- 投稿日:2025/11/01
- 更新日:2025/11/05
1. はじめに
なぜ「あえて」自主清掃を選ぶのか
民泊を運営する上で、「清掃業務」は外注(業務委託)するのが一般的です。
🔸 清掃に時間や労力を取られ、収益を伸ばすための活動(集客や物件拡大)ができない
🔸 物件が遠方で、物理的に自分で清掃できない
🔸 掃除という苦手な作業は、プロに任せた方が効率的
理論上、これらはすべて正論です。しかし私は、あえて1年半前から「自主清掃」を選び、現在も続けています。
その理由は、
🔹 最初はスモールスタートで、コストを最小限にしたかった
🔹 何より、掃除という作業そのものが好き
🔹 戸建1件であれば、自分の生活リズムの中で十分回せる
というものでした。
この記事は、将来的に清掃を外注する日が来た時のための「引き継ぎマニュアル」を作るつもりで、私が培ってきたノウハウを棚卸しするために書きました。
この記事が、以下のような方々の参考になれば幸いです。
💡 これから民泊を始める方(清掃業務のリアルな内容を知りたい)
💡 民泊清掃業をしてみたい方(ホストがどこを見ているか知りたい)
💡 現在ホストをしている方(清掃の効率化や外注化のヒントが欲しい)

2. 私が清掃を語れる理由
まず、私がどのような経験から清掃を語るのか、簡単に自己紹介させてください。
【 実績1 】 現役ホストとしての経験
• 自身の戸建民泊(1戸)をオープンから1年半、すべて自主清掃中。ゲストのリアルな反応をダイレクトに受けてきました。
【 実績2 】 清掃業のプロとしての経験
• 過去にダ◯キ◯でパートとして清掃業に携わり、プロの清掃技術とスピード感を学びました。
【 実績3 】 整理のプロとしての経験
• 整理収納アドバイザーとして、個人宅のお片付けなど、数件のお仕事を受注した経験があります。
3. 民泊清掃は「家庭の掃除」と何が違うのか?
民泊清掃は、家庭の「掃除」とは全く異なるスキルが求められます。私が考える最大の違いは以下の点です。
違い①:「家庭の掃除」ではなく「プロの商品」としての心配り
見た目に清掃されているのはマストです。それ以上に、ゲストへ向けて「心配り」を感じ取ってもらえる清掃を心掛けています。
トイレットペーパーの三角折り、シャンプーなどの液体ボトルの満タン補充、タオルの折り方統一、食器やボトルの向きを揃える……。
これら全ては、パッと見て「清掃後、まだ誰も使用していない、あなたのために整えられた状態」であることをゲストに感じてもらうための重要な演出です。

違い②:「時間制限(タイムリミット)」がある
チェックアウト(例: 10:00)から次のゲストのチェックイン(例: 15:00)までが同日の場合、清掃にはタイムリミットがあります。
また、仮に当日チェックインが無い場合でも「時間内に終わらせる」という意識は必須です。清掃はこだわり始めると永遠に終わらないからです。
まずは通常のルーティン清掃を時間内に完璧にやり切る。その上で、時間が余ればエアコンフィルター、換気扇などのディープ清掃を追加で行う、という意識が大切です。
違い③:「衛生基準」の厳しさ(0か100か)
家庭の掃除は「80点」でも許されますが、宿泊業では許されません。
⭐️ 髪の毛一本、ほこりを残さない(特にベッドの上、バスルームの排水溝、部屋の隅)
⭐️ 水回りの水滴を拭ききる(水垢は不潔な印象を与えます)
⭐️ 鏡、水道の蛇口周りは光るように磨く(光るべき場所が光っていると、部屋全体が清潔に見えます)
⭐️ 前泊ゲストの匂いをリセットする(換気はもちろん、必要に応じて消臭スプレーも活用します)
⭐️ 冷蔵庫、電子レンジ内は空にし、アルコール消毒で清潔さを保ちます。
違い④:「清掃」+「管理・補充」のハイブリッド業務
家庭と違い、民泊清掃は「掃除して終わり」ではありません。
トイレットペーパー、BOXティッシュ、シャンプー類、タオルなど、現場に行かなければ残量が把握できない備品の管理・補充も同時に行います。清掃を外注する場合は、この「残量報告」をしてもらうシステムが必須です。
また、シャンプーの詰め替えやゴミの分別も、現場でやると時間を取られます。私は詰め替え作業や分別(ペットボトルのラベル剥がしなど)は自宅に持ち帰って行い、現場の作業時間を短縮しています。
4. 清掃しやすい部屋作りのコツ
清掃を効率化する最大の秘訣は、「掃除そのものの技術」よりも「掃除しやすい仕組み(環境)」を作ることです。整理収納アドバイザーの視点から、私が実践しているコツをご紹介します。
• コツ1:そもそもモノを増やさない
リスティングページ(宿の紹介ページ)に載せていない便利グッズなどは、なるべく置かないようにしています。モノが増えれば、それを管理し、清掃する箇所も増えるからです。
• コツ2:備品は「宿泊人数分」きっちりにする
ベッド、リネン、タオル類は、予約人数分以上は出しておきません。余分にあれば、それだけ使われる(=洗濯物が増える)可能性が高まります。
• コツ3:ゲストの私物と混同させない
備品を最小限にすることで、ゲストの忘れ物があった時にすぐに気づくことができます。「これは宿の備品だっけ?」と悩む時間をゼロにします。
• コツ4:「定位置」の指定とラベリング
誰もが使いやすい場所に、分かりやすく配置し、ラベリングを徹底します。私はテプラを使い、「Glass グラスコップ ×8」「Kitchen Paper キッチンペーパー」のように英語と日本語ラベルを併記して貼っています。これにより、ゲストが使った後に元の場所に戻してくれる確率が格段に上がります。

