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
(育児休業開始から181日目以降は50%)
引用元:https://yasumo.me/ikukyu-kyufukin/
ここで67%となっている理由は、ざっくり手取り額(額面の80%)のさらに80%だからですね。
より詳細な制度内容については下記リンクをご参照ください。
育児休業給付の内容と支給申請手続
育休取得時に考慮すべき、4つの観点
育休取得時の収入には様々な要素が関わり、トータルで一番お得になる取得方法は会社や個々人によって大きく異なります。ここでは大きく4つに分けて注意すべきポイントを解説します。
結論
以下4つの観点のうち、①社会保険料免除はほとんどの方にとって優先して適用すべきお得事項です。
②〜④については、個々人の状況によって関係したりしなかったりするため、実際に試算してどの程度考慮すべきか考える必要があります。
① 社会保険料免除【超重要!】
育休取得時、以下の条件を満たすと社会保険料が免除となります。
【給与】
✅育児休業等を開始した日の属する月から終了する日の翌日が属する月の前月まで
✅育児休業等を開始した日の属する月内に、14日以上の育児休業等を取得した場合
一つ目は分かりづらく書かれていますが、要するに「月末日が育休期間に含まれていると、その月の社会保険料が免除になるよ〜」ということです。
引用元:https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0729.files/ikukyu-chirashi.pdf
【賞与】
✅賞与を支払った月の末日を含んだ連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合
引用元:https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0729.files/ikukyu-chirashi.pdf
以上から、賞与がある会社の場合、連続した1ヶ月以上の期間で育休を取得し、かつ賞与支給月末日を期間に含めれば、その月の給与と賞与にかかる社会保険料が丸々免除になるため非常にお得です。
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(例)12月に賞与が支払われる場合、11月30〜12/31の期間で育休を取得すれば、11月・12月の給与および12月賞与の社会保険料が免除されます。(後述しますがこの取り方は筆者が実際に育休を取得した期間です)
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社会保険料免除となると、その分年金が減ってしまうでは?と思った方、ご安心ください。免除となった期間も払ったものとして扱われるため、年金は減りません。余談ですが、社会保険料免除は社員のみならず、会社(事業主分)も免除となります。会社側にとっても嬉しいですね。
② 年次有給休暇
年次有給休暇(有給)に余裕がある場合、育休より優先して使用すると手取りが多くなる可能性があります。育休給付金は手取りの約8割程度しか貰えないことや、また後述しますが高年収の場合上限があるためです。さらに有給は通常出勤日数としてカウントされるため、後述の育休取得時に起きてしまう出勤率低下が起こらず、賞与も減りません。
例外として、育休給付金算定に用いる賃金日額には残業手当、通勤手当、住宅手当等を含むため、これらを含んだ直近6ヶ月の総支給額の平均が基本給を大きく上回る場合、育休取得時の方が手取り額が多くなることがあります。
また注意点として、有給をこのタイミングで使い過ぎてしまうと、出産後に子供の急な病気など、有給を取得したいタイミングで困ってしまうかもしれません。これらの事情を加味し、何日使うかを検討しましょう。
③ 育休取得時の出勤率低下による賞与の減少
育休給付金は、賞与(ボーナス)については一切考慮されていません。そのため、育休取得日数分の出勤率が低下した場合、その出勤率が反映された賞与は減額となってしまうことがあります。
④ 育休給付金の上限(高年収の場合のみ該当)
給付率67%の時の支給上限額は1ヶ月あたり315,369円となります。これは元の月給に換算すると約47万円です。賞与が無い場合は年収約560万円、賞与がある場合、年収約700〜800万円以上の方でも該当する可能性があります。この場合、なるべく上述の各種休暇を取得した方が手取りがより多くなるかもしれません。
実際に計算してみよう
以上の前提を踏まえた上で、育休中に実際にいくらの手取り収入が貰えるか、以下の材料を用意して試算してみましょう。
試算に必要な材料
✅休業開始時の賃金日額…育休開始前6ヶ月間の賃金を180日で割った額です。賃金には、残業手当、通勤手当、住宅手当を含みます。手取り額ではなく額面の金額となります。
✅基本給
✅賞与支給額
✅育休取得期間
✅給与・賞与にかかる社会保険料
筆者の場合、どうだったか
ここからは筆者が昨年育休を取得した実際の方法での育休期間中の手取り収入と、その他の方法を取ったときの手取り収入を比較してみました。なおここでの比較は、同じ期間で休職をする前提で、育休や会社の制度を含む各種制度の使い方を変えたときに、トータルの手取りがどの程度異なったかで比較をしています。
