- 投稿日:2025/11/18
- 更新日:2025/11/18
こんにちは!
前回、
「『あなたは一流の◯◯です』はもう古い?
AI時代の『指示しないプロンプト』という新常識」
という記事を書いたところ、非常に多くの反響をいただきました。
https://library.libecity.com/articles/01KA3Z1HRYVA6RC8NY6E67W3ET
「AIの役割を決めつけない方が、いいアイデアが出るようになった!」
「モヤモヤをそのまま投げたら、問題が整理された!」
といった嬉しい感想をいただく一方で、こんな疑問の声も寄せられました。
「指示しないプロンプトが良いのはわかった。
でも、別の専門家は
『プロンプトは具体的であればあるほど良い』
と言っている。結局、どっちが正しいんですか?」
この疑問、すごくよく分かります。
実は、この一見「矛盾」に見える疑問は、
私たちがAIを使うときの「フェーズ(段階)」を
意識していないことから生まれています。
AIは、
まだ何をしたいか固まっていない「発散フェーズ」
目的がはっきりしている「収束フェーズ」
この2つの場面で、求められるプロンプトが「まったく変わる」のです。
今回の記事では、
この「曖昧プロンプト」と「具体プロンプト」の使い分けを、
誰でも実践できるように、わかりやすく整理していきます!
■2. まず結論:プロンプトは「発散=曖昧」「収束=具体」が正解
いきなり結論からいきましょう。
AIは万能の魔法の箱ではなく、
フェーズごとに最適な「対話方法」が異なるツールです。
💡 発散フェーズ(アイデア出し・企画・悩み相談)
「曖昧(あいまい)プロンプト」が最も効果的です。
🚀 収束フェーズ(資料作成・整理・調査・アウトプット量産)
「具体(ぐたい)プロンプト」が圧倒的に強くなります。
このたった2つの違いを理解するだけで、AIの
「トンチンカンな回答」や「期待外れな返答」のほとんどを回避できます。
では、それぞれ具体的にどういうことか、見ていきましょう。
■3. 発散フェーズ:まだ方向性が曖昧なときは「指示しない」ほうがいい

まず「発散フェーズ」とは、あなたの頭の中がこんな状態のときです。
💡新しい企画のアイデアを、とにかく広げたい
💡何から手をつければいいか、まだ曖昧
💡プロジェクトの前提条件や、隠れた論点を探りたい
💡そもそも「何が本当の課題なのか」がまだ見えていない
この段階で、AIに対して
「あなたは一流のマーケターです。以下の手順でSWOT分析をしてください」のように「具体的な役割や手順を固めてしまうと、AIの思考がその枠に縛られ、あなたの発想も狭まってしまう」のです。
このフェーズでAIの力を最大限に引き出すプロンプトは、驚くほどシンプルです。
・考えていることの「断片」をとにかく並べる
・自分が置かれている「状況」を説明する
・抱えている「悩み」や「モヤモヤ」をそのまま書く
そして、最後にこう添えるだけで十分です。
「……という状況です。ここから一緒に考えてください。」
「……で悩んでいます。どういう論点がありそうですか?」
こうすると、AIはあなたに「指示」されるのではなく、
「問題設定の整理」という最も知的なモードに入ります。
結果として、あなた一人では思いつかなかったような、
幅広い視点や選択肢を提示してくれるのです。
まさに、これが前回記事で
「『あなたは一流の◯◯です』プロンプトが古い」と書いた理由です。
あれは、この「発散フェーズ」において、という意味です。
例えば「老後の不安」を相談したいとき、
「あなたは一流のファイナンシャルプランナーです」と指示した瞬間、
AIの思考は「お金(年金・貯蓄・投資)」に限定されてしまいます。
でも、本当の不安は
「健康」や「孤独(コミュニティ)」かもしれませんよね?
曖昧に「老後がなんとなく不安で…」と投げるほうが、
AIは「お金ですか? 健康ですか? 人間関係ですか?」と、
「あなた自身も気づいていなかった論点」を整理してくれるのです。
記事の構成案作りなども、まさにこの発散フェーズ。
曖昧に投げるほうが、強いアイデアが出てきます。
■4. 収束フェーズ:ゴールが固まったら「欲望の解像度」を上げる
では、逆に「具体プロンプト」はいつ使うのでしょうか?
