- 投稿日:2025/09/22
- 更新日:2025/10/01

「家族を説得したい」と悩んでいるあなたへ
私はコミュニケーションの専門家として活動しています。
今日は、私が専門としているNVC(非暴力コミュニケーション)の視点から、
「家族の協力が必須なのに、理解が得られない」
「家族の信頼貯金を増やしたい」
そんなあなたに、今日から役立つコミュニケーションのポイントをお届けしたいと思います。
NVCってご存知ですか?
まず本題に入る前に、私が専門としている「NVC」について少し触れてみます。
NVCとは Nonviolent Communication の略で、直訳すると「非暴力コミュニケーション」。
1970年代、アメリカの臨床心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ博士が、さまざまな心理学や宗教観をもとに体系化した、自分の内と外に平和をつくるプロセスです。
具体的には、
Observation(観察・評価を交えず事実のみを捉える)
Feeling(感情・気持ちや感情を言葉にする)
Need(ニーズ・感情の奥にある、人間の普遍的な「大事にしたいこと」)
Request(リクエスト・ニーズを満たすための具体的な要求)
の4つのステップを意識しながら、自分や相手の中で起きていることに耳を向け、お互いを平等に大切するコミュニケーションの形です。
ちなみにこのNVCが日本に入ってきたのは2014年ですが、まだ知名度は低めです。
同じく2014年には、MicrosoftのCEOが人間関係の立て直しにNVCを社内に導入。
当時、Microsoftは敵対心や内輪もめ、裏切りのカルチャーで有名だったそう。その後は社内の風通しが良くなったこともあり、売上が3倍近く上がったとか…
そのほか、海外では裁判や教育現場、留置所や病院でのカウンセリング、部族抗争、国連開発計画の場にも導入されており、日本では、一部の病院のカウンセリングや公立小学校や幼稚園、教員研修などで導入されています。
ジャッジや正誤は暴力的なコミュニケーション
NVCでは、「私たちが使い慣れているコミュニケーションの多くに、暴力的な言語が含まれている」と考えます。
ジャッジや正誤の表現もその一つで、例えば
「貯蓄型保険って良くないらしい」
「余ったお金を全部投資に回すのは間違いだよ」
「その考え方はおかしいと思うな」
「インデックスファンドを選ぶのが正解だって」
こんなふうにジャッジや正誤が混ざると、多くの場合、相手から防衛的な反応を引き出します。
でも、私たちがこの暴力的なコミュニケーションに慣れ親しんでいるのはとても自然なこと。
なぜなら、これは小さい頃から社会に当たり前にあるコミュニケーションだからです。例えばアンパンマンや戦隊モノには「正義と悪」が存在するし、親からは「やっていいこと、いけないこと」を教えられますもんね。
暴力コミュニケーションがいけないわけではない
家族を説得する時、理解を得ようとする時。
私たちはどうしても「正誤」や「良い・悪い」の視点で話してしまうため、そうすると言われた相手は「ジャッジされた」と受け取り、自己防衛をしたり、反発をします。
ですが、決してこの「ジャッジや正誤の暴力的なコミュニケーション」がいけない、ということではありません。
「暴力的なコミュニケーションはいけないことだ」とするならば、それもまた暴力になってしまいますし、そして、実は私たちが暴力的なコミュニケーションをとってしまうことにも、ちゃんと意味があるからです。
例えば、Aさんが奥さんを説得するのにこう話したとします。
👨「火災保険を見直したいんだよね。今のところは高いから、Y社に変えない?」
👩「なんで?今のところは友達がおすすめしてくれたところだし、Y社だって対して値段変わらないよ?」
👨「小さい金額でも積み重なると大きいしさ。家計のためにもY社の方が絶対いいんだよ。」
👩「やだよ。節約ならあなたがビールやめればいいじゃん!」
このとき、Aさんは無意識に「今の保険会社は良くない、Y社を選択することが正しい」という暴力的なコミュニケーションで奥さんと話をしているわけですが、
このAさんの内面で起きていることをNVCの視点で見てみると、
👨家計管理って大事だよな、節約したいな
→この時Aさんは、「バランス」「守る」のニーズがある
→そのニーズを満たすための手段として、「Y社に変えることが効果的だ」と考えている
ということになります。
私たち人間は、自分の「満たしたいニーズ」が重要であればあるほど、「手段」の部分を相手に押し付けたくなったり、正論を持ち出して説得しようとしてしまいます。
つまり、私たちが暴力コミュニケーションをとる背景には
「自分のニーズを満たそうとするあまり、リスクの高い方法(暴力的なやり方)をとっている」ということがあるわけです。
平和な解決策を見つけるには
この、「自分が正しいと思うことを相手に押し付けようとして、関係性に不調和が起きたりする状況」というのは実によくあります。
そんな時は、こちらのミニワークで心の中を整理してみるのがおすすめです。
①「自分が正しいと思うことを相手に押し付けようとして、関係性に不調和が起きた状況」はありますか?
