- 投稿日:2025/11/05
- 更新日:2026/02/07
金沢を選ぶ外国人観光客の「動機」が変わっている
金沢と富山は、近年「世界で行くべき街100」に選ばれ、世界中から注目を集めています。
北陸新幹線の開通以降、東京や大阪からのアクセスが格段に良くなり、今では毎日のように多くのインバウンド観光客が訪れる街になりました。
実際、先日母と一緒に母の実家に帰省して、金沢に戻ってきたときのこと。
新幹線ホームで周りを見渡すと、私と母以外はほとんどが外国人旅行者。
さらに、東茶屋街を犬の散歩で歩いていると、平日でも多くのインバウンド観光客が写真を撮り、町家の並ぶ路地を楽しんでいる姿を目にします。
それほどまでに、金沢は「世界の旅人にとって特別な街」になっています。
北陸新幹線の利便性とインバウンド需要の高まりを考えると、
今こそ、民泊を始める絶好のタイミングと言えるでしょう。
ホテルもいいけれど、民泊には“自由”という魅力がある
ホテルの快適さや安心感はもちろん大きな魅力ですが、民泊には**「暮らすように滞在できる自由さ」があります。
その代表がキッチンの存在です。
キッチンがあることで、宗教や食文化の関係で食べられるものが限られている旅行者でも、自分で料理をすることができます。
イスラム教徒(ムスリム)やベジタリアン、アレルギーを持つ旅行者にとって、「自分で調理できる宿」は大きな安心材料です。
日本人にとっては意外かもしれませんが、
食事制限の内容は、想像以上に多様で繊細です。
肉や魚を一切口にしないベジタリアンだけでなく、
調味料に動物性エキスが含まれていないかを気にする人、
宗教上の理由で「調理器具が他の肉料理と共用かどうか」を確認する人もいます。
また、乳製品や卵を避けるヴィーガン、グルテン不耐症、ナッツアレルギーなど、
“安全に食べられるかどうか”はその人の健康や信仰に直結します。
◆「寿司を食べたいけど、生魚は嫌!」というギャップ
コンシェルジュ時代、実際にこんなリクエストを受けたことがありました。
ある外国人のお客様が、「お寿司を食べたい」とおっしゃったのでおすすめ店を案内したところ、
そのあとで「でも、生魚は食べられないんです」と言われ、思わず困ってしまいました。
日本人の感覚では“寿司=生魚”が当たり前ですが、
海外では“cooked sushi(調理済みの寿司)”や“vegetable sushi”が一般的な国も多いのです。
そのため、「寿司を食べたいけど生魚は苦手」というケースは意外とよくあります。
こうした食文化の違いを理解しておくことは、
民泊オーナーにとっても大切な視点です。
宿泊者が「自分の食のスタイルで安心して過ごせる」環境を整えることこそ、
“選ばれる宿”になる第一歩です。
◆エレベーターを使いたくないお客様もいる
また、理由は詳しくわからなかったのですが、
宗教上の理由で「ホテルのエレベーターを使いたくない」というお客様もいました。
ただ、一般的なホテルではお客様用の階段がほとんど設けられていません。
その点、エレベーターがない民泊は、こうしたお客様にとって理想的な選択肢です。
宗教・文化・ライフスタイルの多様性が広がる今、
「なぜそうするのか」を理解できなくても、
“そういう人もいる”という前提で柔軟に受け入れられる姿勢が大切です。
だからこそ、キッチン付きや階段利用など、柔軟な設備を持つ民泊は、
「自由に安心して過ごせる宿」=多様な文化に対応できる滞在先として高く評価されます。
「自分らしく過ごせる空間」を提供することが、これからの時代の“おもてなし”です。
外国人が本当に求めているものとは?
私がホテルコンシェルジュとして勤務していた頃、外国人ゲストからよく聞かれたのは、
「地元の人が行くお寿司屋さんは?」「夜遅くでも入れる銭湯ある?」といった質問でした。
つまり、彼らが求めているのは「非日常の豪華さ」ではなく、**“地元の日常に触れる体験”**です。
金沢では、こうしたニーズが特に顕著です。
英語で理解できるチェックイン案内
清潔でシンプルな水回り(特に浴室・トイレ)
ベッドタイプの寝具(布団は好みが分かれる)
周辺にある「現地の人が行く飲食店」の情報
このように、“ハード面よりも情報面での安心感”を重視する傾向が強いのが特徴です。
◆思い出に残る「金箔ピンセット事件」
コンシェルジュ時代、印象に残っているリクエストがあります。
ある日、外国人のお客様が「金箔専用のピンセットを買いたい」とおっしゃいました。
正直、私自身もそんな専門的な道具を買ったことがなく、どこで手に入るのか見当もつきませんでした。
それでも何とかお応えしようと、職人街の金箔店や道具屋に電話をかけまわり、ようやく取り扱いのあるお店を見つけたときの安堵感は今でも忘れられません。
この経験を通して感じたのは、
外国人旅行者は“体験した文化を自分の暮らしに持ち帰りたい”という思いが非常に強いということ。
単なるお土産ではなく、「自分が触れた文化の証」を求めているのです。
金沢の民泊も、こうした“文化と暮らしの橋渡し”の役割を果たせる場所になる可能性があります。
金沢の民泊が持つ強みと、意外な落とし穴
金沢の民泊は、全国的に見てもポテンシャルが高い地域です。
徒歩圏内で観光が完結し、町家・古民家など「和の雰囲気」が自然に出せるからです。
ただし、実際に宿泊者レビューを見てみると、満足度を下げるポイントは共通しています。
チェックイン案内が英語で理解できない
ゴミ分別・鍵返却・エアコン操作がわかりづらい
近隣住民への配慮が説明されていない
