- 投稿日:2025/11/09
こんにちは。元大手大学受験予備校職員の”たけいし”といいます!
私はこれまで大学受験予備校で多くの受験生、保護者と関わってきました。
子どもが真剣に勉強しているのは嬉しいけれど、声をかけるのもためらうような雰囲気になることはありませんか。
特に受験本番が近づくと、家の中の空気がどこか張り詰めてきます。
「このままピリピリした空気で本番を迎えて大丈夫だろうか…」
「何か声をかけた方がいいのか、それとも黙っていた方がいいのか…」
そんな迷いや不安を抱く保護者の方は本当に多いです。
この記事では、受験期の家庭の空気を穏やかに保ち、
子どもが安心して力を発揮できるようにするために、2つの実例と3つのポイントを紹介します。
■ なぜ受験期は「ピリピリ」してしまうのか?
受験期の家庭が緊張感に包まれるのは、
親も子も、それぞれにプレッシャーを抱えているからです。
●子どもは「失敗したくない」「親をがっかりさせたくない」
●親は「今が正念場」「サポートを間違えたくない」
この、お互いの「がんばりたい気持ち」がすれ違うと、
たとえ言葉がなくても、沈黙や表情に緊張が生まれます。
特に真面目な子ほど、「親に迷惑をかけてはいけない」と考えがち。
だからこそ、「励ましのつもりの言葉」や「あれこれ手をかけること」が、逆にプレッシャーになってしまうことがあります。
■ 実例①:良かれと思ったサポートなのに険悪なムードに…
ある家庭では、親が子どもに「勉強は順調?」「塾の講座増やす?」「期待してるから頑張ってね」といった声かけをしていました。
けれど子どもは、それを「監視されている」「信頼してくれていない」「自分のペースを考えてくれていない」と受け取り、プレッシャーを避けるために会話が減少。
お互いに気を遣いすぎて、家の中が静まり返ってしまいました。
予備校や学校でも、このようなケースはとても多く見られます。
原因は「声かけ・サポートの内容が、子どもの希望を確かめず、一方的な押し付けになっている」ことです。
すでに十分頑張っているところに「もっと、もっと」と手をかけようとしても、子どもからするとそれは「過剰な干渉」に映ります。
■ 実例②:「ピリピリ」を乗り越えた家庭の話
ある生徒の母親は、受験期に「家の空気が重い」と感じました。
そこで、「受験の話は本当に必要な時にだけ、時間を決めて行う」と決め、
それ以外に子どもと会話する時は、日常会話や雑談をする程度にしたそうです。
初めは不安もあったが、子どもが頑張っていること自体を信じて、母親はあくまで「いつも通りの日常会話」を心がけた、と言います。
本番直前、子どもから「なんか家が落ち着くから自分のことに集中できた」と言われたとき、涙が出そうになったと話していました。
結果、その生徒は慌てることなく本番でも落ち着いて力を出し切り、第一志望に合格。
母親は「どんなサポートが正解かは分からなかったけど、余計なことはしないようにしていました」と語っていました。
■ 家庭の空気を穏やかに保つ3つのポイント
① 結果より過程にフォーカスした声かけを行う
「次の模試でA判定を取ろうね」「○○大学に合格しようね」よりも、
「ここまでよく頑張ってきたね」「集中力がついてきたね」といった、
努力の過程を認める言葉のほうが子どもは安心します。
子どもが求めているのは“結果に対する評価”よりも“過去の努力・今の姿への共感”です。
受験に限らず、社会では「結果」が重視されます。それは、社会においては他人の過程にまでいちいち目を向ける余裕が無いからです。
そんな中で、過程をずっと見てきて、それを認めることができるのは、親だけです。
💬 ヒント:「〜できたね」「〜してるね」と“過去・現在”を認める言葉はプレッシャーになりにくい。自信になる。 「〜しようね」「〜しなきゃね」と“未来形”になると、重く響きやすい。
② 「受験の話をしない時間」を意識的につくる
受験が近づくと、家の中の話題が“受験一色”になりがちです。
でも、それでは息が詰まってしまいます。
逆に、子どもから何か言ってくるまで、家庭では「受験の話はしない」くらいでもちょうどいいかもしれません。
進路の話など、本当に必要な時には「○○について私も準備しておきたいから、△分だけ一緒に話そう?」と前もって子どもに伝えておくことで、余計なプレッシャーを与えずに済みます。
💬ヒント:子どもにとって、「がんばる時間」と「ほっとできる時間」は、どちらも受験に必要な時間。 外では「がんばる時間」になっていることがほとんどなので、家では「ほっとできる時間」にしてあげましょう。
③ 親自身が「自分自身を整える」
家の雰囲気は、親の表情や声のトーンで大きく変わります。
親が焦っていると、子どもは敏感に察知します。
「静かにしてあげなきゃ」「子どものタメになることをやってあげなきゃ」と構えるよりも、
“普段どおり”を保つことが最大のサポートです。
たとえば——
●いつも通りの夕食を出す
●日常会話を欠かさない
●親自身が子どもの受験のことで頑張りすぎず、家庭や仕事など他のことでも充実して過ごす
そうした“平常運転”が、子どもにとっての安心につながります。
■ 最後に:「付け加える」より、「子どもを信じて余計なものを減らす」
子どもが「自分で考えて頑張っている」所に、余計な手をかける必要はありません。
子どもから助けを求めてきた時に、しっかり話を聞いてあげられる心の準備ができていれば十分です。
受験期の家庭に必要なのは、「完璧なサポート」ではなく、安心できる空気です。
親が落ち着いていれば、それだけで子どもは「大丈夫」と感じられます。
子どもの受験は親にとっても一大イベント。焦る気持ちは自然なことです。
しかし、親がほんの少し肩の力を抜くだけで、家庭全体の空気はやわらぎます。
家の中は、子どもが戦う“戦場”ではなく、“休める場所”であってほしいと思います。
「普段どおりの笑顔」「短いねぎらいの一言」——
それだけで十分、子どもにとっての最大の支えになるのです。
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