- 投稿日:2024/12/08
- 更新日:2025/10/09
はじめに
運転する親をもつ家族にとって、「高齢者の免許返納」は気になるところです。
私の両親は、自分たちで決断して2019年の春に車を手放し、1ヶ月後にそろって免許を返納しました。このとき父は74歳、母は70歳でした。
返納から6年半、両親を見ていろいろ学んだことや感じたことをまとめました。家族の免許返納が気になる方の参考になれば嬉しいです。
両親の体験~免許返納から現在まで
返納までの経緯:父の決断と母の戸惑い
最初に返納を決めたのは父でした。
父は数年前から手首を痛めており、運転をすでにやめていました。タクシー運転手だった父は、痛みと夜間運転の不安に耐えながら働いていましたが、年金だけで生活できるようになり「もう免許を返そう」と決断しました。
そして70歳になった母に、一緒に返納しようと提案しました。
提案された母は、その時点でほぼ毎日運転をしていました。昔から運転が大好きで外出も買い物も自由自在、私から見ても上手な運転でした。母は、最初は父の提案にかなり戸惑いましたが、増えつつあった「高齢者事故のニュース」を見聞きするうち、父の説得を受け入れたようでした。
先日、母はこう話していました。「今でも運転はしたいし、運転する夢も見るよ😊」。決断に後悔はないけれど、まだ寂しい気持ちはあるようです。
返納から半年間:後悔と戸惑い
こうして2人は一緒に免許を返納しました。しばらくはさほど不便もなく、落ち着いて過ごしていました。
ところが、夏になり歩くのが大変になってくると、両親ともそろって後悔におそわれました。
「行きたいけど、もう車ないんだよね…」
父も「免許を持っていれば運転できるのと、もうできないのは全然違うな」としみじみ話していました。一度はもういらないと思っても後悔するんだなあと、その言葉を覚えています。
返納後の生活:時間と工夫で整った日々へ
半年を過ぎたころには、それぞれ徒歩や公共交通を使いこなすようになりました。クリニックを隣の主要駅前に変えたり、小さな買い物は徒歩15分圏内で済ませる習慣が身につきました。今でも片道30分くらいならためらわずに歩きます(父は80歳、母はもうすぐ77歳です)。
場所によっては私が車を出します。車に乗ると、2人とも気分が上がって楽しそうです。食材のまとめ買いも私が担当しています。
今ではニュースの高齢者事故を見て「やめてよかったね」と自然に話すようになりました。
免許返納のメリットとデメリット
ここからは、免許返納から6年半の間、私が両親を見ていて「これがよかったな」「ここは大変だったな」と感じたことをあげます。大変なこともありましたが、時間をかければ多くは乗り越えられると感じています。
メリット
・事故の加害者にならずにすむ安心感が得られる。
・車の維持費がいらなくなる(両親の場合は月に約4万円の負担減)。
・散歩や路地歩きを楽しめる。
デメリット
・買い物や通院の選択肢が減り、不便になる。
・家族の負担が増え、スケジュールの調整が必要になる。
・慣れるまで寂しさを感じる(運転好きの人は特に)。
これらの不便さや喪失感は、工夫と時間で少しずつやわらいでいきました。
免許返納を安心して迎えるための、5つの準備
両親の経緯を見ていて、自分が「免許返納に向けて準備したい」と思ったこと、実際に取り組んでいることをあげます。
1.歩く習慣をつけておく
父は退職後、散歩を始めて歩く距離を少しずつのばしていきました。歩ける自信がついたことで、返納につながったと思います。
「車で外出」の何割かは習慣がなせる行動です。今のうちから「歩いて外出」の習慣を増やしましょう。歩けば、老後に大切な体力もつきます。
歩く習慣は私も実践していて、おすすめです。
2.生活圏を車なしで動いてみる
バス・電車の本数や、自宅から病院や買い物先までの距離など、住んでいても案外知らないことがあります。そして車を使わずに目的地に行ってみると案外おもしろいです。
両親が車を手放そうかと話し始めたあたりから、私も休日は車を使わずに出かける機会を増やしました。
3.買い物・通院の代わりを探しておく
我が家では、まとめ買い担当を私が引き継ぎましたが、家族が遠方に住んでいる場合は、ネットスーパーや生協の個別配送を利用できると買い物の心配が減ります。私もすでにこれらを体験しました。
かかりつけ医も見直し、一部はバスや駅から徒歩15分以内で行ける、通いやすいところに変更しました。父は「車をやめたので」と紹介状を書いてもらったこともあります。担当医が若返って、ずっと診てもらえる安心感も得られました。
4.「困ったら送るよ」と伝えておく
家族から手助けする姿勢を見せることで、安心感が違うようです。
家族はすべてに対応する必要はないと思います。私も、都合が悪ければ断ったり、予定をまとめたりしています。
5.車なしでも楽しめる場所を見つけておく
公共交通で簡単に行ける、小さな楽しみを探すのもよいです。自分が住むまちや隣県の観光名所など、車がなくても気軽に行けるところはいろいろあります。早めに返納すると、体力も残っていてより楽しめます。
おわりに
免許返納は、本人にも家族にも大きな生活の変化をもたらします。
我が家も返納して最初の半年がいちばん大変でしたが、時間をかけて工夫したことで生活が整い、今は「車がなくても大丈夫」と言えるようになりました。
最初に寂しさや不便を感じるのは、自然なことだと思います。時間はかかりますが、少しずつ工夫を重ねれば、新しい生活はちゃんと整っていく。両親の姿を見て、私も学びました。
この記事が、親や、将来の自分の免許返納が気になる方にとって、参考や励みになればうれしいです🙂
最後までお読みいただき、ありがとうございました。