- 投稿日:2025/04/18
- 更新日:2025/09/30

序章
根っからの引きこもりである僕は、
綿棒から家具家電まで、
実物に指1本触れることなく、
クリックひとつのネットで手に入れてきた。
徒歩10分の距離にスーパーはあるが、
そこへ足を運ぶのは週に2度。
手に取るのは、炭酸水とサラダチキン。
他の食料品は全てネットで購入。
そんな出不精の僕が、
数十年ぶりに家電量販店に出向き、
ドラム式洗濯機を購入した。
この物語は、
効率と時短に命をかけるネット住民の僕が、
非効率なリアル実店舗で購入するに至った、
回顧録である。
はじめてのおつかい 縦型洗濯機編
縦型洗濯機をネットで購入したのは、
10年前ぐらい前だろうか。
当時使っていた洗濯機は、
脱水機能に不具合が出始め、
買い替えを検討していた際に、
楽天のお買い物マラソンでポチりました。
購入画面で同時に、
現在使っている洗濯機の処分と、
新しい洗濯機の取り付けをお願いし、
全てクリック操作で手続きは終了。
洗濯機の配達日当日。
家の前に結構大きなトラックが止まると、
業者さんが1人で訪問。
手際よく、
1人で使い古された洗濯機を運び出し、
すぐさま、
今回購入した新しい洗濯機を運んで来る。
僕がやったのは床掃除ぐらいで、
洗濯機の運搬から設置まで、
全て業者さん1人のワンマンショー。
当日は結構不安でしたが、
業者さんは臨機応変に対応し、
トラブルも一切なく、
あっという間に作業終了。
ホッとしたのと同時に、
実店舗の終焉を悟りました。
はじめてのおつかい ドラム式洗濯機編
引越しを契機に、
ドラム式洗濯機の導入を検討する。
いつもの僕なら、
価格.comでランキングを漁り、
YouTubeでレビュー動画を視聴し、
ネットでポチる。
これぞ完全無欠の非接触スタイルなのだが、
今回に限っては、
その黄金ルートを外れ、
実店舗でドラム式洗濯機を購入しました。
その理由は、ただひとつ。
果たして、
ドラム式洗濯機は新居に設置できるのか?
引越し先の賃貸アパートは、
見た目こそ部分リフォームで、
小綺麗に整えられているが、
蓋を開ければ築40年の築古物件。
そして、最大の懸念は導線の問題。
玄関はかなり狭く、
屋内に入るには、
入ってすぐに、
90度ターンの難関が待ち受けている。
メーカーの公式サイトで、
寸法は既にチェック済み。
理論上は、
玄関を通過できるはず……なのだが、
そこから、
90度旋回しての搬入が
可能かどうかは、
図面ではなく実感がものを言う世界。
ここでネットの限界を悟る。
そして頼れるのは、
久方ぶりの“リアル”
──そう、家電量販店である。
エディオン ~買って安心 ずっと満足~
今回、ドラム式洗濯機を購入したのは、
「第一産業」
と、言われてた頃からのなじみの店。
EDION(エディオン)。
よくあるのが、
「実店舗で商品を見てネットで買う」
と、いう賢いとされる家電購入術だが、
僕はあえてその逆張りスタイルを選んだ。
つまり、
ネットで情報を収集し尽くし、
実店舗で買う。
エディオンの洗濯機コーナーにて、
自ら突撃するスタイルで
店員さんに声をかけると、
「これありますか?」
と、スマホから価格.comの画面を見せる。
残念ながら、
目的の商品は店舗にはなく、
「お取り寄せ」になったわけですが、
今回の目的は、
「実機に触れる」
などという温度感の話ではない。
もっと冷静かつ戦略的な、
2つのミッションがあった。
1.引越し先で、
ドラム式洗濯機が設置できるかどうかの、
下見依頼
2.価格交渉
再びスマホを取り出し、
今度は別の家電のページを表示。
「次はこの冷蔵庫見たいんですが」
価格.comのページにある目的の商品と、
赤く際立つ最安価格を、
水戸黄門の印籠のごとく見せつける。
「あと、掃除機と天井照明を3つ」
商品を付け足すたびに、
店員さんの動きもスピードアップ。
そのうち、
どこからともなく現れた
ナイスミドルな上司らしき人物が登場。
ようやく本番スタート。
価格交渉の開幕である。
ええお値段ですね~
ナイスミドルな上司は、
僕をテーブル席へエスコートすると、
交渉の舞台が静かに整えられた。
「今回は、
どういったご相談でしょうか?」
笑顔の上司と共に、鈍く光る銀縁眼鏡。
僕も営業スマイルでそれに応える。
引越しに伴い家電一式を新調する事。
ドラム式洗濯機が設置できるか不安な事。
さらに、
