- 投稿日:2025/12/04
初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
「なぜ人は万引きをしてしまうのか?」
この問いは、道徳や経済の問題だけでは説明できない。
特に近代以降、万引きは“欲望の爆発”“ジェンダーの歪み”“監視社会の原型”として大きな意味を持つようになった。
今回はレイチェル・シュタイア著『万引きの文化史』2012年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
著者:レイチェル・シュタイア
イリノイ州シカゴのデポール大学演劇学部の準教授および美術学士課程の「批評および劇作法」の主任を務める。〈ニューヨーク・タイムズ〉〈ガーディアン〉〈シカゴ・マガジンズ〉など多くの新聞や雑誌に寄稿。著書にジョージ・フリードリー記念賞を受賞したStriptease: Untold History Of The Girlie Show、Gypsy: The Art Of The Teaseがある。
✅ 万引きは「消費社会の欲望」から生まれた文化現象である。
✅ 階級とジェンダーが罪の扱い方を大きく左右していた。
✅ 歴史をたどると、現代の監視社会の起源が見えてくる。
生まれながらの泥棒はいない。泥棒はつくられる。そして毎日、増えている。街と刑務所が泥棒製造工場なのだ。
レイチェル・シュタイア著『万引きの文化史』
万引きとは、お店の商品を代金を支払わずに持ち去る犯罪行為で、「窃盗罪」にあたる。
本記事では、万引きが社会の中でどのように姿を変え、私たちの価値観や制度を形作ってきたのかを解説する。
出典:漫画『HUNTER×HUNTER』
『万引きの文化史』
ひとのものをとったらどろぼう!
万引きの歴史についても調べてみた。それは十六世紀のロンドンにさかのぼる。都市化と大量消費社会の到来によって、ロンドンがヨーロッパ最大の商都となった時代だ。
レイチェル・シュタイア著『万引きの文化史』
万引きが変貌した瞬間:近代消費社会と欲望・倫理の緊張
ゲームと違って「上には上」があることを知ってしまう。
万引きの解釈には、大きく分けて「犯罪」「病気」「抗議行動」という3つがある。「犯罪」としての万引きを減らすためには、実行判決を増やし、恥辱刑をもうけ、過剰なほどの監視設備が導入されるようになった。
レイチェル・シュタイア著『万引きの文化史』
⇒ 触れる自由が倫理の緊張を生んだ。
⇒ 万引きは社会の価値観を映す行為である。
百貨店の誕生は、人々の“欲望のあり方”を大きく揺さぶった。
陳列された商品は誰でも触れられ、じっくり眺め、夢を見ることができた。
しかし、実際に所有するには金銭的・社会的な距離がある。
この「触れられるのに手に入らない」というズレが、消費者に強烈な誘惑と葛藤を生み、万引きを“貧しさの結果”から“欲望の逸脱”へと変化させたのである。
驚くことに収入が平均よりいくらか多めの人でも「万引き」をする。
貧困だけでは語れないのが「万引き」である。
近代は、人々に「欲望は見せるが、衝動は抑えよ」という自己管理を求め始めた時代でもあった。
万引きはこの新しい消費倫理と衝突し、文化的・心理的な意味を帯びていく。
つまり万引きの歴史を追うことは、消費社会そのものの成立と矛盾を追うことに等しい。
あらためて…万引きには500年以上の歴史がある。
女性だけ“病気”にされた理由:クレプトマニアと階級の不平等
万引きは今でも昔でも「犯罪」だけで終わらせない一面がある。
「病気」に対処するためには、アルコール依存症の更生会からヒントを得て、万引き常習者の更生プログラムがアメリカ各地で実施されている。
レイチェル・シュタイア著『万引きの文化史』
⇒ 富裕層だけが犯罪者から患者へ変えられた。
⇒ 法制度は平等ではなかった。
19世紀、上流階級の女性が万引きをすると、医学は「クレプトマニア(窃盗症)」という診断を与えた。
経済的に困っていない女性の万引きは“病気の症状”とされ、彼女らは治療の対象となり刑罰を回避する。
一方で同じ万引きをしても、貧しい者には寛容さは与えられなかった。
「貧困からこの者は万引きをした」と勝手に解釈されて罰を与えた。
階級・ジェンダーの組み合わせは、罪の扱いに露骨な差を生んだ。
医師・弁護士・家族の言説が絡み、貴婦人の万引きは「一時の錯乱」とされたのに対し、労働者階級の女性は厳罰を受けた。
万引きの歴史は、制度がどれほど偏っていたかを鮮明に示している。
実際はどちらも同じ「窃盗」であることに違いはないのにだ。
万引きが“文化”になった瞬間:物語・メディア・監視社会の誕生
私たちが魔が差さないように今日も監視されている。
他方で、職業的な万引きの手口はいっそう巧妙になり、大量の商品が盗まれるばかりか、暴力がともなうケースも増えている。
レイチェル・シュタイア著『万引きの文化史』
⇒ 文学は逸脱行為を文化へ変える。
⇒ 事件は道徳論争の材料となった。
⇒ 厳罰から予防へと権力の形が変化した。
万引きはただの犯罪ではなく、都市の孤独や抑圧された感情の象徴として描かれたこともある。
文学は万引きに心理的・文化的な深みを与え、“社会が抱える問題の鏡”として読者に突きつけたのである。
新聞は万引き事件を刺激的に報じ、特に女性の万引きはゴシップの格好のネタになった。
日本の特番で万引きGメンを楽しみに見ていた者もいる。
服装、家庭背景、精神状態までが晒され、万引きは娯楽として消費されていった。
かつて軽微な万引きでも死刑があった時代から、人道主義の流れで刑罰は減刑されていく。
しかしその代替として、イギリスの百貨店はデパート探偵や監視可能な陳列、防犯装置を導入し始めた。
これが現代の監視社会の原型となる。
「客は潜在的な犯人である」という視線が商業空間に定着し、万引き対策が社会の構造を変えていったのだ。
現代では本のページをスマホで撮って公開する「デジタル万引き」
証券口座の乗っ取りも「万引き」といえる。
一度見つかってから商品を返したり代金を支払ったりしても、窃盗したという事実は変わらない。
不用心にも盗まれてしまうような状態にすることは特に避けるべきだ。
結果的に、あなたが犯罪者を作り上げたともいえる。
万引きの手口が時代や文化と共に変わってきたように、依然として万引きがなくなることはないだろう。

マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
窃盗になるのは、まさに所有権の問題である。
「所有権」という言葉は私たちの社会に大きな影響を与えている。
政府も企業もふつうの個人も、「誰が・何を・なぜ」所有するのかのルールをのべつ変えている。 そのたびに勝者と敗者が生まれる。 歴史はそれを繰り返してきた。 その根本にあるのは、人間社会の工夫である。
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
まとめ
✅ 万引きは「消費社会の欲望」から生まれた文化現象である。
✅ 階級とジェンダーが罪の扱い方を大きく左右していた。
✅ 歴史をたどると、現代の監視社会の起源が見えてくる。
万引きはいっこうに減らない。黒人でも白人も万引きをする。移民であれ生粋のアメリカ人であれ、男でも女でも、若者でも高齢者でも、さらには、金持ちでも貧民でも、進行があってもなくても万引きをする。
どんな人がこの罪を犯すのか分類しようとすれば、かえって不安な気分にさせられ、滑稽であると同時に悲しくもなる。
レイチェル・シュタイア著『万引きの文化史』
⇒ 過去を知れば、今の社会の仕組みが鮮明に見える。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆
