• 投稿日:2025/11/09
鍼灸師が解説!肩こりの原因と効果的なツボ・ストレッチのケアまとめ

鍼灸師が解説!肩こりの原因と効果的なツボ・ストレッチのケアまとめ

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みつの@学び続ける鍼灸師•民泊挑戦中

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要約
肩こりは筋肉・筋膜・血流・自律神経が複雑に関わる「国民病」。鍼灸師の視点でその原因を解説し、ツボ刺激やストレッチによる正しいセルフケア法を紹介。自分に合うツボを見つけ、日常で整えるポイントをわかりやすくまとめています。

はじめに

肩こりは日本人に非常に多い愁訴で、厚生労働省の国民生活基礎調査では男性2位、女性1位となるほど「国民病」の代表と言われております。この肩こり、その本態は「筋肉・筋膜・神経・血管の複合的な不調」であり、一見単純な「コリ」でも、背景に複数の病態が絡み合っています。

この記事では、鍼灸師(しんきゅうし)の視点から肩こりの病態を解説しつつ、一般の方にも理解しやすいように噛み砕いて説明します。

1. 肩こりとは

肩こりは、首から肩、肩甲骨周囲にかけて感じる「こわばり」「重だるさ」「痛み」を主体とする症状です。解剖学的には僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋などの持続的な筋緊張が中心病態とされます。

例えば「分厚いリュックをずっと背負っている」と背中が張ってくるように、日常生活で頭(約5〜6kg)を支え続けるだけでも首肩の筋は常に負担を受けています。

2. 肩こりの主な原因

肩こりの原因は以下の4つとされております。筋組織および筋膜レベルで以下のような病態生理学的変化が関与しています。
(ちょっと複雑なので興味のある方のみ読んでください笑)


筋線維の微小損傷と炎症(使いすぎタイプ)

過度の負荷や反復運動により筋線維に微小な断裂が生じると、局所的な炎症反応が起こり、ブラジキニンやプロスタグランジンといった発痛物質が放出されます。これらの物質は痛みの受容体を刺激し、筋肉痛や凝り感を引き起こします。小さな損傷の積み重ねでも慢性的な炎症状態となり、筋組織の修復過程で筋硬結(トリガーポイント)が形成される一因になります。

つまり、使いすぎによって肩こりが起こります。


筋膜の癒着(同一姿勢タイプ)

筋肉を包む筋膜(ファシア)は本来、ヒアルロン酸を含む基質によって層同士が水の上を滑るように動くことで、筋肉の柔軟な動きを支えています。しかし長年の不良姿勢や外傷、さらには長時間の不動や冷え、炎症などによって基質が粘稠化(ゼリー状に固まる)すると潤滑性が失われ、層同士が摩擦を起こしやすくなります。
その結果、筋膜や腱などの結合組織が隣接組織と固着し、「ビニール袋の内側が乾いて張り付く」ように癒着が生じ、可動域が制限されます。さらに炎症や微細損傷が繰り返されると線維芽細胞が活性化し、コラーゲンが過剰に沈着して繊維化が進行します。

弾力を失った組織は「乾燥して固まったスポンジ」のように硬化し、層間の可動性が消失するうえ、硬化した線維同士が「ささくれが絡み合うように」引っかかり板状の癒着組織を形成します。このような筋膜性の拘縮では痛み物質が滞留しやすく、神経を圧迫・絞扼して痛みやしびれを伴い、結果として肩こりを慢性化させる一因となります。


血行不良と局所虚血(循環が悪いタイプ)

筋肉が緊張して硬くなると筋内の血管が圧迫され、局所の血流が低下します。その結果、筋組織が酸素不足(虚血)に陥ります。酸素不足そのものが細胞にとってストレスとなり、組織内で危険信号としてブラジキニンなどの発痛物質が産生・放出されて痛みを感じるようになります。

痛みによりさらに筋緊張が高まると、いっそう血行が悪化して痛みが増強するという悪循環に陥ります。慢性的な肩こりではこのような局所虚血状態と疼痛の悪循環が持続しやすくなります。


発痛物質の蓄積(痛みがあるタイプ)

