- 投稿日:2025/09/29
- 更新日:2025/09/30

著者紹介
マイケル・ボルダックは、
幼少期に過酷な現実に直面した。
7歳のとき
父親によって母親を殺害され、
その衝撃から重度の吃音を発症。
親族に預けられたのち、
16歳で家から追い出され、
路上生活となり高校も中退。
家族無し。
資産無し。
住居無し。
学歴無し。
そもそも助けを求めたくても、
吃音のため言葉が届かない。
ハードモードより上の難易度、
「人生ナイトメアモード」
と、いったところだろうか。
それでも、彼は折れなかった。
そこから8年、
コーチングの技法を
徹底して学び、実践し、
思考と行動のパターンを
組み替えることで、
ついに億万長者へと飛躍する。
もちろん、
それは魔法でも奇跡でもない。
マインドを変え、
やる気に火を灯し続けた、
再現性のある『科学』である。
そのプロセスと原理を、
余すところなく体系化したのが
本書『達成の科学』である。
それでは、彼がどのように
「やる気」を点火し、
維持してきたのか――
エッセンスを手短に見ていこう。
序章
本書は、
「やる気 ➡ 行動」ではなく、
「行動を生む設計 ➡ やる気」
という順番を示す。
やる気を起こすのではなく、
やる気を設計するのである。
設計の根幹は下記の4点。
①焦点の選択
②痛みと快楽の再結合
③信念の再定義
④規律による継続
以上を踏まえ、
以下で各ステップを
順を追って解説する。
①焦点の選択
人は出来事そのものではなく、
出来事に与えた意味に反応する。
やる気を高めるには、
望む結果に直結する問いで、
見る対象(焦点)を
を意図的に切り替える。
1) 事実と解釈を分ける
事実(誰が見ても同じ)
例:「締切は金曜日」
「修正依頼が来た」
解釈(自分が与えた意味)
例:「時間がない」
「評価が下がった」
まず事実を確認し、
解釈は
見直し可能なものとして扱う。
2)焦点を望む結果へ向ける問い
・いまの事実は何か?
・自分は何を達成したいのか?
・この状況から何を学べるか?
・コントロールできることは?
3)解釈を前向きな言葉に変換
旧:断念・評価の表現
新:結果と行動に向けた表現
例:「時間がない」
⬇
「優先順位を見直す」
「評価が下がった」
⬇
「基準が明確になった」
4)シーン別の小例(一般形)
💻仕事
不都合な現状を確認
⬇
望む結果を定める
⬇
足りない情報や
最初に手を付ける箇所を特定
📝学習
今の理解度を事実として捉える
⬇
目標を明確化
⬇
必要範囲に焦点を合わせて着手。
💊健康
サボっていた期間を受け入れる
⬇
今日の達成基準を定める
⬇
始めやすい一歩から動く。
まとめ
事実→結果→問い→言い換え。
この順で焦点を整えると、
意味づけが変わり、
その結果として
やる気が立ち上がる。
②痛みと快楽の再結合
本書は、人の行動が
「痛みを避け、快楽を求める」
この力学に従うことを前提に、
望ましい行動には快楽を、
望ましくない行動には痛みを、
結びつけ直す方法を示す。
いまの連想
(行動=痛み/快楽)を見直し、
意図的に結び替えることで、
やる気は後から立ち上がる。
手順
1.現状の連想を見える化する
望ましい行動
いま、何に結びついているか
(面倒・不安
/達成感・安心など)
望ましくない行動
いま、何に結びついているか
(安心・気晴らし
/罪悪感・後悔など)
2.望ましくない行動に
『痛み』を結びつけ直す
・問い①
この行動を続けると何を失うか
(時間・信頼・自尊心など)
・問い②
これが積み重なると
どんな悪影響が出るか
■ねらい
その行動を選びにくくする
痛みの連想を強める。
3.望ましい行動に
『快楽』を結びつけ直す
・問い③
実行すると何を得るか
(進捗・安心・成長など)
・問い④
これが積み重なると、
どんな良い影響が出るか
■ねらい
その行動を選びたくなる
快楽の連想を強める。
4.感情を伴って繰り返す
痛み/快楽のイメージを
感情を込めて反復し、
連想を定着させる。
言葉・姿勢・呼吸など、
感情が乗りやすい状態で行うと
効果が高い。
小さな具体例(一般形)
◎先延ばし
結び替え前:先延ばし
=一時の安心(快楽)
/着手=不安(痛み)
結び替え後:先延ばし
=信頼低下・機会損失(痛み)
/着手=前進・安心(快楽)
◎習慣化したい作業
結び替え前:作業
=退屈(痛み)
結び替え後:作業
=成長・達成・肯定感(快楽)
使いどころ
行動が止まったら、
まずどの連想(痛み/快楽)が
働いているかを点検する。
そのうえで、上の問いを使って、
望ましくない行動に痛み、
望ましい行動に快楽を
