- 投稿日:2025/07/17
- 更新日:2025/10/15
① 2024年9月11日「療育手帳制度見直し」の概要
2024年9月11日、公表された こども家庭庁・社会保障審議会の資料では、「療育手帳制度の見直し」が本格的に動き出したことが示されました。
療育手帳は現在、法律上の制度ではなく、各自治体が独自に運用しているため、交付基準(IQ/適応能力)や対象範囲に自治体ごとの違いが存在しています。これが自治体間の格差や不公平感を生んでいる点が最大の課題です 。
他自治体への転居後に手帳が持てなくなることで支援が受けられなくなるなどの問題も起こっています。
そのため「判定基準の全国統一」「軽度・境界域を含む支援対象の整理」「関連制度との連携」「法的整備」が検討され、新たなアセスメントツール(ABIT‑CV)の開発と標準化が進められています 。
② 現在の検討進捗(2025年7月時点)
令和4年度に始まった調査研究を踏まえて、厚労省・こども家庭庁・社会保障審議会では、ABIT‑CVの妥当性評価や実地試験が進行中です。
特に、知的障害の境界域や、発達障害を含む軽度の支援対象への対応が重要なテーマとなっています。自治体ごとの運用差をなくすための制度設計に向けた、実務的な検討も継続中です。
また、対象外となる可能性や他制度(精神手帳など)への移行ルートも含めた影響評価と通知・法整備のシナリオ作成が進められています。
療育手帳の更新が難しくなる場合、代替的な制度として『精神障害者保健福祉手帳』が検討されることもあります。ここでは、療育手帳との違いや適用のポイントについて簡単に整理してみました。
③ 精神障害者保健福祉手帳との違いと選択肢
・ 比較表
・発達障害があり 知的障害がない(IQ100前後) 場合、精神手帳が適用対象となり得ます。
・療育手帳所持者が他自治体へ転居した場合に不利益にならないよう、精神手帳への移行や併用が検討される場面が増えています。
④ 発達障害で精神手帳を取得するポイント
・ 主な要件と手順
医師の発達障害診断書が必要で、初診日から6ヶ月以上の継続通院が条件。
診断書を添えて自治体に申請し、県の精神保健福祉センターなどで審査が行われ、2〜3ヶ月程度の審査期間がかかります。
・ 等級とメリット・留意点
発達障害では、日常生活や社会生活の支障の程度により、2級または3級が中心となります。
メリットとしては療育手帳と大きく変わらず、医療費助成、税控除、就労支援、公共施設利用割引などがあり、将来的な進学や就労準備に有効です 。
一方で、更新時には再審査・診断書の取得が必要であり、制度は2年ごとの更新制となっています。
まとめ
療育手帳制度は今、制度そのものの「公平性の確保」と「支援対象の明確化」に向け、大きな変革の過渡期にあります。
我が子たちは現在、IQ100前後と知的障害の診断はないものの、日常の困難さや行動上の特性からB2判定で療育手帳を取得できています。ただ、今後の見直しで「IQや適応行動の基準」が厳格化されると、次回更新時に手帳が維持できない可能性もあります。
そのため、学校での個別支援など大切な支援を継続するためにも、療育手帳の更新準備に加え、精神手帳の取得要件や支援内容についても早めに把握しておくことが大切だと感じています。
同じように手帳の取得や更新を検討されている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。今後も制度の動きがあり次第、続報をお伝えしていきたいと思います。
参考資料「療育手帳に係る判定基準統一化の検討進捗報告」厚生労働省