姿勢不良や長時間の筋緊張によって血流が滞ると、酸素不足に加えて代謝産物の排出が不十分となり、疲労物質や発痛物質が筋肉内に蓄積します。ヒスタミン、セロトニン、ブラジキニン、カリウムイオンなどの発痛物質は局所の侵害受容器を刺激し、鈍い痛みや重だるい凝り感を生じさせます。とくに老廃物の蓄積は神経を過敏にさせ、痛みを持続・増強しやすくなります。

つまり、「血行不良=酸素不足」「発痛物質の蓄積=その結果として神経を刺激」 という因果関係の中で肩こりが形成されていきます。


生活における肩こりの要因

上記で原因をお伝えしましたが、続いてそれを引き起こす日常的な要因は以下のものが該当します。肩こりを自覚する人は該当するものが多いのではないでしょうか?

・姿勢不良(猫背・ストレートネック)
・長時間の同一姿勢(デスクワーク・スマホ操作など)
・ストレス・心理的緊張
・頚椎症や神経根症などの器質的疾患
・女性ホルモンの変動
・冷え(寒冷環境)

肩こりの対処法

肩こりの原因がわかったところで続いて、対処法についてご説明します。
簡単です。原因と逆のことを行えば良いのです。

つまり、
✅ 局所の筋緊張緩和

✅ 局所の血流促進

✅ 自律神経の調整
です。

これらを引き起こすのに効果的なのはツボ押しやストレッチ、体操、温熱刺激です。

肩こりに有効なツボ

続いて肩こりに有効とされているツボをご紹介します。

ここで注意いただきたいのは、ツボというのは「肩こり=ここ!」というものではなく、その人その人によって効果的なところは違います。
なので、ご紹介するのはあくまで“候補”なので一つ一つ試してみて、自分がいた気持ち良いと思うところを見つけてみてください。

ツボの押し方のコツ

✅ 圧の強さ:心地よい〜やや痛い程度。強すぎると防御性収縮で逆効果。
✅ 呼吸との合わせ方:押すときに息を吐き、離すときに吸うと、副交感神経が働きやすいです。
✅ 回数と頻度:1日2〜3回、1回につき5〜10秒を数セット。


肩井(けんせい)

部位:僧帽筋のほぼ中央。首のつけ根と肩先を結んだ線の中点。
効果:僧帽筋の過緊張を直接緩和し、肩こり改善の“主役”。
臨床的ポイント:圧痛や硬結を認めることが多く、トリガーポイントと重なることもある。
イメージ:「肩こりのスイッチ」。まず押さえるならここ。
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風池(ふうち)

部位:後頭骨下縁、僧帽筋と胸鎖乳突筋の間のくぼみ。
効果:自律神経調整、頭痛・めまい・眼精疲労にも効果。
臨床的ポイント:交感神経緊張を和らげ、後頭下筋群の過緊張を緩める。
イメージ:「首元のリセットボタン」。血流と神経の通り道を解放する。
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合谷(ごうこく)

部位:手背、第1・第2中手骨間の陥凹部。
効果:全身調整の万能穴。肩こりに加え頭痛やストレス性症状に適応。
臨床的ポイント:上肢の求心性刺激を介して中枢神経系を賦活。
イメージ:「離れたところから肩をゆるめる遠隔スイッチ」。
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列缺(れっけつ)

部位:前腕橈側、手首の親指側から1.5寸上。
効果:呼吸を整え、首肩の緊張を緩和。胸郭が硬いタイプの肩こりに有効。
臨床的ポイント:肺経の絡穴であり、呼吸機能との関連が深い。
イメージ:「肩こりと呼吸の関所」。深呼吸しやすくなることで肩が軽くなる。
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曲池(きょくち)

部位:肘を曲げた時の横じわ外端。
効果:血流改善、上肢疲労の回復。冷え症状の肩こりにも適応。
臨床的ポイント:局所の温熱反応が出やすく、血流促進効果が高い。
イメージ:「血流の蛇口」。詰まりを流す。

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天髎(てんりょう)

部位:肩甲骨上角の上方1寸。肩甲挙筋の付着部に相当。
効果:肩甲挙筋の緊張を和らげる。デスクワーク疲労に特に有効。
臨床的ポイント:しばしば強い圧痛点となる。局所治療に欠かせない。
イメージ:「肩甲骨のストッパーを外す鍵」。

