- 投稿日:2024/09/21
- 更新日:2025/10/11
こんにちは、ざわと申します。
私は2023年11月に第一子が産まれ、現在子育て中です。
出産後1ヶ月強の間、育児休業(育休)を取得しました。
育休取得時の育休給付金等を含む手取りを最大化させるための方法については、先日以下のような記事を投稿しました。興味ある方は一読いただけますと幸いです。
【取り方次第で16万円UPも!】育児休業取得時の手取り額を最大化させるための方法・考え方
今回は育休明け後の社会保険料を安くすることができる制度について解説します。さらに、それによって将来の年金が減額しないようにするための手続きについても合わせて解説します。育休明けで時短勤務となった方にとっては、より恩恵が大きい制度となります。
これらの制度は育休給付金等に比べあまり知られておらず、私も勤め先人事からの連絡があって初めて知りました。知っていると知らないとで数万円以上手取り収入に差が出る可能性があります。ぜひご一読いただけますと幸いです。
育休明けの社会保険料を安くする方法
そもそも社会保険料ってどうやって決まるの?
社会保険料は、健康保険料や厚生年金保険料といった各種公的保険に対して支払う保険料の総称です。この社会保険料は、各々の給与に基づき算出される標準報酬月額によって決められています。例えば、健康保険の場合は1〜50等級の50段階存在します。
標準報酬月額の算出方法ですが、①定時決定と②随時改定の2種類が存在します。
①定時決定は、毎年4〜6月の給与に基づき標準報酬月額を計算し、9月から改定される方法です。多くの方が毎年4月に定期昇給等で給与が増加するので、それを反映できるよう4〜6月の給与が反映されるんですね。「4〜6月は残業しすぎると損」と言われるのはこれが原因です。(厳密には「4〜6月に支払われる給与」が反映されるので、多くの場合「3〜5月は残業しすぎると損」が正確です)
②随時改定は、文字通り定時決定以外のタイミングでも条件を満たすと改定される方法です。具体的には、「ある3ヶ月間の平均給与が、元の標準報酬月額から2等級分以上、上がった or 下がった」場合などです。昇進などにより年度の途中で基本給が昇給したり、残業が定常的に20時間増加した場合など、大きく給与の変動があった場合に適用されます。収入が大きく増えたなら、それに見合った社会保険料をちゃんと払いましょうね、と言うことです。
各決定方法のイメージを以下に示します。
出典:社会保険料の決定方法には定時決定と随時改定がある?両者の違いについて解説 | 東証マネ部!
詳細な制度については以下をご参照ください。日本年金機構のHPですが、健康保険についても考え方は同じです。
育休等終了時改定とは
育休明けに職場復帰した際、時短勤務等で育休前に比べて収入が減少することがあると思います。定時改定のタイミング以外かつ随時改定に該当しない場合、通常は社会保険料は据え置きになるのですが、育休等終了時改定を行うことで、育休明け3ヶ月間の標準報酬月額が、育休前の標準報酬月額から1等級の変動が生じた場合に改定することができます。
出典:http://www.oj-kenpo.com/consultation/maternity-leave.php
申請は事業主(お勤めの会社等)を通じて行うことができます。制度の詳細については下記URLもご参照ください。
育児休業等終了時報酬月額変更届の提出|日本年金機構
ちなみに、本制度で支払う社会保険料が安くなった場合に、将来貰える年金が少なくなってしまうのでは?と感じた方、ご安心ください。次項で説明する制度を利用することで、将来貰える年金を減らすことなく社会保険料を安くすることができます。
将来の年金が減らないようにする手続き
「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という制度を利用します。
簡単に言うと、「子供が3歳になるまでに時短勤務等で標準報酬月額が下がっても、子供が産まれる前の標準報酬月額を用いて将来の年金を計算するよ〜」という制度です。この制度は前項の育休等終了時改定と併用できるため、安心して時短勤務を利用することができますね。
本制度も育休等終了時改定と同様、事業主を通じて申請を行うことができます。
制度の詳細については下記URLもご参照ください。
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置|日本年金機構
筆者の場合の実例
筆者は育休前、残業時間が大体40〜45時間程度でした。2024年1月頭に育休から復帰後、残業時間は大体20〜30時間程度まで減少した結果、標準報酬月額が1等級下がったため、育休等終了時改定の対象になりました。所定労働時間が定時より短くなる本来の意味での「時短勤務」ではありませんでしたが、残業時間の減少も実質的な時短勤務とみなせますね。
本制度を適用した場合とそうでない場合の標準報酬月額の等級と、実際の支払額を比較してみました。
上の表は筆者の標準報酬月額の等級の推移を示しています(表で示している等級は厚生年金保険料のものです。健康保険料は等級の数字が少し異なりますが、変化の仕方は同じです)。上が育休終了時改定がもし未適用だった場合の等級、下が適用された実際の等級となります。黄色で示した部分が適用により社会保険料が安くなった期間です。9月の等級変更は、4月の定期昇給によるものです。
未適用・適用時の社会保険料の差を計算してみましょう。表の4〜8月の期間のみ計算して比較してみます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
未適用時の社会保険料(1ヶ月分)・・・健康保険料:18800円、厚年保険料:45750円、合計:64550円
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
適用時の社会保険料(1ヶ月分)・・・健康保険料:17672円、厚年保険料:43005円、合計:60677円
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⇨未適用・適用時の社会保険料の差(5ヶ月分)・・・19365円
適用により約2万円の社会保険料が安くなったことが分かりました。適用される時期(定時改定との兼ね合い)によっては、最長で1年程度適用されることもあるので、この額の倍以上の差が生じることもあるでしょう。知っていると知らないとで大きな差が生まれますね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
育休給付金だけでなく、育休終了後も子育て世代に優しい制度があることが分かりました。
筆者の場合、勤務先の人事担当者から本制度を利用できると連絡があり、その時初めてこの制度があることを知りました。お勤め先によってはわざわざ本制度が適用されるかどうかを従業員に連絡するとは限らない(そもそも人事担当者が把握していない可能性もある)ので、該当しそうな場合は一度お問い合わせいただくことをお勧めします。
この記事が参考になりましたら幸いです。いいねやレビューをいただけると大変励みになります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。