②その時、自分は何を恐れていて、誰が(何が)どのようになってしまうことを止めようとしていたのでしょうか?
③その方法(相手や状況に対するアプローチ)がうまくいっていないのはなぜでしょうか?
④そのうまくいっていない方法を手放し、自分の大事にしたいこと(満たしたいニーズ)のための、次の一手を考えてみることはできるだろうか?
ここまで読んでみて、もし
「大事にしたいこと(満たしたいニーズ)ってなんだ?」
「感覚的にまだよく分からない」
と思われた場合は、こちらにニーズの一覧表をご用意しましたので、ぜひダウンロードしてお役立てください。
(私が作成したもので、無料です。※個人利用の範囲でお使いください。)
実はいろんなニーズに溢れてる
「私たち人間は、すべての言動においてそこに何かしらのニーズがある」と考えていくのがNVCです。
例えば、あなたが毎朝決まった時間に起きているなら。
それは、出勤や犬の散歩、家事や育児をするという、「流れ・フロー」「生命・生活の維持」のニーズがそこにあるのかもしれません。
電車に乗った時、隣の人がやたら近くて嫌悪感があったなら。
それは、「身体の安全性」「スペース」「自己防衛」のニーズがそこにあるのかもしれません。
何回注意しても、子どもがゴミを片付けないことにイライラしているなら。
それは、「美しさ」「秩序」のニーズがそこにあるのかもしれません。
こんなふうに、どんな場面でもそこに何かしらニーズがあるんだな、と想像してみることで、少しずつ自分のニーズが掴めるようになってきます。
家族が反発・反論してくる時は…
先ほどの例では、Aさんは最後に奥さんから
👩「やだよ。節約ならあなたがビールやめればいいじゃん!」
と言われてしまいました。
これはつまり、
「「バランス」「守る」のニーズを満たしたいなら、手段を「ビールをやめる」にしたらいいじゃない」
ということですね。
こんなふうに、相手から反論が出てきたり拒絶があった場合、NVCでは
「相手がNOをいう場合、相手は「その要求を受け入れると私のニーズが満たせなくなる」ということを暗に示している。」
と捉えます。
これはつまり、保険会社をY社に変えると、奥さん側のニーズが満たせなくなってしまう、ということです。
例えば奥さんは、👩「今のところは友達がおすすめしてくれたところだし」と話していたので、保険会社を変えると「繋がり」「親密さ」のニーズが満たせなくなるのかもしれません。
もしくは、「実は手続きが面倒」「今のところならポイントがつくし」などが心の中にある場合、「効率性」「一貫性」「気楽さ」のニーズを大事にしたいのかもしれません。
最後に、一番重要なこと
人間関係で対立が起こったり、分かり合えない時というのは、それはどちらか一方のニーズしか満たせない状況が起こっていたり、「どちらかが正しい」というような、ジャッジや正誤のコミュニケーションが発生している場合が多いです。
先ほどの例で言うなら、Aさんが節約のために保険会社を変えることも、奥さんの言うようにビールをやめることも、どちらも正解不正解はありません。
大事なのは「双方のニーズを満たせる手段・状況であること。もしくは、双方のニーズを満たしたい、という姿勢であること。」です。
私はよく、息子に「お母さんが大事にしたいこととあなたが大事にしたいこと、両方大事にしたいから、一緒に方法を考えてほしい」と伝えます。
他にも、「お母さんは〇〇を大事にしたいから△△をしたいんだけど、協力してもらうことって可能?」と伝えることも。
長くなりましたが、あなたが大切な家族の理解を得るための参考にしていただけたら嬉しいです。
☝質問、お悩み大募集
🧒「起業したいけど周りが反対してくる。どうしたらわかってもらえる?」
🧒「親の加入している保険を見直したいけど、聞く耳を持ってくれません!」
などなど、お金の力とコミュニケーションにまつわるご相談はもちろん、
🧒「感情的に子どもに接してしまうことに自己嫌悪。」
🧒「同僚にうんざりしてストレスがたまる。どうしたらいい?」
など、人間関係にまつわるご質問、お悩みをぜひ聞かせてください。
いただいたお悩みをもとに、皆さんのお役に立つ記事のテーマを今後考えていこうと思います。
(ご相談の場合は、相手との実際のやり取り(お互いのセリフ)や背景、状況などを詳しく教えていただけたら、より的確なアドバイスもできます👍)
お待ちしております!