- 投稿日:2025/05/27
- 更新日:2025/09/30

はじめに:「注意」が“怒り”になっていませんか?
サムネイルを見て、ドキッとした人、いませんか?
いますよね。ドキッとしたからこそ、この記事を読んでいるんですよね。
自分で書いていて、僕もドキッとしました💦
子育てをしていると、怒鳴ってしまうこと1回や2回ではないです。
「こら!何回言ったらわかるの!」
「いいかげんにしなさい!」
子どもに「伝えたいことがある」から注意しているのに、気づけば感情が先行してしまい、子どもの心は閉じてしまう……そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。
注意すること自体は、決して悪いことではないんです。
しかし、子どもに”どう伝えるか”それしだいで“届く”こともあれば、“突き放す”ことにもなるんです。
だからこそ、“怒鳴らず、静かに、でも確かに伝える”ことが大切なのです。
僕も小学校教諭として16年間子どもたちと接していますが、働き始めて1年目、2年目の頃は毎日のように大きな声を出していました。しかし、最近では1年に1回出すかどうか。しかも、大きな声を出していた時のほうがクラスが荒れていたんですね。
そうした経験を重ねる中で「子どもに注意する際のコツ」が、だんだんと分かってきました。今回はそのコツを家庭でも使えるようにお届けしたいと思います。
1.片手間にせず、ちゃんと向き合う
キッチンで料理をしていると、ガシャーンという音が・・・
洗濯物をたたんでいると、隣から下のこの泣き声が・・・
なんて時、「何してるの!」「やめなさい!」とその場から動かず、声ですましてしまう・・・
でも、子どもは見ているんです。
「ちゃんと聞いてくれてるのか」
「自分のことを本気で考えてくれているのか」
その場から動かず、声だけですませたということは、その程度のことだったんだという印象を子どもに与えてしまいます。
これは、注意したつもりになっているんです。
目は口ほどにものを言うとはまさにその通りです。
注意するときは、“手を止めて、目を合わせる”。 これは、言葉よりも強いメッセージになります。
料理をしていても、一旦火を止めて子どもの前に行く。
洗濯物が畳みきれていなくても、子どもの姿を確認しに行く
その際、大事なことは、目線を合わせて話すこと
大人が立って上から話すのではなく。椅子に座ったり、膝をついたりして目線を子どもと合わせます。「あなたのことをしっかり見てるよ」と目で伝えるんです。
そしてもう一つ声のボリュームよりも、表情やまなざしで伝えること
いきなり声をかける必要はありません。
姿を見せる→表情を見せる→間を空けて考えさせてから話を始める。
片手間の注意では、子どもには「どうせ聞いてない」「流してるんだ」と映ってしまいます。
これは、教室でもそうです。教室内を走っている子がいる際、「走りません」と言っても本気が伝わりません。子どもを止めて目を見て話をすると、強く言わなくとも伝わります。
“ちゃんと向き合ってくれている”という安心感があってこそ、子どもは注意を受け取る準備が整うのです。
※奥さんに「ちょっと来てくれない」と言われると身が引き締まりますよね
2.「ダメ!」の前に、自分の気持ちを伝える
注意する時、怒りの感情だけを子どもに伝えていませんか?
でも、本当は怒りを伝えるのではなくて、その行為を止めたかったはずですよね。ならば、伝えるべきは怒りの感情ではなく、「自分がどう感じたか」です。
「それをされると悲しかったよ」
「お父さん、ちょっとびっくりしたな」
「その言葉を聞いて、モヤっとしちゃった」
これは「I(アイ)メッセージ」と言われる伝え方で、子どもを責めるのではなく、親の気持ちとして伝える方法です。
子どもには悪気はありません。
ただ、伝えないと相手がどう思っているか分からないんです。
特に感情は目に見えづらいものですから、どう思ったか、どう感じたかは言葉にして伝えることが大事です。
「また怒られる」ではなく、「自分の行動が誰かの気持ちに影響した」と気づけると、子どもの内面に変化が生まれます。
教室でも僕はよく自分の感情を伝えます。「みんながこう思われると先生は悔しい」「こんなことをしてくれたから、とても嬉しい」事実ももちろん大事ですが、感情を言葉にすると子どもたちは真剣な眼差しで聞きます。
これは小さな子どもにも有効です。感情的に「ダメ!!!」と叫ぶのではなく、落ち着いて「今、ちょっと困っちゃったな」と言うだけで、受け取り方はまるで違います。
※「あの時は、アドバイスじゃなくて話を聞いてくれるだけでよかったの。共感してくれなくて悲しかったんだよ」と言われて初めて気がつくものです
3.子どもの話をちゃんと聞く
子どもに注意をした、その時
「でもさ…」
「実はね…」
と子どもが言ってくるとき、
「そんなことは関係ない」「悪いものは悪い」と子どもの話を潰してしまっていませんか?
