- 投稿日:2025/12/01
🔰 初心者向け解説:「しーくり」「くりしー」って何?
簿記を学ぶ上でよく耳にする「しーくり」「くりしー」という可愛らしい響きの言葉。
これは、会社が上げた売上に対応する費用、つまり「売上原価」を正しく計算するために絶対に欠かせない在庫の調整作業です。
結論から言うと、「しーくり」「くりしー」とは、
この調整をすることで、仕入の帳簿残高がそのまま売上原価になるため、会社の利益計算が正確にできます。

1. 「しーくり」「くりしー」は何のためにやるの?
🎯 目的:仕入勘定を「売れた分だけ」にする
企業が商品を仕入れても、そのすべてがすぐに売れるわけではありません。期首(会計期間の最初)には前期の在庫が残り、期末(会計期間の終わり)には今期の在庫が残ります。
しかし、会社の利益を正しく計算するためには、当期の売上に対応する費用だけを「仕入」として計上する必要があります。
売れ残ってしまった在庫は、まだ「費用」ではなく「資産」として残しておかなければなりません。
この「売れた分と売れ残った分を分ける」調整が「しーくり」「くりしー」という仕訳で行われます。


2. 2つの調整:「しーくり」と「くりしー」の役割
「しーくり」「くりしー」はそれぞれ、別の在庫を調整する役割を持っています。
1. 「しーくり」(仕入 → 繰越商品)の役割:前期の在庫を当期の仕入に加える
対象 前期末に残っていた在庫(売れ残り)
考え方 前期に売れ残った商品は、当期に売るための商品です。
したがって、当期の仕入(費用)として扱うのが正しいと考えます。
イメージとしては、
前期の倉庫から当期の仕入の箱に在庫を移動して、費用に含める処理です。
仕訳
借方:仕入/ 貸方:繰越商品(前期末在庫)

2. 「くりしー」(繰越商品 → 仕入)の役割:当期の在庫を仕入から差し引く
対象 当期末に残った在庫(売れ残り)
考え方 当期末に残ってしまった商品は、まだ売れていないので、当期の費用(売上原価)には含めません。
したがって、仕入総額からこの分をマイナスします。
イメージとしては、
当期の仕入の箱から次期に持ち越す在庫の箱に移動して、費用から外す処理です。
仕訳
借方:繰越商品(当期末在庫)/ 貸方:仕入


3. 「しーくりくりしー」で売上原価がどう決まるの?
この2つの調整を行うと、帳簿上の仕入勘定(商品を仕入れた記録)の最終的な残高は、以下の計算式と同じになります。
売上原価の計算式
前期末在庫 + 当期の仕入 − 当期末在庫
これは、まさに売上原価(売れた分だけの仕入総額)を求める計算式そのものです!
・過去からの引継ぎ
「去年の残り」は「今年売るための商品」なので、まずは全部足して、販売可能な商品の総額を出します。
・売れ残りの除外
そこから「売れ残った分」を引けば、消去法で「なくなった分(=売れた分)」だけが残ります。
このように、「しーくり」「くりしー」を行うことで、仕入勘定の最終残高が自動的に「売上原価」になるという、とても合理的な仕組みなのです。


💡 「仕入勘定で算定する」とは?
「仕入勘定で算定する」とは、売上原価(売れた商品の仕入額)を計算するために、会社の仕入の記録簿(仕入勘定)を「計算機」として使う方法のことです。
簡単に言えば、在庫と仕入れの記録をすべて一箇所(仕入勘定)に集めて調整し、最終的に残った残高を「売上原価」にするという仕組みです。
1. なぜ「仕入勘定」を使うのか?
通常、会社が商品を仕入れたら「仕入」という費用を記録します。
しかし、前述の通り、仕入れた商品のうち売れ残った分は費用から取り除く必要があります。
この調整を、あえて「仕入勘定」の中で行ってしまうことで、別の勘定科目を用意する手間を省き、計算と記録をシンプルにする狙いがあります。
2. 計算の手順(調整の流れ)
仕入勘定の中で行われる調整は、以下の3つのステップで成り立っています。
① 足す
前期末の商品(在庫)を、仕入の借方(左側)へ加える(「しーくり」)
当期に売るための商品の総額に、前期の売れ残りを合算します。
② 仕入高
当期に仕入れた高を、仕入の借方(左側)に記録するこれで、当期に用意したすべての商品(総仕入高)が借方側に揃います。
③ 引く
当期末の売れ残り商品(在庫)を、仕入の貸方(右側)でマイナスする(「くりしー」)
まだ売れていない分を仕入総額から差し引きます。
上記の 3ステップの結果、仕入勘定の残高は次のようになります。
{仕入勘定の残高} = {前期末商品} + {当期仕入高} - {当期末商品}
この式は、そのまま売上原価の計算式と一致します。
つまり、「仕入勘定で算定する」とは、仕入勘定の調整結果として「売れた分だけの費用(売上原価)」を自動的に取り出すことを指すのです。
4. 在庫がゼロの場合の処理は?
在庫がない=調整するモノがない=仕訳は不要。
シンプルに考えよう!
前期末在庫がゼロの場合
→「しーくり(仕入/繰越商品)」は不要です。

今期末在庫がゼロの場合
→ 「くりしー(繰越商品/仕入)」は不要です。
在庫がなければ調整する中身がないため、その仕訳は発生しない、と覚えておけば大丈夫です。
前期末在庫・今期末在庫がゼロの場合
どちらも不要です。
📝 まとめ
「しーくり」「くりしー」は、一見複雑そうに見えますが、「仕入れたもの」を「売れたもの」と「売れ残ったもの」にきれいに分けるための、簿記の基本となる調整です。
「しーくり」「くりしー」は、仕入を「売上原価」に調整する作業。
この売上原価の仕組みが理解できると、簿記の全体像(特に企業の利益計算)がとてもわかりやすくなります。
「在庫」と「仕入」がどのようにつながっているのかを意識して、ぜひ復習してみてください。
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