- 投稿日:2025/05/22
- 更新日:2025/09/30

はじめに:「早くしなさ〜い!」からの卒業を目指して
「早くしなさ~い」「もう、こんな時間よ!」「なんでまだやってないの!」
……そんな声が飛び交う、毎朝の“戦場”。子どもがなかなか支度を進めず、イライラが募る時間になってしまうご家庭は多いのではないでしょうか。
我が家もそうでした。幼稚園、小学校と3人の子どもが毎朝家を出るまで、それはもう毎日のように“戦い”の連続。けれども、そんな中でもやはり最後は「いってらっしゃい」と笑顔で送り出したい。
この記事では、小学校教諭として16年間子どもたちと向き合い、3児の父としても実生活で試行錯誤してきた私が、笑顔で送り出せる朝の支度の工夫をご紹介します。
1.まずは大前提:「見られていない」と子どもは動かない
なぜ子どもはダラダラしてしまうのか? それは「見てもらっていない」と感じているからです。
子どもは常に「ちゃんと見ていてほしい」「気にかけてほしい」という想いを心の中に持っています。逆に言えば、見守られているという安心感があってはじめて、自発的に動き出せるのです。
ただ「早くして」と言うだけでは伝わりません。子どもは、「どうすればいいかがわからない」ことも多く、それを見守って、できたことを評価してくれる存在がいることが、行動の原動力になります。
「見てくれている」→ 安心感
「こうするといいよ」と方向を示す → 納得感
「できた!」 → 達成感 → 意欲
この流れをつくることが、朝の準備に限らず、すべての行動の基本になっていきます。
では、その“見守り”をベースに、具体的にどんな工夫ができるかを紹介します。
2.事前の準備:「朝を始める前に、半分は決まっている」
朝にバタバタしないためには、前日の準備が9割。
洋服、持ち物、提出物、体操服など……「朝考えないで済む仕組み」を整えておくことで、朝の負担は劇的に減ります。
● 我が家の工夫:
夜、寝る前に明日の準備をして、玄関にランドセルを置いておきます。急な持ち物があっても朝にバタバタしなくてすみます。
翌朝の服は寝る前に自分で選ばせて、枕元にセット。
ランドセルの中身チェックは親と一緒に1分だけ。短くて済むと継続できる。
「やることが“決まっている状態”」は、子どもにとっても親にとっても気持ちが楽になります。
3.音楽の活用:「行動にリズムを与えるスイッチ」
人は音に自然と反応する生き物です。ただ、声かけをするよりも音楽をかけることで自然と楽しい雰囲気になり、「体を動かすきっかけ」になります。
また、小さい子は時計を知らなかったり、習っていてもまだ身についていなかったりします。しかし、音楽なら「あとどれくらい」という時間の感覚がわかりやすく、「時間の目安」になります。
● 我が家の活用法:
洋服を着る時間 → 「からだ☆ダンダン」 やはり『おかあさんといっしょ』は強い! 床でごろごろしていても、この曲がかかると走り出します。じまんのエンジン、じんじん燃やして動き出しますよ。
朝ごはんが始まる → 「ムーンライト伝説」 セーラームーンは時代を超えて愛される魅力があるようです。テーブルにつかなかった子どもたちが、曲をかけると「ごめんね、素直じゃなくって♪」と歌いながら席につきます。素直になってよ!
定番曲を決めておくと、「この曲が流れたらこれをする」が自然に身につきます。
4.自分で決めさせる:「指示される」から「選ぶ」に変える
子どもにとって、「やらされている感」は大敵。
でも、やるべきことはたくさんある。そんなときこそ、“自分で決めさせる”工夫が効果を発揮します。
● 具体例:
「先に顔を洗う?それとも服を着る?」と順番を選ばせる
「今日は黄色のタオルにする?それとも緑?」と選択肢を出す
ポイントは「やるか、やらないか」ではなく、「AをやるかBをやるか」と、どちらを選んでもやるという構造です。
親にしてみれば「やる!もしくはやる!」と言っているのですが、子どもからすると「自分で決めた」と思えて、自分の足で動き始めます。
5.細かい「できた」を見逃さない:「小さな成功」が次につながる
大人から見ると「これくらいできて当たり前」と思えることでも、子どもにとっては大きな一歩です。
席に座った → 「席に座るのが素早いね」
お箸を持った → 「すぐにお箸を持ったね」
白ご飯を食べた → 「一口目はご飯からだね」
着替え始めた → 「服を脱ぎ始めたぞ~」
靴下をはいた → 「お、今日も自分ではけたね」
洗濯かごに入れた → 「パジャマを片付けできたね」
“細かく、具体的に、即時に”声をかけることがコツです。
● ポイント:
「すごいね」よりも「◯◯ができたね」と事実に焦点を当てる
結果ではなく過程に注目する(例:「昨日より早くリュックを背負えたね」)
どうしても自分の期待通りのことを望んでしまいがちですが、言葉に出すのは事実です。事実をそのまま親の言葉として子どもに伝えてあげれば、それが“認めること”になります。
ここでの比較は、兄弟や他の家庭の子どもではなく、「その子自身との比較」であることが大切です。その子がどう変化したか、その過程に注目しましょう。
その一言が、子どもの「次もがんばろう」につながります。
おわりに:「準備させる」のではなく、「一緒に整える」
朝の準備は、子どもが自立していくための大切なプロセス。だからこそ、怒って動かすのではなく、一緒に楽しみながら取り組むことができたら、毎朝がもっと心地よくなります。
「見守ること」から始めてみる
「できる仕組み」をつくる
「できたね」を一緒に喜ぶ
そんな朝が増えることで、家を出るときの「いってらっしゃい」がきっと笑顔に変わっていくはずです。
朝の戦場に、少しの余裕と、たくさんの愛情を。