これらは「文化の違い」ではなく、説明不足から生じるトラブルです。
特に金沢は静かな住宅街に宿が多いため、“暮らしのルール”をきちんと伝えることが信頼につながります。
「観光」だけでなく、 “金沢でしかできない体験”を求めて
今の金沢インバウンドは、ただ観光地を巡るだけでなく、**「ここでしかできない体験」**を求めています。
世界中を旅しても、金沢でしか体験できないものがある。
その代表が、やはり金箔貼り体験です。
金沢は日本の金箔生産の約99%を占める街であり、
金箔工芸は「見る」だけでなく「自分で体験できる文化」として、世界中の旅行者に人気があります。
また、忍者寺(妙立寺)や和菓子づくり、そして近江町市場での買い物体験も人気です。
観光客の多くが、市場で新鮮な魚介や野菜を自分で選び、
それを宿のキッチンで調理して“自分だけの金沢の味”を楽しんでいます。
さらに、観光客の行動範囲も広がっています。
特に富裕層の旅行者は、タクシーでどこまでも行くという印象です。
金沢を拠点に、白川郷や加賀温泉郷まで日帰りで訪れるケースも珍しくありません。
◆敦賀延伸で変わった“大阪・京都方面”への案内の難しさ
最近では、北陸新幹線が敦賀まで延伸したことで、
大阪・京都方面へのアクセス案内に苦労する場面も増えました。
金沢や富山を観光した後、「次は大阪へ行きたい」「京都を見てみたい」というお客様は多いのですが、
延伸に伴ってサンダーバード号やしらさぎ号が廃止され、
途中の敦賀で乗り換えが必要になったことで、行程説明が格段に難しくなったのです。
多くの旅行者が「できれば乗り換えたくない」「荷物が多いので一本で行きたい」と話されます。
それだけに、今は移動ルートの案内や代替手段の提案も“ホスピタリティの一部”になっています。
たとえば、京都までのスムーズな接続時間を調べてあげたり、
敦賀駅での乗り換え方法を英語で写真付きで案内するだけでも、旅行者の安心感は大きく変わります。
◆“荷物が多い旅人”への気配りも忘れずに
特にインバウンド観光客は、スーツケースを2〜3個持って移動する人も多いです。
旅の途中で購入したお土産や、日本各地での滞在日数の長さが影響しています。
そのため、次の宿泊先に宅急便で荷物を送るケースが非常に多く見られます。
日本では当たり前の「翌日配達」も、海外の方にとっては驚きのサービスです。
もし民泊オーナーが、
伝票の書き方をサポートする
英語での送り状サンプルを置いておく
近くのコンビニや宅配受付所の場所を案内できる
といった配慮をするだけで、ゲストの満足度は一段と上がります。
小さなサポートでも、「日本の民泊は本当に便利で親切だった」という印象が残ります。
こうした気配りこそ、リピーターや口コミにつながる大きなポイントです。
“地震に敏感な旅人”への対応もホスピタリティの一部
能登方面は、2024年の地震以降、訪れる旅行者が一時的に減少しています。
その代わりに、地震に慣れていない海外からの観光客は、揺れや緊急情報にとても敏感になっています。
実際、宿泊中に震度3程度の小さな地震が起きただけでも、驚いて部屋から飛び出してきたり、ホストにすぐ連絡してくるケースがあります。
日本人からすると「このくらいなら大丈夫」と感じる揺れでも、
彼らにとっては初めての経験で、強い不安を感じる瞬間なのです。
だからこそ、何よりも大切なのは安心させること。
「大丈夫ですよ。日本ではこのくらいの揺れはよくあります」と、
落ち着いた声で伝えるだけでも、ゲストは安心します。
言葉が通じない場合でも、笑顔やジェスチャーで「安全です」と示すことができます。
さらに、もう一つ大切なのが正確な情報を伝えることです。
今でも海外では、「金沢も被災地」だと誤解している旅行者が少なくありません。
しかし実際には、金沢市内は通常通り営業しており、観光も宿泊も安全に楽しめます。
民泊オーナーや観光事業者は、SNSや宿泊サイトで
「金沢は通常運転」「観光できます」というメッセージを発信しておくことが信頼につながります。
特に海外の旅行者にとっては、“現地の声”が何よりの安心材料になるのです。
◆「何が起こるかわからない」に備える
また、どれほど注意していても、人間、何が起こるかわかりません。
旅先での体調不良やケガ、持病の悪化など、突然のトラブルが起きることもあります。
そんなときに大切なのは、慌てずにすぐ適切な医療につなげられること。
そのためにも、民泊オーナーは
「英語が通じるドクター(病院)」のリストを常に把握しておくことをおすすめします。
金沢の場合は、石川県国際交流協会(IRIS)や金沢市の観光案内サイトなどで英語対応可能な医療機関が紹介されています。
もし宿泊者が体調を崩した場合、
「すぐにこの病院に行けば大丈夫」と案内できるだけで、ゲストの不安は大きく和らぎます。
こうした小さな備えが、“信頼されるホスト”になるための最後の一手です。
まとめ:あなたの地域にも、あなたにしか伝えられない魅力がある
ここで紹介したのは金沢の事例ですが、
本質的なポイントは、「地域の個性を活かして、自分の言葉で案内できるかどうか」です。
どの街にも、その土地ならではの文化や人のあたたかさ、食の楽しみがあります。
それを旅人に伝えることができれば、
民泊は単なる宿泊施設ではなく、“地域の魅力を伝える小さな窓口”になります。
ぜひ、ご自身の地域でも「ここでしかできない体験」を見つけ、
その土地らしい案内やおもてなしを届けてみてください。
それが、地域の魅力を世界へ広げる第一歩になります。