- 投稿日:2025/11/28
子どもを乗せて雨の日に走ると、急ブレーキで本当に止まれるか不安になることはありませんか。
対人対物保険やドラレコにはお金をかけたのに、タイヤだけ「一番安い物」で済ませてしまった覚えはありませんか。
車は生活必需品なのに、安全にどこまでお金をかけるべきか迷っていませんか。
多くの家庭にとって、安全対策と聞いてまず思い浮かぶのは
自動車保険や安全装備のグレードアップです。
一方で、路面と車をつなぐタイヤは「車検のついで」や「安ければよい」という基準で決まりがちです。
しかし実際には、事故そのものを減らす力が大きいのは保険ではなくタイヤです。
この記事では、タイヤを「タイヤ保険」という安全投資として捉え直して解説します。
私の周りでタイヤは
何でもいい
走れているから大丈夫
空気が抜けているけど走れているから大丈夫
溝が残っていないけど使い続けている
とタイヤに意識をしていない方が多くいたので、この記事を書きました。
何かの参考になれば幸いです。
なぜタイヤは「安全投資」としてコスパがよいのか
車と道路が実際に触れている部分は、タイヤの接地面だけです。
その大きさは、名刺4枚分ほどしかありません。
この小さな面で、車は走行、制動、旋回のすべてを支えている状態です。
ブレーキ装置や自動ブレーキは高性能になりました。
しかし最終的には、タイヤが路面をつかめるかどうかで止まれるかどうかが決まります。
どれだけ高価な装備をつけても、タイヤのグリップを超える力は出せないという前提があります。
自動車保険は「事故のあと」でお金を守る仕組みです。
一方でタイヤは「事故そのもの」を減らす装置です。
しかもタイヤのグレード差による価格差は、4本で数千〜1万円ほどになる場合が多いです。
4年使うと考えると、月数百円の差で安全マージンを購入している計算になります。
一方で、軽い追突事故でも修理費と等級ダウンを合わせると、10万円以上の出費になることがあります。
月数百円の節約と、1回の事故で飛ぶ10万円超を比べると、タイヤへの投資はかなりコスパの高い安全投資と言い切れます。
タイヤのグレード差でブレーキ距離はどれくらい変わるか
イメージをつかみやすくするため、ざっくりした数字で考えてみます。
条件は「コンパクトカー」「街中」「フルブレーキ」とします。
乾いた路面でのイメージ
時速40kmでの急ブレーキを想像します。
中級グレードのタイヤ:約14mで停止します。
低価格タイヤ:約16mで停止します。
時速60kmに速度を上げて考えます。
中級グレード:約30m
低価格タイヤ:約34m
差は数メートルですが、一般的な乗用車1台の長さは約4〜5mです。
つまり、中級タイヤならギリギリ止まれている場面で低価格タイヤだと追突しているケースが出てきます。
雨の日は差がさらに大きくなる
雨の日は、路面とタイヤの間に水が入り込みます。
排水性能やゴムの質によって、止まれる距離が大きく変化します。
時速60km、雨、急ブレーキという条件を想定します。
中級タイヤ:約38mで停止します。
低価格タイヤ:約45mで停止します。
差は約7mで、車1.5台分ほどになります。
同じタイミングでブレーキを踏んでいるのに、タイヤの違いだけで「止まる」か「当たる」かが分かれます。
特に、子どもの飛び出しや急な割り込みは雨の日に起こりやすいです。
雨の日に強いタイヤを選ぶことは、非常に現実的リスク対策と言えます。
「安いタイヤを長く使う」と「そこそこのタイヤを早めに替える」をお金で比べる
家計のことを考えると、タイヤはできるだけ安く長く使いたくなります。
ここでは、2つのパターンをお金の面から比較します。
前提条件は「年8,000km」「軽〜コンパクトカー」とします。
パターンA:安いタイヤ+長く使用する場合
1本5,000円のタイヤ
4本で20,000円
6年使用
この場合、1年あたり約3,300円になります。
月あたり約280円です。
数字だけ見ると、とても安く感じられます。
しかし6年目のタイヤは、ゴムが硬くなり、雨の日の性能が大きく落ちている可能性があります。
溝が残っていても、新品時と同じ性能とは言えなくなります。
パターンB:中級タイヤ+早め交換の場合
1本8,000円のタイヤ
4本で32,000円
4年使用
1年あたり8,000円になり、月あたり約670円です。
パターンAとの差額は月約390円です。
コンビニコーヒー2杯分ほどの差額です。
この差額で、
雨の日のグリップの余裕
急ブレーキ時の停止距離の短縮
劣化が進む前に交換できる安心感
を購入していると考えられます。
5年分の節約と、事故1回分の自己負担
パターンAとBの差は、1年で約4,700円です。
5年で約23,500円の差になります。
一方で、軽い追突事故でも
・修理代の自己負担分
・等級ダウンによる保険料アップ
を合わせると、10万円以上の出費になることは珍しくありません。
5年で浮く2万円台と、事故1回で飛ぶ10万円超を並べてみると、
「一番安いタイヤ」が本当にお得かどうかが見えてきます。
家族を守るタイヤ選びで意識したいポイント
ここからは、タイヤ技術者なら家族の車でどう考えるかという視点でまとめます。
年数が古いタイヤは、溝が残っていても注意する
タイヤ側面には「製造年週」を示す4桁の数字が刻まれています。
たとえば「2319」であれば、2019年の23週目製造です。
製造から5〜6年を超えたタイヤは、溝が残っていても性能低下を疑った方がよいです。
家族の車であれば、溝だけでなく年数も見て早めに交換する判断が安全です。
「車検のついでに一番安い物で」と言わない
車検時は、タイヤ交換を整備工場に任せがちです。
そのときに「一番安い物で」と伝えると、価格重視のタイヤになる可能性が高くなります。
家族を乗せる車なら、少なくとも
・中級グレード以上を選ぶこと
・ウェット性能が高い物を優先すること
この2点だけは自分で指定した方が安心です。
残り溝3〜4mmで交換するルールを決める
法律上のスリップサインは残り溝1.6mmです。
この数値は「ここを下回ると違反」という最低ラインに過ぎません。
ウェット性能は、残り溝4mm付近から目に見えて落ち始めると言われます。
家族の車であれば、残り溝3〜4mmで交換するルールを決めておく方が安全です。
「まだ走れるから」ではなく、「雨の日にヒヤッとする前に替える」という発想が、タイヤ保険の考え方です。
まとめ:保険料を上げる前に、まず足元をチェックしましょう
最後に、この記事のポイントを整理します。
タイヤは車と道路をつなぐ唯一の部品です。
グレード差でブレーキ距離が車1台分変わることがあります。
中級タイヤ+早め交換は、月数百円の追加で実現できます。
安く長く使う節約は、事故1回分の出費で簡単に吹き飛びます。
このため、特約保険を厚くする前にタイヤへお金を回すという順番がおすすめです。
タイヤ代を「見えない保険料」と考えて、年1万円前後を積み立てておくと安心です。
今日からできる一歩として、次の3つです。
・駐車場でタイヤの製造年週とひび割れを確認。
・ガソリンスタンドで空気圧を標準値に合わせる。
・次回交換の基準を「残り溝3〜4mm」「製造から5〜6年」と決める。
これで安心して車に乗ることができ、かつ家族を守ることができると思います。