- 投稿日:2025/10/16
はじめに
「入籍していないけれど、長年一緒に暮らしている」
「結婚という形にこだわらないけれど、家族として生活している」
――そんな「事実婚」や「内縁関係」で暮らすご夫婦が増えています。
ただし、万が一の時に
「入籍していないから遺族年金はもらえない」
と誤解されている方も少なくありません。
実際には、事実婚でも遺族年金は請求できます。
ただし、条件があります。
そして、その条件を「証明」する準備をしていなければ、受け取れない可能性があります。
この記事では、
「事実婚で遺族年金を受け取るために必要な条件・書類・注意点」
をわかりやすく解説します。
⭐️事実婚についての認定基準は↓↓下記サイトをチェックください。
「生計維持・生計同一関係等に係る認定基準」
(平成23年3月23日 年金発0323第1号/改正 平成27年9月30日 年発0930第11号)
👉 厚生労働省公式サイトで見る
「事実婚」とは?

✏️「単に同居しているだけでなく、生計を同一にし、社会通念上夫婦として認められる関係」を指します。
このような関係であれば、遺族年金の対象になる可能性があります。
また、戸籍上すでに他の人と婚姻している(重婚)場合も請求できる場合もあります。
同居していても「住所」に注意
遺族年金は、亡くなった人が生計を維持していた方に対して支給されます。
このため、年金事務所では「生計維持関係」を確認するとき、住民票を大切な判断材料にします。

①住民票が同一世帯 → 問題なし
同居・同世帯であれば、「生計維持関係あり」として扱われます。
②別世帯でも同住所 → 認められる
世帯を分けていても同じく、「生計維持関係あり」として扱われます。
③住所が異なる場合は要注意
認められるにはかなりハードルが上がる。
例えば、
「東京都世田谷区」と「東京都墨田区」など、明確に異なる住所だと、
「別居=生計維持関係がない」と判断される可能性が高くなります。
また、同じ家であっても、
「横浜市〇〇1-1-1 1F」と「横浜市〇〇1-1-1 2F」
のように階数違いで登録していると、別住所扱いになるケースもあります。
そのため、住民票の住所表記を事前に確認しておく必要があります。

生計維持関係を証明するための書類とは?
住民票が別住所の場合、事実婚の認定では、下記のような書類を複数提出して
「事実婚関係」と「生計維持関係」を証明します。


高齢のご夫婦は特に注意
高齢の方は、
❌国民健康保険や後期高齢者医療制度に個別加入
→健康保険上の扶養に入っていない
❌税法上の扶養に入っていない
❌給与所得がなく、扶養手当の対象でない
というケースが多く、①〜⑤の証明が難しくなってきます💦
その場合は別表6の資料を複数用意する必要になってきます。
これらをいくつか組み合わせて、“夫婦として暮らしていた”実態を複数の角度から証明することが必要です。
今後の対策
夫婦同然として長年生活してきたが、「住民票は便宜上移していなかった」・「同じ家に住んでいながら住所に”1F”・”2F”となって別居扱いとなってしまうことを知らなかった」ということがあります。
遺族年金がスムーズに受け取れるように、今の状況を確認することが大切です。
おわりに
年金の世界では、「事実婚」や「内縁関係」も夫婦として認められれば、年金の請求が可能です。
しかし、それは“愛の深さ”ではなく、“生活の証拠”によって判断されます。
一緒に過ごした年月がどれだけ長くても、
客観的な書類や記録でそれを示す準備をしていなければ、
いざという時に「生計維持関係が確認できない」とされ、
遺族年金が受け取れないこともあります。
現場では、
「同じ家で暮らしていたのに、住所が1階と2階で別扱いになっていた」
「健康保険の扶養に入っていなかったから証明が難しくなった」
「証明できるものがなくて、認められなかった」
――そんな声を何度も聞いてきました。
だからこそ、元気な今のうちに“備え”を整えておくことが大切です。
遺族年金は、亡くなった後に「気持ち」で判断されるものではありません。
“今ある生活の形を、記録として残す”ことで、
大切な人の想いと生活をしっかりと守ることができます。
事実婚の方のご相談は、年々増えています。
入籍を選ばない生き方も、立派な夫婦のかたちです。
ただし、制度は“形”より“証拠”を求める世界。
だからこそ、「今できる準備」が、のちの安心に変わります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
