- 投稿日:2025/09/23
- 更新日:2025/09/29

不動産鑑定士を目指す
都内の信用組合(信用金庫とほぼ同じと考えて頂いて大丈夫です。)で勤めていたころ、この信用組合では不動産担保を重視する金融機関でした。宅地建物取引主任者(現在は宅地建物取引士)と管理業務主任者(マンションの共用部の管理の資格)を取得した後、不動産鑑定士の勉強を始めました。信用組合では、融資先企業が破綻懸念先(実質破綻先の手前)の評価に転落した場合に不動産担保に対する不動産鑑定評価を取ることになっていたため、この時に不動産鑑定士の仕事に触れることになりました。(ちなみに私が現在勉強している中小企業診断士は、税理士の先生が一緒に持っている程度であったためどちらかというと税理士の先生というイメージだったので、当時は身近に感じることが出来ませんでした。)
国家資格取得前に転職を考える
働きながら国家資格取得を目指すのは大変です。そこで資格取得を前提にその業界に転職して先に業界経験をスタートさせつつ、資格取得を目指すことにしました。この時は、リーマンショックにより信用組合の経営状態が悪化し、外回り職員を減らしました。私の仕事に対するモチベーションが下がってしまい、管理業務主任者の資格を生かしてマンション管理会社に転職しました。しかし、マンションは漏水があると担当者に電話連絡があります。毎夜電話がなるかもしれないというプレッシャーがきつくて退職することにしました。そこで当時勉強を始めていた不動産鑑定士の勉強を継続しながら不動産鑑定士事務所に転職することを決意しました。しかし、仕事と資格の勉強がリンクしてくるメリットがある反面、落とし穴がありました。
日本不動産鑑定士協会連合会に求人情報が掲載されている
士業の就職活動は転職斡旋会社や転職仲介会社とは別に士業のホームページに求人が掲載されています。日本不動産鑑定士協会連合会は中身のチェックはされていません。私も就職して出す側になったのですが、自由に記載出来るようになっていて、裏取りもありませんでした。また、この後私は不動産会社に転職してハローワークに求人を出したことがあるのですが、この条件だと法令違反になるため出せませんというご指導がありました。恐らく協会連合会も求人等の法令に関して専門ではないので、善かれと思って掲載ページを載せていらっしゃるとは思います。ただ、実態は無法地帯となっています。これから不動産鑑定士業界に入りたいという方は本当に気をつけて欲しいです。
原則残業なし・社会保険あり
「原則残業なし・社会保険あり」と求人に条件が書かれていました。資格を取得していないため資格取得者と比べれば残業はないのかなと思っていました。また、社会保険について私の勉強不足のため、会社なら社会保険に入っているだろうと勝手に思っていました。就職した後に健康保険と厚生年金に非加入であると知りました。株式会社ですので強制適用事業所なのに未加入でした。この後後から入ってくる不動産鑑定士資格に合格した人が、社会保険加入をボス不動産鑑定士(社長)にお願いしていましたが取り合って貰えませんでした。
一時が万事と知ることに
正社員での就職という条件でしたが、最初の1か月はアルバイトにさせられ2か月目から正社員と告げられました。半年後のボーナスを支給対象から外すためでした。また、退職者が多く原則残業なしのはずが、毎月60時間の残業時間でした。私は士業で資格を取得して独立したいと思っていたため、そのまま頑張りました。年間の資格合格者が100人前後の難関国家資格のため、ここでにらまれたら業界に居づらくなるということも心理として働いてしまいました。
その年の不動産鑑定士試験1次試験は不合格に
資格取得に有利になるだろうと入った不動産鑑定士事務所でしたが勉強時間が余り取れず1次試験に不合格になってしまいました。今思えば完全に1年棒に振ってしまったと思います。また、1次試験に合格していない状態で雇ってくれる会社も希少なため、選択肢が少ない中で入ってしまったのも良くなかったのかも知れません。この後あることをきっかけに転職活動を始めるのですが、不動産鑑定士事務所の面接で「不動産鑑定士の業務はハードで勉強を続けるのは難しいから諦めて入社頂けますか?」と採用面接で言われました。本来ならこれが現実だと思います。その会社には転職しませんでしたが、誠実な会社だと思いました。
新入社員で不動産鑑定士2次試験合格者が入ってきた!