結びつけ直し、
感情を伴って反復する。
まとめ
連想の配置換え(結び替え)
こそが『やる気スイッチ』
痛み/快楽の向きを入れ替え
選択が変われば、
やる気は結果として起動する。
③信念の再定義
限定的信念
・「自分は継続できない」
・「完璧でないと意味がない」
これらは行動を止める
『内的な前提』として働く。
本書は、
次の流れで信念を見直し、
置き換えることで
自らを自然に前進させる。
手順
1.特定する
つまずきや先延ばしの場面で、
心の中に浮かぶ言葉
(自己対話)をそのまま捉える。
例:
「続かないタイプだ」
「完璧じゃなければ出せない」
2.根拠を問い直す
それは事実か、それとも解釈か。
例外や反証
(続いた場面、
十分に成果が出た場面)
は存在しないのかを問う。
その信念を持ち続けると、
何を失うか/得られないかを
確認する。
3.望む結果を支える定義に
置き換える
望む結果
(続ける/仕上げる など)
に一致する表現へと言い換える。
例:
「自分は続かない」
⬇
「小さく始めれば続けられる」
「完璧でないと意味がない」
⬇
「まず仕上げ、必要なら改善」
4.言葉と行動を一致させて
定着させる
置き換えた信念に沿って
実際に行動し、結果を確認する。
行動による裏付けが蓄積され、
新しい信念はより強化される。
要点
信念は
見直し・置換が可能であり、
それにより行動の選択が変わる。
新しい定義が行動と結びつくと、
やる気は自然な選択として
動き始める。
④規律による継続
やる気は
気分に依存すると長続きしない。
本書は、
規律(約束・仕組み)によって
行動を維持することを勧める。
中核は次の流れである。
1)目標を具体化する
あいまいな願望ではなく、
達成したい状態を
明確な言葉で定義する。
終わりの姿(到達点)と、
そこへ向かう基準を
はっきりさせる。
2)目標から計画を作る
到達点から逆算し、
必要な行動を段階に分割。
「何を、どの順で行うか」
各段階でそれらを事前に決める。
3)時間を確保する
行動のための時間を
先に確保(後回しにしない)。
他の予定に流されないよう、
実行の枠を守る前提で扱う。
4)約束を可視化する
自分が行うと決めたことを
言語化し、見える形に置く。
守る対象(自分/他者)
を明確に判断し、
守るべき約束として扱う。
5)進捗を確認する
行動の履歴や到達度を
定期的に点検する。
ずれがあれば計画を修正し、
次の行動に反映させる。
6)外部へのコミットを活用する
必要に応じて、
他者に対して実行を宣言し、
結果を報告する。
外部の目を使い、
約束を守る力を強化する。
7)小さく始め、
行動に焦点を当てる
大きな結果ではなく、
当面の行動に注意を向ける。
小さな前進を積み重ね、
行動の継続を優先する。
要点
規律は下記の循環で機能する。
目標の具体化
➡計画
➡時間確保
➡約束の可視化
➡進捗確認
➡外部コミット
➡スモールスタート
結果より
行動に焦点を当てて
積み重ねることで、
やる気は維持され、
揺るぎない前進が続く。
おわりに
中国の名将・韓信は、
あえて川を背に
不利な地形に陣を敷き、
兵に退路を断たせて勝利した。
――いわゆる背水の陣。
同じく
古代ローマの将軍シーザーは、
退却用の船を焼き払い、
兵を後退不能の状況に置いて
士気を奮い立たせた。
過去の「やる気」は、
しばしば外側から
尻を叩く強制のかたちをとった。
だが、
人生には理不尽な展開が、
突然訪れる。
『達成の科学』の著者
マイケル・ボルダックは、
2011年3月11日、
東京でセミナーを実施中に
東日本大震災と直面した。
安全を最優先して中止となり、
ホテルで繰り返し流れる
津波の映像に彼は言葉を失う。
なにか
私にできることはないだろうか。
そう自問を繰り返した結果、
これまで自分や
多くのクライアントを
支えてきた成功のスキルを、
より広く届けることが
自分に課せられた仕事だと
マイケルは結論づけた。
あらゆる出来事に対し、
100人いれば100通りの
意味付けが存在する。
不幸から落ちていくのか、
そこから這い上がるのか。
最終的に違いを生むのは
考え方の選択だ。
母親を殺されようが、
津波で家族を奪われようが、
その理不尽さを我々は、
受け入れるしかない。
あの出来事があったから……
前へ進む糧に変える道は
まだ残されている。
本書が教えるのは、
そのための設計図である。
やる気は待つものではない――
自分で設計して立ち上げるのだ。
「世界No.1 目標達成コーチ」
と、称される
マイケル・ボルダックが、
その方法をきっと教えてくれる。
ありがとうございました。