- 投稿日:2025/11/25
【第35話】FIREについて研究してみた
~海外論文からわかった「FIREの本質」とは?~
🔶 海外におけるFIRE研究の系譜
リベシティのみなさん、こんにちは!社会人大学院生のOGAです。
大学院で「FIRE(Financial Independence Retire Early)」をテーマに修士論文を書いた経験を、みなさんにも共有したいと思います。
今回は、私が修士論文で整理した 海外のFIRE研究をいくつか紹介します。
日本では「FIRE=投資テクニック」という印象が強いかもしれません。
しかし海外の研究を辿っていくと、FIREは “生き方そのものを問い直す思想” として語られていることが分かってきました。
読み終えた頃には、きっとFIREの見え方が変わると思います。
1. FIREの原点は「人生を取り戻す」という思想だった
FIREの始まりは、1992年に出版された『Your Money or Your Life』にさかのぼります。
この本で伝えられているメッセージは──
「お金のために時間を売る生き方を見直し、“本当に大切な人生”を取り戻そう」です。
この考え方が、インターネットやSNSを通じて世界中の若い世代へ広がり、やがてFIREムーブメント と呼ばれる流れをつくりました。
ただし、この書籍で紹介されている「9ステップ・プログラム」は、主に支出管理や倹約などの実践ノウハウが中心であり、経済的自由を得た後の生き方そのものには深く踏み込んでいない印象です。
2. FIREの経済的基盤を支える「4%ルール」
次に、FIREを支える「数字」の部分です。ここを抜きにFIREは語れません。「年間支出を資産の4%以内に抑えれば、30年以上資産を維持できる可能性が高い」という「4%ルール」は、世界中のFIRE実践者がライフプランを設計する際の"目安"となっています。
・『Determining Withdrawal Rates Using Historical Data』
歴史データから、安全に資産を取り崩す率を検討。
・『Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable』
「トリニティスタディ」の4%ルールの成功率を実証的に示した研究。
・『The 4% Rule—At What Price?』
4%ルールのリスクと費用を再分析し、条件を再検討した研究。
FIREが成立する背景には、「安心して暮らせる持続可能な設計」 があるからこそ。これらは金融領域の基礎文献として、現在も世界中で研究がされています。
3. FIREは「新しい働き方」を問い直す運動
海外論文の中で特に印象的だったのが、「FIRE=働かない」ではなく、「働き方を選べるようになる運動」として描かれている点です。
たとえば──
・『Goodbye to the 9-to-5』
この研究は、若い世代のFIREムーブメントについて取り上げています。
ここでは、FIREが「定年退職の前倒し」ではなく「時間の主導権を取り戻すための選択」として捉えられていました。
若い世代がFIREに惹かれる理由として、研究では次のような点が示されています。
・組織に縛られず、意味のある働き方を選びたい
・心がすり減るフルタイム勤務から距離を置きたい
・生きる上での優先順位を「家族、健康、余暇」へとシフトさせたい
著者が描くFIRE像は、「辞めることではなく選べること」に価値が置かれています。そしてこの価値観は、ミレニアル世代・Z世代の働き方の変化を象徴する研究だと感じました。
4. FIREは“第二キャリア”を生む土台
FIRE達成者がその後、働き方にどう向かい合うのかを扱った研究が、
『Early Retirees as the Next Generation of Entrepreneurs』です。
この研究は、早期退職した人が、起業という形で「第二の働き方」を選択することに注目しています。
主な示唆としては――
・FIRE後は会社員時代にできなかった働き方を選ぶ人が多い
・金銭目的よりも「自律性」「創造性」「社会貢献」を重視する
・FIREは「働かないため」ではなく「自由に働くため」の手段である
つまり、FIREは「労働からの撤退」ではなく、「新しい働き方の創造」でもあるという視点です。
🔶 まとめ
私の調べた限り、FIREそのものを扱う日本語の学術論文は見当たりませんでした。そのため、海外の文献を中心にレビューを行い、そこから日本の文脈との違いを考える必要がありました。
海外のFIRE研究は主に西洋の文化・背景が中心になりますが、日本には日本の事情があります。
・終身雇用・年功序列
・社会保障制度
・仕事に対する文化的価値観
・貯蓄志向の強さ
これらの点で、海外のFIRE研究をそのまま当てはめることはできません。
だからこそ、日本でFIREを考える際は――
・日本社会における「経済的自立」の意味
・FIRE後の「生きがい」「役割」「社会参加」
・地域・コミュニティへの関わり方
を独自に捉え直すことで、新たな知見をえられるんじゃないかな…と考えたのです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
次回も、研究で得た知見をわかりやすく紹介していきます!