「このあとケーズデンキに寄る予定です」
と、ちょっとしたスパイスも入れてみた。
まず、「下見」は即答でOK。
これにて第一ミッションはあっさりクリア。
さて、残すは気になる価格交渉。
当然、
価格.comの最安値を丸呑みするのは難しい。
が、それに近づけるお土産は用意してきた。
ドラム式洗濯機に加え、
冷蔵庫と掃除機に天井照明x3。
総額30万円超のパワーパッケージ。
「さぁエディオンさん、
おたくの本気価格、見せてもらおうか」
提示された金額を
僕はスマホの画面と見比べながら、
「ええお値段ですね~」
と、独り言のような感想を述べると、
「これが、
エディオンさんの最安値ですか?」
の質問と共に、
さり気なく価格.comの画面を見せる。
そんな数度のやり取りの末、
最終的に、
税込み37万円でフィニッシュ。
価格.comの最安値とまではいかなかったが、
設置の下見も含めて、
十分に納得のいく金額。
今回の主目的は“価格”ではなく“安心”。
そう考えれば、
この価格差は保険料として受け入れました。
荒井注の渾身のギャグ
「ザ・ドリフターズ」といえば、
僕の世代だと『志村けん』さんですが、
一世代上になると、
ドリフの顔は『荒井注』さんのようで。
「ジス・イズ・ア・ペン」のギャグは、
大流行したそうですが、
僕はこの面白みが全く理解できません。
僕が荒井注さんを見た記憶といえば、
ドリフの舞台ではなく、
ワイドショーで繰り返し報道された──
「荒井注カラオケボックス事件」
バブルの余韻が残る時代。
荒井注さんは副業として、
カラオケボックスビジネスに参入し、
自ら施設を建設。
ところが、いざ建物が完成し、
カラオケ機器を搬入しようとした瞬間、
ドアが小さくて、
カラオケ機器が入らない設計ミスが発覚。
カラオケボックスは開店を断念。
建物はそのまま朽ち果て廃墟と化した。
ワイドショーでインタビューされるたび、
彼は険しい表情で、
「何だバカヤロウ!!」
と、カメラに向かって、
人生を賭けた渾身のギャグを放つ。
あれから30年、
僕は荒井注さんのおかげで、
無事にドラム式洗濯機を
新居に向かい入れることができました。
ネットショップだけで生活する条件
僕が今の賃貸物件を選んだ決め手──
それは「1階であること」
家賃? 間取り? 日当たり?
もちろん大事ですが、
何よりも優先したいのは、
「荷物がちゃんと入るかどうか」
1階というと、
防犯面や虫の侵入リスクなど、
デメリットがよく語られますが、
僕のように、
全てをネットで完結させる
引きこもり原理主義者にとっては、
1階でないと生活が詰みます。
たとえば今回の件。
ドラム式洗濯機を購入するにあたり、
「家の中に入るのか?」
という懸念があったので、
わざわざエディオンの実店舗に出向き、
現地下見を依頼するという
文明的解決に至りました。
結果は無事クリア。設置もスムーズ。
「計画通り」
と、ニヤついた瞬間、
トラブル発生。
冷蔵庫が玄関から入らない。
玄関のドアは通れたが、
そこから90度旋回して、
屋内に搬入することができないと発覚。
ドラム式洗濯機ばかりに目が行き、
冷蔵庫の寸法はすっかりスルー。
そこで、
エディオンのスタッフさんが、
颯爽と裏に回り、
部屋の窓から冷蔵庫を搬入してくれました。
これがもし、2階3階だったらと思うと……
かなり面倒なことになっていたはず。
さらにその数時間前、
同じような事態が、
引越しの際に起こっていました。
実家から持ってきた
愛用のスタンディングデスクが、
玄関から入らない。
こちらも、
引越し業者さんが手際よく、
裏ルートからの搬入を決行。
この問題のスタンディングデスクは、
戸建ての実家にいた頃に、
ネットで購入したものですが、
正直、
実家が大きかったこともあり、
バカでかいデスクのサイズに関しては、
さほど気にしませんでした。
しかし、
手狭な賃貸に移ってからは、
その考え方がガラリと変わります。
今や、
あらゆる物がワンクリックで買える時代。
実店舗より安く、レビューも見放題。
情報も価格も、全ては手のひらの上。
だが唯一、
その商品が「玄関に入るか?」
と、いう導入部分は、
ネットの情報だけでは分からない。
購入前にサイズを確認するのは当たり前。
でもそれ以上に重要なのが、
商品を搬入する導線の確認とイメージ。
これは、
引きこもりが現代を生き抜くための
基本スキルである。
ありがとうございました。