5. 私が実践する「自主清掃」の具体的な流れ
<はじめにお断り>
ここで紹介するのは、あくまで私の宿(85平米、3LDK、風呂・トイレ各1)でのルーティンです。清掃箇所や動線は宿によって全く違うため、ご自身のやり方に合わせて臨機応変に対応してください。
ステップ1:現場での清掃・セッティング(約3〜4時間)
① 鍵の確認: ゲストがキーボックスに鍵を戻しているか確認。
② 忘れ物チェック: 全室を回り、ゲストの忘れ物がないかチェック。
③ 冷蔵庫チェック: 中身をすべて出す。(ナマモノは即時処分とリスティングに記載済み)
④ タオル類洗濯: 回収したタオル類を宿のドラム式洗濯乾燥機で洗濯開始。(1回約6時間かかるため、回せるのは1回のみ)
⑤ シーツ類回収: 全てのシーツ、布団カバー、枕カバーを剥がす。(残りのリネン類は自宅へ持ち帰り)
⑥ 布団片付け: 布団を畳んで倉庫に片付ける。
⑦ トイレ掃除
⑧ お風呂掃除:
自宅ではやらないかもしれませんが、プロの清掃として、洗剤で洗って水で流した後、「全ての水滴を吸水タオルで拭き取り」ます。これを徹底するだけで、水垢やカビの発生を劇的に抑えられ、常に新品のような清潔感を保てます。
⑨ キッチン周り:
使われた食器の確認、片付け、シンクを磨きます。特に、電子レンジ内の清掃は必須です。汁漏れや匂いが残っている可能性が高いため、必ず中を確認し、アルコールなどで拭き上げます。
⑩ ゴミ回収: 全室のゴミを集め、宿の外の指定場所に出す。
⑪ 掃除機: 全室に掃除機をかける。
⑫ リネン準備: 自宅から持ってきた清潔なシーツ類を布団にかける。
(ここからは次のゲストのためのセッティング)
⑬ ベッド(布団)メイキング: 予約人数に合わせて布団をセットする。
⑭ アメニティセット: タオル、歯ブラシなどを人数分セット。
⑮ 最終チェック: フロアワイパーで床拭き。気になる布物(椅子の座面、座布団、枕の上など)をコロコロで清掃。
ステップ2:自宅での管理・補充作業
現場の時間を最短にするため、以下の作業は自宅で行います。
• ゴミの分別: ペットボトルのシール剥がし、キャップ外し、洗われていない瓶・缶の洗浄など。
• 洗濯と補充: 宿で洗い切れなかったシーツ類を洗濯・乾燥・畳む。(コインランドリーも併用)
• 備品の補充: シャンプー、リンス、洗剤などの液体を詰め替えボトルに補充する。
【ポイント】
リネン類や備品は2セット以上用意してください。1セットでは、洗濯乾燥が間に合わなかった場合に即座にセッティングができなくなります。
6. 自主清掃ホストだから出来る「+α」の付加価値
清掃を自分で行う最大のメリットは、ゲストの満足度を直接コントロールできることです。私のルーティンには、清掃作業のついでに、ホストならではの「おもてなし」を加えています。
• ウェルカムギフトの用意: ダイニングテーブルに、ペットボトルの水、川越銘菓、コーヒー・紅茶をセットします。
• ゲスト属性に合わせた対応: お子様連れの場合は、駄菓子セットやベビーチェアを追加で用意します。
• パーソナライズされたご案内:
お客様に合わせたハウスガイドや、手書きのウェルカムメッセージをテーブルにセットします。(ハウスガイドは日本語、英語、中国語(繁体/簡体)、韓国語の5ヶ国語に対応した冊子を作成し、常備しています)

7. 最後に(まとめ)
本日は、私が1年半実践してきた自主清掃のノウハウについてご紹介しました。
もちろん、事業拡大を目指すなら清掃の外注化は必須です。しかし、スモールスタートで民泊を始める方にとって、自主清掃はコストを抑え、ゲストの反応を肌で感じる貴重な経験になります。
💌 ホストの方へ: まずは自分で清掃を経験することで、将来外注する際も「どこを重点的にやってほしいか」を的確に指示できる「強いホスト」になれます。
💌 清掃業を目指す方へ: ホストがこれほど多くの点をチェックしていることを知り、プロとしての仕事の参考にしていただければ幸いです。
この記事が、皆さんの民泊運営のヒントになれば嬉しいです。