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肩こりに効くストレッチの種類

肩こり改善の基本は「血流促進」「筋緊張の解除」「筋膜の滑走性回復」です。 イメージとしては、渋滞している道路を少しずつ動かして流れを作るようにすること。急に強い運動をするのではなく、軽い刺激を繰り返すことが効果的です。

ここで注意いただきたいのは、ストレッチによって全ての肩こりが完治するわけではありません。肩こりも十人十色、先ほどお伝えしたように様々なタイプがあるからです。よって本来であればトータルで見ないといけません。しかし、セルフケアとしてはとても重要なのでぜひ実践してください。

ストレッチには大きく、静的ストレッチと動的ストレッチの2種類があります。
ご自身の状態によって使い分けてください。👇

静的ストレッチ🧘

肩こりがひどい時や運動後、または就寝前のリラックス目的に効果的です。筋肉をじっくりゆっくり伸ばして一定時間保持することで、筋肉の緊張を軽減し、副交感神経を優位にして心身を落ち着かせ、肩こりの緩和につながります。ただし、静的ストレッチは筋力やパフォーマンスを一時的に低下させることがあるため、運動前に長時間は控えるべきです。

動的ストレッチ🏃

肩こりの予防や運動前のウォーミングアップに動的ストレッチが適しています。体を動かしながら筋肉を伸縮させ、血流を促進して筋肉を温め、可動域を広げます。これにより、肩周りの筋肉の緊張を和らげ、肩こりの悪化を防ぐ効果があります。



静的ストレッチ:僧帽筋ストレッチ

方法:椅子に座り、片手で頭を横に軽く倒す。反対側の肩は下へ引き下げる。
作用機序:僧帽筋上部の過緊張を解放し、筋紡錘の反射抑制を促す。
例え:引っ張りすぎたゴムを少し緩めてやるイメージ。
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静的ストレッチ:肩甲挙筋ストレッチ

方法:頭を斜め前(反対側の膝に向けるイメージ)に倒し、手で軽くサポート。
作用機序:肩甲挙筋の付着部(肩甲骨上角)にかかる牽引を緩め、筋膜の滑走を改善。
例え:肩甲骨のストッパーを外して可動域を取り戻す感じ。

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静的ストレッチ:胸筋ストレッチ

方法:ドア枠に手をかけ、体を前に押し出すようにして胸を開く。
作用機序:短縮した大胸筋を伸ばし、拮抗筋である僧帽筋・菱形筋の過緊張を間接的に和らげる。
例え:前に巻き込まれたカーテンを広げて元の位置に戻す感じ。

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動的ストレッチ:肩回し

方法:肩を大きく前後に回す。特に後ろ回しを意識。
作用機序:肩甲骨の可動域を広げ、僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋の協調運動を回復。
例え:錆びついたドアの蝶番に油を差してスムーズに動かすイメージ。

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動的ストレッチ:肩甲骨はがし運動

方法:両肘を胸の前で合わせる → 外に開く動作を繰り返す。
作用機序:肩甲骨周囲の筋膜滑走を改善し、局所循環を促進。
例え:「背中に貼り付いた肩甲骨を剥がす」感覚。

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日常生活でできる肩こり予防

肩こりと生活習慣は切っても切り離せない関係です。
なので日常的に予防に意識を持つことが大切です。

⭕️ 姿勢改善:画面は目の高さに。骨盤を立てて座る。 → 「建物の土台を安定させる」ように体幹を整える。

⭕️ 休憩と運動:最長でも1時間ごとに立ち上がり、肩・首を動かすことで滞りを防ぎます。


まとめ

肩こりは単なる筋肉の疲労ではなく、筋・筋膜・血流・自律神経などが複雑に関わる全身的な不調の一つです。原因を理解し、局所の筋緊張を緩めて血流を促し、自律神経を整えることが改善の鍵になります。

鍼灸師としては、個々の体質や生活習慣を踏まえたツボ刺激やストレッチの指導が重要です。自分に合ったツボを見つけ、正しいセルフケアを継続することで、肩こりは必ず軽くなります。「知ること」から始めて、「整えること」を習慣にしていきましょう。

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