それが、この「収束フェーズ」です。
「収束フェーズ」とは、あなたの頭の中がこんな状態のときです。
・「何をするか」は、はっきり決まっている
・アイデアを具体的な形に落とし込みたい(比較・整理・量産・具体化)
・「どんな形式で欲しいか」が明確に決まっている(表形式、メール文面、プレゼン資料など)
この段階では、発散フェーズとは真逆。
曖昧な指示では、AIは逆に弱くなります。
「何をすればいいか分からない」からです。
このフェーズでカギとなるのは、よく言われる
「欲望の解像度を上げる」アプローチです。
(AI界隈で著名な深津さん・GOの三浦さんが対談の中で話されていた内容です。)
まるで実在する部下に指示するように、
情景が浮かぶレベルまで具体化します。
・「誰に」見せるものか?
・「どう見せたい」のか?
・「どんな形式」で欲しいか?
・「どのくらいの粒度(細かさ)」で必要か?
・「どんなシーンで」使うものか?
これらをすべて言語化して、AIに叩き込むのです。
以前、X(旧Twitter)で話題になった、
以下のようなプロンプトがあります。
「あなたは、世界中のビジネス書や自己啓発書を読み漁り、
実践的なノウハウに精通したキャリアコンサルタントです。
社会人1年目の新人が、日々の業務報告書やメール作成、議事録作成、
タスク管理などで、隣の席の先輩から『お前、AI超えてんじゃね?』
と驚かれるほど仕事が早くなるような、世界中のプロンプトテクニック30選を考えてください。 以下の形式で、表形式で出力してください。
形式: No | カテゴリ(例:メール) | 英語プロンプト | 日本語訳 | 具体的な使用事例 | 使うときのコツ」
これは、「典型的な『収束プロンプト』」です。
・ゴール: 新人が先輩に驚かれるレベルのプロンプト30選
・形式: 厳密な表形式(No, カテゴリ, 英語, 日本語訳…)
・背景: 日々の業務(メール, 議事録, タスク管理)で使いたい
ここまでゴールがガチガチに固まっている作業では、
このレベルまで具体化すると、AIは期待を120%超えるアウトプットを
「実務マシン」として生み出します。
■5. 両者が「矛盾しない」ことを示す(最も重要な部分)
「曖昧プロンプトと具体プロンプト、どっちが正しいの?」
この議論は、「金槌とドライバー、どっちが正しい工具ですか?」
と聞いているのと同じで、ナンセンスなんです。
なぜなら、「そもそも使う場面が違う」から。
🤔 発散フェーズ(アイデア出し)で具体プロンプトを使う
→ 発想が狭まり、AIのポテンシャルが死ぬ
😫 収束フェーズ(資料作成)で曖昧プロンプトを使う
→ 期待外れのアウトプットが返ってきて、イライラする
この「今、自分はどっちのフェーズにいるんだ?」を自覚し、
プロンプトを切り替える意識。
これこそが、AIとの対話の質を一気に変えるカギなのです。
■6. 今日から使える「フェーズ判定の簡単な見分け方」
「理屈はわかったけど、どう見分ければいい?」という方のために、
簡単な判定方法を用意しました。
・「そもそも何をしたいか、まだ自分でも曖昧だ…」
・「AかBか迷ってるけど、Cの選択肢も欲しいな…」
・「とりあえず誰かに『相談』するような心理状態だ」
・「自分で考えたいけど、頭の中がゴチャゴチャで整理できない!」
→ 正解:曖昧に投げて「一緒に考えて」と頼む
・「欲しいアウトプットの『完成形』が明確にイメージできている」
・「形式・粒度・対象者がガッチリ固まっている」
・「この仕事の『仕上げ』や『清書』に入りたい!」
→ 正解:欲望の解像度を上げた「高解像度の具体プロンプト」を投げる
■7. まとめ:AI時代は「指示の量」ではなく「フェーズの理解」で決まる
前回記事と今回の記事で、
AIプロンプトの「新常識」が見えてきたかと思います。
・曖昧プロンプトが悪いわけでも、
・具体プロンプトが絶対的に正しいわけでもありません。
重要なのは、「あなたが今、AIにどのフェーズの作業を投げているか」を
理解すること、ただそれだけです。
・AIは、発散ではあなたの思考を広げる「壁打ち相手・相談相手」になり、
・AIは、収束ではあなたの指示を忠実に実行する「超優秀な実務マシン」になります。
これからのAI時代、プロンプトの「量」や「テクニック」を追いかける前に、まずはこの「フェーズの使い分け」を意識してみてください。
それこそが、AI時代のプロンプト設計における、
「本当の新常識」なのです!