不動産鑑定士2次試験を合格した人が2名入ってきました。その前までボス不動産鑑定士(社長)と先輩不動産鑑定士と私の3人でした。そこに2人入ってきて5人となりました。みな私の年上で優秀な人材が集まる会社となりました。しかし、仕事量からしても増やしすぎではないかな?そんなに仕事取れるのかな?と思いました。
突然の確認テストから退職勧告へ
ある日、社長が確認テストをすると言い出しました。不動産鑑定士試験2次試験の演習科目のイメージです。その後試験結果を基にクビにすると言われました。直後のボーナスもなしと言われました。不動産会社に転職が決まるまでいさせて頂きましたが、社員がいない間のつなぎだったのかも知れません。
今回の経験からの学び
面接の後しっかり雇用条件を書面で貰うべきでした。不動産鑑定士協会連合会に求人情報が出ていますが、出している内容を社長が知りません。出しといてねというだけで、人さえ来れば良いというスタンスでした。私は今、商工会議所経営指導員で中小企業診断士を目指していますが、資格ありきではなく、資格を持っていない人も多いです。商工会議所の職員は日商簿記3級は必須ですが、中小企業診断士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなど自分の興味に合わせて資格を持っています。一方で、不動産鑑定士は持っていないことにはどうにもなりません。不動産鑑定士の主要業務である、公示地価評価、都道府県調査地価評価、相続税路線価評価、固定資産税評価等には評価委員の定年が定められています。定年後は雇用を維持するのが難しいため不動産鑑定士の資格を取得していないと行く先がありません。合格出来なければ退職して欲しいというのは最初から言われていました。業界の特殊性をよく理解していなかったと思います。
○○じゃないは注意!
ボス不動産鑑定士(社長)の口癖は、「うちはブラックじゃない」でした。よく考えてみれば本当にブラックじゃないのであれば、クチにしないですよね。心の片隅に多少思っているから「違う」ってクチにしてしまうのではないでしょうか。この不動産鑑定士事務所は、ブラックと判定できる点がいくつかあったと思います。もし、面接や入社後「○○じゃない」という言葉を聞いたら気をつけましょう!
後から入った不動産鑑定士2次試験合格者も苦労
不動産鑑定士2次試験合格者この後、実務修習、修了考査を経て不動産鑑定士となります。不動産鑑定評価はボス不動産鑑定士(社長)によってかなりやり方が違うので、数社実務を学んでから独立します。後から入った不動産鑑定士2次試験合格者も実務修習、修了考査を経て不動産鑑定士になった後、別の不動産鑑定事務所に転職しましたが、最初の給料支給日にボス不動産鑑定士(社長)からこんなに払えないと言われ、実際の支給額をさげられてしまい退職したそうです。次の職場ではしっかり雇用条件を守ってくれる会社に入ることが出来て今でも勤務しています。
これから不動産鑑定士を目指される方へ
不動産鑑定士業界は格差が大きく稼げるボス鑑定士の会社か、大手不動産鑑定事務所に入れないと一定の雇用条件で働くのは難しい業界だと思います。なので若くして不動産鑑定士2次試験に合格できれば、大手不動産鑑定事務所に就職することが出来ると思います。一方で、個人で独立するなら自由で色々な地域に実地調査へ行けるので楽しいと思います。ただ、稼げている不動産鑑定事務所かどうかを見極めるのは難しいです。私が勤めた不動産鑑定士事務所のボス不動産鑑定士は公的評価(公示地価評価、都道府県調査地価評価、相続税路線価評価、固定資産税評価)の各評価委員の幹事(2,3市町村をひとつの区域として、その区域の取り纏め役)でした。それでも、30年幹事になるまで長い期間があっての現在の地位ですので、やっといままでの苦労を回収しているという感じでした。どこの士業もそうなのかも知れませんが、よほどその仕事が好きでないと勉強の努力量に対して、報酬だけでは合わないかなと感じています。
私のその後
不動産鑑定士事務所をクビと言われた後、不動産会社に転職しました。他の記事で紹介していますが、勤めていた会社が2度倒産しています。この2度目の倒産時にこの不動産鑑定士試験の受験を諦めました。勉強期間で考えると2012年から2019年です。資格試験の撤退ラインは本当に難しいです。土日祝日を潰して勉強に費やしました。撤退ラインの設定と実際の撤退決断は外部環境変化が合わさって出来たと思います。合格するまで頑張るのは、勉強期間が長くなればなるほどモチベーションが下がっていきます。今頑張って勉強している方には、是非短期勝負で頑張って欲しいと思います。