- 投稿日:2025/08/17
- 更新日:2025/10/26
はじめに
「食べる量を減らせば痩せられる」──これは多くの人が最初に思いつくシンプルなダイエット法です。
実際に短期間で体重が落ちる人も少なくありません。
しかし、その後しばらく経つと「気づけば体重が元に戻っている」──いわゆる リバウンド に悩む人が非常に多いのも事実です。
では、なぜ食事制限だけのダイエットはリバウンドを招きやすいのでしょうか?
ここでは、研究データを踏まえながら「体の仕組み」と「日常でできる工夫」について解説していきます。
リバウンド率のデータ
まずは、代表的な研究から「どれくらいの人がリバウンドするのか」を見てみましょう。
・2年以内 … 半数以上の人が体重を取り戻す(Andersonら, 2001)
・5年以内 … 約8割がリバウンドする(同上)
・4~6ヶ月後 … すでに体重増加が始まるケースが多い(Liら, 2024)
つまり「痩せること」よりも「痩せた状態を維持すること」の方がはるかに難しいのです。
これらのデータが示すのは、単純に「意思が弱いから」ではなく、体の仕組みそのものがリバウンドを引き起こす方向に働いている ということです。
次に、その具体的なメカニズムを見ていきましょう。
リバウンドの生理学的なメカニズム
1. 基礎代謝の低下(適応性サーモジェネシス)
食事制限で体重が減ると、体は「飢餓状態」と判断して省エネモードに入ります。
その結果、基礎代謝量(何もしなくても消費されるエネルギー)が予想以上に下がる ことがわかっています。
例えば、ある厳しいダイエットプログラムの研究では、減量後に 1日あたり約789kcal も予測より代謝が低下していたという報告があります(Greenway, 2015)。
さらに体は「また飢餓が来るかもしれない」と考え、食事を再開するとそのエネルギーをできるだけ蓄えようと働きます。
基礎代謝が落ちている状態では消費エネルギーも減るため、次のダイエットでは体重が落ちにくくなる のです。
▶️ つまり、体は「生き延びるために省エネと蓄えを優先する」仕組みになっており、それがリバウンドにつながります。

2. 食欲ホルモンの変化
ダイエット後の体では、ホルモンのバランスが大きく変化します。
・空腹ホルモン(グレリン) が増える
・満腹ホルモン(レプチン、PYY、GLP-1など) が減る
これにより、常に「もっと食べたい」と感じやすくなります。
実際、オーストラリアの研究では、10週間の厳しい食事制限をした後、1年以上たってもホルモンの変化が続き、強い空腹感が残っていた という報告があります(Sumithranら, 2011)。
▶️ つまり、「食欲が止まらない」のは意志の問題ではなく、体の自然な反応 なんです。
3. 心理的な反動
生理的な仕組みに加えて、心理的な要因もリバウンドに大きく影響します。
「食べたいのを我慢する」こと自体が強いストレスとなり、解放されたときにドカ食いにつながりやすくなります。
現代の生活環境では、コンビニ・外食・甘い飲み物など誘惑が身近にあふれています。
短期的には我慢できても、長期的にストレスを抱え続けるのは難しく、結果としてリバウンドを招いてしまうのです。
▶️ つまり、強い我慢を続けるほど心の反動が大きくなり、ダイエットを続けにくくしてしまいます。

日常でできるリバウンド対策の工夫
リバウンドの背景には体の仕組みやホルモンの働きがあることを見てきました。
では、それをふまえて私たちは日常でどんな工夫ができるのでしょうか?
ここでは「無理なく続けられる3つの工夫」をご紹介します。
1. 量ではなく「食べる順番」を工夫する
「食事制限」と聞くと量を減らすことを考えがちですが、実は何から食べるかの順番を工夫するだけでも効果があります。
たとえば、野菜や汁物を先に食べ、次にタンパク質、最後にご飯やパンといった炭水化物をとるようにすると、血糖値の急上昇を防ぎやすくなります。
血糖値の乱高下は空腹感や脂肪蓄積につながるため、これを抑えるだけでもリバウンド防止に役立つのです。
👉 この方法については、別記事「無理せず続けやすい[血糖値ダイエット]について」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
2. 適度な運動(50%強度)
ダイエットの基本は、「摂取カロリー < 消費カロリー」。
そのため、食事だけでなく運動によるエネルギー消費も欠かせません。
ここでよくある勘違いが、「運動は強ければ強いほど痩せる」という考え方です。
実は効率よく脂肪を燃焼させるには、50%程度の中強度の運動 が最適とされています。
・運動負荷が少なすぎる → 燃焼量自体が少ない
・運動負荷が強すぎる → 脂肪ではなく、筋肉を分解してエネルギーを作り出してしまう
そのため「息が弾むけど会話できるくらい」の強度、例えば速歩き・軽いジョギング・軽めの筋トレなどが理想です。
この強度は 脂肪燃焼効率が高く、長く続けやすい というメリットもあります。

無理に毎日やる必要はなく、週に数回取り入れるだけでも基礎代謝の維持につながり、リバウンドしにくい体づくりに役立ちます。
3. ツボ刺激(飢点)
「どうしても食べたくなる…」そんなときに役立つのが、耳のツボ「飢点(きてん)」です。
耳の中央やや下にある小さなくぼみを軽く押すと、食欲が落ち着きやすいといわれています。
外出先や仕事中でも、指で数十秒押すだけで気持ちが切り替えやすくなるので、ダイエット中のサポートにおすすめです。
まとめ
食事制限ダイエットは、短期的には体重を落とす効果があります。
しかしその一方で、
・ 体は省エネモードになり基礎代謝が下がる
・ ホルモンの変化で「もっと食べたい」と感じやすくなる
・ 我慢の反動で心理的に食べすぎてしまう
といったメカニズムにより、リバウンドしやすいことが科学的に示されています。
今日からできるリバウンド対策の3つの工夫
⭕️ 食べる順番を工夫する
野菜・汁物 → タンパク質 → 炭水化物の順で血糖値を安定させる。
👉 詳しくは「無理せず続けやすい[血糖値ダイエット]について」の記事をご覧ください。
⭕️ 50%強度の運動を取り入れる
「息が弾むけど会話できる」くらいの運動で効率よく脂肪を燃焼し、筋肉を守る。
⭕️ 耳つぼ「飢点」を押す
食欲が強いときに耳の飢点を刺激して気持ちを落ち着ける。
「ダイエット=我慢」と考えると、どうしても長続きせずリバウンドにつながりがちです。
大切なのは、小さな工夫を習慣にして、無理なく続けられる形を作ること。
食べ方の順番、軽い運動、ツボ刺激といった日常の工夫を取り入れることで、リバウンドを防ぎながら健康的に体重をコントロールしていきましょう。
参考文献
Anderson JW, et al. Long‐term weight‐loss maintenance: a meta‐analysis of US studies. Am J Clin Nutr. 2001;74(5):579–584.
Li et al. Comparing caloric restriction regimens: a Bayesian network meta-analysis. 2024.
Sumithran P, et al. Long‐term persistence of hormonal adaptations to weight loss. N Engl J Med. 2011;365(17):1597–1604.
Greenway FL. Physiological adaptations to weight loss and factors favoring weight regain. Int J Obes (Lond). 2015.