- 投稿日:2025/06/16
- 更新日:2026/01/04
それは、夏のイベントに参加した日のことでした。
普段の私なら少し暑い日でも気をつけて過ごしていたはずなのに、
あの日はなぜか、「まだ大丈夫」と心のどこかで思っていました。
その油断が、私を一気に地獄のような体調不良へと引きずり込んだのです。
イベント会場は熱気に包まれていました。
人、人、人——。
大勢の人たちが熱気と興奮の中を行き交い、私もその波に乗っていました。
でも、突然、ある異変が私を襲います。
最初に気づいたのは、耳がおかしいという感覚でした。
「あれ?なんか、音が遠い…」
まるで水の中に沈んだような、遠くぼやけた世界。
誰かが話しかけてきても、それが言葉として聞こえず、
周囲のざわめきも、音楽も、すべてが霧の中に消えていくようでした。
その瞬間の恐怖は、今でもはっきり覚えています。
「このまま倒れるかもしれない」
そう思うだけで、呼吸が浅くなり、心臓がバクバクと脈打ちました。
そして、めまいと吐き気が一気に押し寄せてきました。
立っているのがやっと。
足元がぐらつき、視界が揺れ、汗が噴き出しながらも体はどんどん冷えていくような感覚。
私は人混みをかき分け、必死に近くのスタッフに声をかけました。
「すみません、体調が悪いです…」
言葉を発するのもやっとでした。
それに気づいたスタッフさんは、すぐに私のそばにイスを持ってきてくれました。
そして、複数人のスタッフが駆けつけ、
誰かがうちわで風を送り、
誰かが「ポカリと氷、持ってきますね」と言って走り出しました。
私はイスに座りながら、何もできずにただうなだれていました。
耳はまだ聞こえづらく、頭もグラグラして、目を開けているのがやっと。
それでも、目の前で忙しそうに動くスタッフの姿ははっきり見えていて、
「自分は今、助けてもらっているんだ」と実感しました。
戻ってきたスタッフさんが、氷とポカリをそっと手渡してくれました。
「少しずつ、飲んでくださいね」
その声はかすかにしか聞こえませんでしたが、
その“気持ち”は、はっきりと伝わってきました。
そして私は、車椅子で救護室まで運ばれることに。
そこでもベッドが用意されていて、体を横たえることができました。
計ってもらった体温は、38℃。
しばらくしてもう一度測ると37℃に下がり、
買ってもらった氷で首筋を冷やしながら、ゆっくりと落ち着いていきました。
仰向けになって、私はしばらく天井を見つめていました。
頭の中には、「申し訳なさ」と「ありがたさ」が交互に浮かんでいました。
イベントスタッフの皆さんは、知らない私にここまで親切にしてくれました。
うちわで扇いでくれた人。
ポカリと氷を買ってきてくれた人。
優しい声をかけてくれた人。
車椅子を押してくれた人。
どの行動も当たり前ではなく、「善意」そのものでした。
この出来事を通して、私は3つの大切なことを学びました。
① 熱中症は「突然」くる
事前に水を飲んでいたとしても、休憩を取っていたとしても、
暑さと人混み、体調の変化が重なれば、誰にでも起こり得ます。
特に耳の聞こえに異変を感じたら危険信号。
「まだ平気」と思わず、すぐに周囲に助けを求める勇気を持つことが重要です。
② 無理せず「助けて」と言う
私は、あのときスタッフに「体調が悪い」と声をかけました。
その一言が、命を守る結果につながったと感じています。
倒れてしまってからでは遅い。
だから、「おかしい」と思った時点で誰かに伝える。
それがどれほど大切か、身をもって体感しました。
③ 人の優しさは、何よりの薬
体がしんどいとき、誰かに「大丈夫ですか?」と声をかけられるだけで、
心がふっと軽くなるものです。
助けてもらった記憶は、今でもあたたかく、心の中に残っています。
「助けてもらった分、今度は自分が誰かを助けよう」
そんな思いも、自然と芽生えました。
これは“恩返し”ではなく、“恩送り”として、
次の誰かへつないでいきたいと思っています。
もし、これを読んでくださっているあなたがイベントに行く予定があるなら、どうか、体調に少しでも異変を感じたら、我慢せずに休んでください。
水分と塩分をこまめに摂って、無理をせず、
そして「助けて」と言える心の余裕を持ってください。
私の体験が、あなた自身や大切な人を守るヒントになれば嬉しいです。
最後に改めて、あの日私を助けてくれたすべての方に心からの感謝を込めて——。