前提の確認
・筆者は2023/11/23〜2024/1/8の間、休職しました。
・筆者の給与は育休給付金の上限を超えていません。
・11/23時点で、有給休暇を34日保有しており、育休を一切取らずに休むことも可能でした。
・以下の計算では、今回の育休取得に関係する部分だけ計算しています。また、育休給付金や社会保険料については実際の金額、給与や賞与については0.8掛けした額を手取り相当として計算しています。
・会社の制度として、育休開始最初の5営業日分については、有給扱いとなっており、かつハローワークへの給付金受給届け出上の期間にも含まれていたため、この期間については給与と育休給付金が両方支給されました。
結論
以下の順で手取り額が多くなりました。
① 育休取得期間を11/30〜12/31にした場合…660235円
> ② 全期間で育休を取得した場合…640800円
> ③ 育休取得期間を12/1〜12/27にした場合…494311円
> 番外編 育休を取得せず全て有給を使用した場合…396064円
以下では詳細な計算方法について説明します。
① 育休取得期間を11/30〜12/31にした場合(実際の取得方法)
実際に行った方法は、月末〜月末で育休を取得し、残りは有給で埋めるというものでした。
✅給与・給付額
・11/23〜11/29: 祝休日・有給休暇…+60610円
・11/30〜12/6: 育児休業(給与支給の休暇扱い)…+58935円
・11/30〜12/31: 育児休業(無給、育休給付金支給)…+294987円
・1/1〜1/8: 祝休日・有給休暇…+67035円
✅支払免除額
・2024年11月給与に対する社会保険料…+64550円
・2024年12月給与に対する社会保険料…+64550円
・2024年12月賞与に対する社会保険料…+106248円
✅減額分
・2024年6月賞与の出勤率減少…-56680円
⇩
✅総手取り収入
…660235円
いかがでしょうか。賞与の減額が多少あるものの、社会保険料免除の恩恵が非常に大きいことが分かります。
② 全期間で育休を取得した場合
有給を一切使わず、全期間で育休を取得した場合を考えます。
✅給与・給付額
・11/24〜11/30: 育児休業(給与支給の休暇扱い)…+60610円
・11/24〜1/8: 育児休業(無給、育休給付金支給)…+433262円
✅支払免除額
・2024年11月給与に対する社会保険料…+64550円
・2024年12月給与に対する社会保険料…+64550円
・2024年12月賞与に対する社会保険料…+106248円
✅減額分
・2024年6月賞与の出勤率減少…-88420円
⇩
✅総手取り収入
…640800円
有給を使った場合より、少し手取り収入が減少しましたね。
③ 育休取得期間を12/1〜12/27にした場合
例えば月末を一切含まず、年末年始休暇に繋げるように育休を取得した場合、こうなります。この場合、社会保険料免除は12月分(14日以上育休を取得しているため)しか適用されません。
✅給与・給付額
・11/23〜11/30: 祝休日・有給休暇…+69269円
・12/1〜12/7: 育児休業(給与支給の休暇扱い)…+58655円
・12/1〜12/27: 育児休業(無給、育休給付金支給)…+248895円
・1/1〜1/8: 祝休日・有給休暇…+67035円
✅支払免除額
・2024年11月給与に対する社会保険料…+64550円
✅減額分
・2024年6月賞与の出勤率減少…-47611円
⇩
✅総手取り収入
…494311円
社会保険料免除が減った分、大きく減少しました。育休の取り方次第で、約16万円以上手取り収入に差が生じたことが分かるかと思います。
番外編 育休を取得せず全て有給を使用した場合(!)
有給が十分余っていたため、このような選択肢を取ることも可能でした。この場合、育休の取得をする必要が無くなり、全期間通常通り給与が支払われます。また、社会保険料の免除や、賞与の減額も無くなります。
✅給与・給付額
・11/23〜1/8: 給与…+396064円
✅支払免除額
・無し
✅減額分
・無し
⇩
✅総手取り収入
…396064円
なんと、総手取り収入はさらに大きく減少してしまいました…
育休を有効活用した方がはるかに手取り収入が多くなることがわかります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
筆者の場合、給与(の80%)が育休給付金の上限に達しておらず、賞与や各種手当もそれなりにあったこともあり、育休を取得することで、普通に勤務(残業等がない場合)するよりも手取りが多くなっていることに今更ながら気が付きました。育休給付金や社会保険料免除は偉大ですね。
個々人の状況にもよりますが、育休の取得による金銭的なデメリットは多くの場合小さいと思います。育児に参加したい人が、お金を気にして育休の取得を渋っているとしたら、それは非常に勿体無いですね。育休給付金制度、活用していきましょう。
これから育休を取得される方の参考になれば幸いです。
レビューやいいねをいただけると大変助かります。また、本記事で見逃している観点などあれば合わせてコメントいただけますと幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。