- 投稿日:2024/11/29
- 更新日:2025/09/29

はじめに
部屋の片づけをしていたら、昔の研究ノートを発掘しました。読み返してみると、今の自分よりちゃんとしてるような気がします。
あれ?学生時代より頭悪くなってないかな?
そういえばコロナによりリモートが広がった時にパソコンでの記録は手書きより学習効果が下がるという話を聞いたことがあります。
そこで、自分の今までのノートの取り方や勉強法をざっくり振り返ると・・・
学生・院生時代⇒手書きがメイン。成果物のみパソコン
社会人時代⇒パソコンがメイン。素案や構想は手書き
無職時代⇒手書きはほぼ0。というか勉強してない。
老化による能力の低下なのか?はたまた手書きをしないことによる能力の低下なのか?単純に勉強していないことによる能力の低下なのか?
このIT時代に逆行して手書きをする意味は果たしてあるのだろうか?
私はその謎を解明すべくアマゾンの奥地へ向かった(※1)。
※1 典型的なこたつ記事なので、向かった先はアマゾン奥地ではなく、
インターネットの大海原である。
事例紹介
The Pen Is Mightier Than the Keyboard:Advantages of Longhand Over Laptop Note Taking
ノートパソコンと手書きで学習度に差があるか比較した研究。パソコンを使用することは、マルチタスクになるから注意散漫であるという先行研究を受けて、パソコンはメモ帳以外の機能を排して、手書きとパソコン打ちによる違いを純粋に比較。実験設定が難しくて、一部読み取れない部分があったが(※2)、少なくとも長期的かつ概念的な理解については手書きノートの方が有利であり、学問の本質的な理解であると主張。
特に、逐語的に講義そのものを丸写し、模写するようなスタイルは学習に有害であると結論付けている。
一方で短期的かつ暗記するようなスタイルであれば、手書きよりもノートパソコンのほうが優れているという結論(ただし、手書きよりパソコン入力の方が速いという前提)。
※2 機器の違いよりも「ノートの取り方」が影響してるような気がする。
機器によるノートの取り方に影響は有れど、個人の資質か?
いまだ,ペンはキーボードよりも強し
https://www.jcss.gr.jp/meetings/jcss2021/proceedings/pdf/JCSS2021_P1-48.pdf
先行研究は対面授業に対するものだったので、オンライン授業における比較研究。
本研究では手書きとパソコンによる記録に有意差はみられず、普段使用している機器の慣れによる影響が高そうとの結論。
一方でオンラインでも対面と同程度の学習効果はありそうとの結果。
個人的にはテストの内容、個人の資質の影響、サンプルの偏り、サンプルサイズの小ささ、など実験設定には一部疑義が生じた。
情報記録手法と記憶定着・理解度の関係についての実験報告
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsik/20/1/20_20_32/_pdf
学生ではなく若手社会人に対しての効果検証をした研究。手書きチーム、PCチーム、記録なしチームに分かれて検証。
PCチームの方が短い時間で多くの記録が出来るため、高得点となった。一方で、手書きチームの方が少ない字数で効率的に理解できる傾向にあることも示された。
いずれにせよ、記録すること自体が記録しないことに対して有効であることが伺える。
実験設定にサンプルサイズの小ささや個人の資質に大きく影響されている可能性があり、本文でもその影響に触れている。
紙の手帳の脳科学的効用について
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/files/20210319sakaikunisobun01.pdf
テストだけではなく、脳の活動上昇量をサンプルした研究。簡単なテスト結果では成績自体に差異は見られないものの、記憶定着までの時間、創造性については脳の活動から手書きの方が良いとのこと。
手書きでは空間情報も同時に記録できるため、有機的なつながりにより学習効果が高まるとの結論。
特に想起について有利であるという点については個人的に納得できる。
個人的感想
複数の研究からまとめると
・記録を取るという行為自体が記憶定着に有効
・短期的で数をこなすには電子機器が有利
・長期的で体系的に理解するなら手書きが有利
と言えそうです。
これは私個人の体感と一致している感じがします。
ホモサピエンスはアウトソーシングが得意な生物なので省力化のためにはデジタルデバイスとアナログデバイスは使い分けして行きたいですね。
学習の過程や、きっちり体系的に学びたい場合はやはりアナログに手書きで勉強するのが良さそうというのが、今回調べて感じたことです。
一方で電子機器は短時間で単純作業をこなすのに向いているというのが、今回参考にした資料から得られました。加えて個人的な今までの経験からわかるのは、修正、校閲、入替、挿入などは圧倒的に電子機器の得意分野であるということです。バラバラなものを組み立てていく際には電子機器の方が良いでしょう。
実際に自分で論文や計画書を書いていた時はPC使ってますし、子どもに自由研究の書き方を教えるときはPC使えと言っています。
今回のことから以下のような使い分けをしていきたいと思いました。
✅勉強・構想などの"過程が重要"なものは手書きを採用する
✅作成・まとめなどの"結果が重要"なものは電子機器を採用する
まとめ
✅入力(インプット)は手書き
✅出力(アウトプット)は電子機器
✅媒体に関わらず、記録するのは大事