子どもの言い訳、反論、つぶやき。その中に、実は子どもなりの「理由」や「正義」が隠れていることが多くあります。
「わざとじゃなかった」
「先にあっちが意地悪してきた」
「ママがそう言ったからだよ」
たとえそれが間違っていたとしても、話を聞いてもらえたという経験が、信頼につながります。
子どもの言うことに賛成する必要はないんです。途中で遮らず、「なるほど、そう思ったんだね」と受け止めるだけでOK。
上靴のかかとをいつも踏んでいる子にその理由を尋ねてみると「上靴が小さいけど、買ってもらえない」と返ってきました。表面上だけではわからない理由が隠されていることは学校でもよくあります。
親も人間、子どもも人間。互いの声が届く関係づくりの第一歩が、「聞くこと」から始まります。
※「よかれと思ってアドバイスしたんだよ」と聞いてくれるだけで「ごめんね」と謝れるもんです。
4.“これからどうするか”を一緒に考える
目を見て、自分の気持ちを伝え、相手の話を聞く。これで終わってはいけません。
子どもを注意した目的は、“責める”ことではなく、“次につなげる”ことです。注意したということは「こうしてほしかった」という希望があるはずですね。その希望通りにはいかないかもしれませんが、次につなげる終わり方をして、注意を意味のあるものにしましょう。
「だからダメなの!」で終わるのではなく、「じゃあ、次はどうしようか?」と未来の選択肢を一緒に探っていきましょう。
「今度はどんなふうに伝えようか?」
「さっきは叩いちゃったけど、どうしたらよかったと思う?」
「次は、声で気持ちを伝えてみる?」
子ども自身が「こうしよう」と言えたなら、それはもう立派な“前進”です。
学校でも子どものけんかは、よくあります。しょっちゅう起こります。僕がけんかした子たちの話し合いに入った時、最後は必ずこの言葉で締めます。
「これからどうする?」
この言葉があるので、自分で考えます。問題に対して主体的になれます。起こった出来事で終わらず、その先を見据えるんですね。
ここで大切なのは、“正解”を押し付けないこと。 大人からしてみれば「もっとこうしたほうがいいのにな」「本当はこう言ってほしいんだけどな」と、あると思います。
しかし、そこはぐっと飲み込みましょう。子どもですから、その自分で決めた行為を認めてあげましょう。失敗したらまたその時に一緒に考えたらいいんです。そのプロセスが、子どもの主体性と納得感を育てます。
※「これからは、君の話をしっかり受け止めるよ」と心がけてはいるつもりです・・・
5.大きな声は逆効果。“静かさ”が伝わる強さになる
つい感情が高ぶって、大声を出してしまう。 これ、本当によくあります。僕もあります。 でも、声が大きい=伝わるではないんですよね。
子どもは“音量”ではなく“本気の眼差し”で親の気持ちを感じ取ります
大声は、内容よりも「怖かった」という印象だけを残すことがある
“静かに淡々と伝える”ことで、子どもは「これは大事なことだ」と気づく
つまり、“静けさ”は強さです。
教室では特に顕著です。いつも声を荒げる先生の言うことを子どもは聞きません。音量で何とかしようとしているだけで、子どもの心に届いていません。子どもは鋭く見抜きます。
いつも声を荒げる先生よりも、いざという時に迫力のある先生に尊敬と畏怖の年を抱くものです。
言い換えれば、「怒鳴らないと伝わらない」は幻想です。 本当に伝わるときは、実は声が小さい。 心を込めて、落ち着いた声で、まっすぐ目を見て話す。 それがいちばん届く注意になります。
※普段よりも落ち着きのある静かな声で話しかけられたその時には心のなかで「ごめんなさい」の準備をしています。
◆番外編:親だってイライラする。そんなときは?
とはいえ、こちらも人間。 仕事が忙しかった日、疲れている夜、思わず爆発してしまいそうなこともあります。
そんなときに試してみたいのは、この3つ:
ひと呼吸おいてから声をかける(6秒ルール)
一度その場を離れて、別の空気を吸う
「ちょっと落ち着いたら話そうね」と、時間をおく宣言
怒りに任せた注意は、伝えたいことをかすませてしまいます。 “本当に伝えたいこと”は、少し時間をおいてからでも遅くないんです。
子どもと向き合うためには、自分の心も整えておくことが大切。 感情は出すものではなく、扱うものだと思っています。
おわりに:「注意」は関係を壊すものではなく、築くもの
「怒らずに注意するなんて無理!」と感じる方もいるかもしれません。 でも、“どう伝えるか”を少し変えるだけで、子どもとの関係が変わっていきます。
注意は、短期的に「その場を収める」ためのものではなく、 長期的に「信頼と行動を育てる」ためのもの。
片手間でなく、ちゃんと向き合って
自分の気持ちを、やわらかく伝えて
子どもの声にも、耳を傾けて
「じゃあどうする?」を一緒に考えて
声を荒げず、静かに、でもしっかりと伝える
そうやって重ねた1回1回の注意は、きっと、子どもの“考える力”や“自信”につながっていくはずです。
「そんなに丁寧にできない」「時間がない」と感じるかもしれません。
しかし、長いスパンで見てください。
今の5分、10分が今後の何年、何十年に繋がっていくんです。
今、丁寧に向き合っていたら、今後大きく返ってきます。
すぐに完璧にできることではありません。 でも、子育てはマラソンです。 長い目で、あたたかく、そして静かに伝えていきましょう。
子どもに注意するたびに、関係が深まっていく。 そんな未来が、ちゃんとつくれます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。