- 投稿日:2025/11/25
初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
今回はマイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』2024年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
筆者:マイケル・ヘラー
コロンビア大学ロースクールのローレンス・A・ウィーン不動産法担当教授。所有権に関する世界的権威の一人
✅ 所有権の根拠は6つの物語にすぎない。
✅ それらは普遍的な真実ではなく、対立を生む要因である。
✅ 所有を理解することで、社会や人間関係を客観視できる。
「それ、私の!」この原始的な叫びは子供が最初に覚える単語の1つだ。
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
「所有権」という言葉は私たちの社会に大きな影響を与えている。
「航空機の座席の後ろのスペースは誰のもの?」
「Kindleで購入した本は本当にあなたのものか?」
「これは私のものだ」と、なぜ私たちは主張するのか?
飛行機のリクライニングシートから国際的な領土問題まで、すべての争いの裏には「所有権の物語」がある。
本記事では、その無意識のルールを解き明かす。
デジタル資産など所有の概念が拡大する今、モノを持つことの本質を問う。
『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
頭がこっちに向いているから、僕のものだね!
政府も企業もふつうの個人も、「誰が・何を・なぜ」所有するのかのルールをのべつ変えている。
そのたびに勝者と敗者が生まれる。
歴史はそれを繰り返してきた。
その根本にあるのは、人間社会の工夫である。
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
補足:「のべつ」は「絶えず」「ひっきりなしに」という意味。
所有を支配する6つの物語
僕が中にいるから、僕の家だね!
希少資源の最初の所有者になるときに根拠として持ち出されるものは、ここにあげる6つの格言で網羅されている。
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
⇒ 所有権は絶対ではなく、6つの物語の対立で成り立つ。
本書が示す6つの所有権ルールとは何か?
付属している:何か特定の場所に結びついているものを自分のものだと主張する。
早い者勝ち:誰よりも先に手に入れた、または先に場所を確保したことを根拠とする。
占有:実際に手にしている、あるいは使用していることを根拠とする。
自分の蒔いた種は自分で収穫する:自らの労働や努力によって生み出されたものを自分のものだと主張する。
私の家は私の城:私的な空間や領域を自分のものだと主張する。
私の身体は私のもの:自己の身体を自分のものだと主張する。
これらは私たちが無意識に信じる正当性の物語だが、普遍的な真実ではない。
同じ物を巡っても、状況によって優先される物語は異なり、これが争いを生む。
所有の論理は単純な法律ではなく、文化や心理と結びつき、人間社会の深層を形づくっている。

箕曲在弘 著『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』
もっとも重要なのは、こうした異文化に着目することにより、私たちがあたりまえだと思っていた考え方や価値基準について、それがあたりまえではないと気づくことにあります。
箕曲在弘 著『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』
物々交換ではなく、信頼と名誉のネットワークをつくる行為の文化もある。
財の交換(交易)という経済活動だけで捉えることはできない所有もある。
所有権をめぐる争いは、どの「物語」がより正当であるかを巡るバトルであり、法的な解決だけでなく、社会的・文化的な合意形成が不可欠である。
なぜ争いは終わらないのか
「所有」には多くの工程がある。その工程ごとに所有者は異なる。
もしあなたがKindleで読むために購入ボタンをクリックしたら、自分はその本のデータを所有したのだと考えるだろう。
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
しかし、実際は限定的な使用許諾(ライセンス)に過ぎない。
本に書き込むことも、文章を塗りつぶすことも、個人の範囲でコピーすることもできない。
ただ、見逃されているだけである。
企業は所有権を都合よく設計しているのも事実だ。
⇒ 所有の根拠は常に不完全である。
「自分が蒔いた種は自分で収穫する」という労働の原則は、一見すると誰もが納得する正義のように見える。
しかし、その境界をどこで引くのかは曖昧だ。
土地を耕したのは自分でも、その土地を誰が所有するかは別問題である。
同様に、「早い者勝ち」や「私の城」も絶対的ではない。
今住んでいる場所も1000年前の住んでいた人間と民族は異なる。
時間軸やその時の文化、感情、一般常識などの「変数」がたまたま、「あなたの物」と軍配を上げているにすぎない。
極論、「全ては地球の物」と結論付けることもできる。
構成される材料や始まりから終わりまでのすべてを含めれば、「大義名分」を掲げる隙など簡単にでっち上げて「実効支配」することもできてしまう。
根拠の不完全さゆえに、所有を巡る争いは解決しづらく、時に法廷や武力にまで発展する。
コイン投げで決めるのは最も公平なように見える。
だがふしぎなことに、この方法は裁判官や陪審員に明確に禁じられている。
それも、禁止行為のかなり上位に位置づけられているのだ。
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』
少ないもの勝ち、多いもの勝ち、遅いもの勝ち。かぶったらダメ。といった所有権への勝利方法をいくつも提供してくれる。
本書の洞察とアイデアは、ゲーム外にも応用できる。 議論で2つの立場がはっきり対立しているとき、どのように解決できるか? 複数の候補者がいる選挙で、当選者をどのように決定するべきか? どのような経済的インセンティブがあれば富の分配が一番うまくできるか? すべての人に公平性を保証する正しい方法は何か?
これらは現代社会のジレンマであり、ゲームデザイナーが日常的に取り組む問題でもある。
ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』
所有を理解する新しい視点
飛行機もドローンも、君の頭に落ちる確率はある。
飛行機はあなたの家の上空を飛んでもよいが、ドローンはいけないのはなぜか?
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
⇒ 所有権は社会の物語であると認識せよ。
⇒ 「私のもの」という感覚が世界を動かす。
所有をめぐるルールは、自然法則のような不変のものではない。
むしろ、それは人間社会が作り出した「物語」であり、文化や価値観によって変化する。
本書は、この事実を理解することで、所有をめぐる争いを客観的に捉えられると説く。
重要なのは、「どちらが正しいか」ではなく、「どの物語を採用するか」である。
所有は合意と交渉の産物であり、その柔軟な視点が社会を安定させる鍵となる。
おそらく人類が生き残る最大の希望は、汚染源を含めてもっと多くの環境資源を「私の!」と思えることに懸かっているのだ。
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
飛行機のリクライニングシートを倒す権利を巡る口論と、国境をめぐる戦争には共通点がある。
それは、どちらも「所有の正当性」をめぐる対立である。
個人の小さな行動も、国家間の大きな衝突も、背後には「これは私のものだ」という感覚がある。
この感覚が無意識に働くからこそ、所有の問題は根深く、世界の秩序を左右する。
所有の仕組みを理解することは、現代を生きる必須のリテラシーだ。
お金も「国家の信用」で、口座も「銀行や証券会社」が「保証します」と契約しているから所有が成り立っているが、世界規模の通信障害やデータ破損、巨大隕石の衝突、死亡率と罹患率の高い感染症などがおこれば、「所有」できる保証はない。
あくまで、確率がとてつもなく低いだけである。
私たちは自分の身体でさえ、完全に自分のモノとは言えないのである。

ダン・アリエリー著『予想どおりに不合理』
行動経済学は不合理な人間の行動を身近な例で分かりやすく紹介してくれる。
わたしの考えでは、わたしたちは不合理なだけでなく、「予想どおりに不合理」だ。つまり、不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される。消費者であれ、実業家であれ、政策立案者であれ、わたしたちがいかに予想どおりに不合理かを知ることは、よりよい決断をしたり、生活を改善したりするための出発点になる。
ダン・アリエリー 著『予想どおりに不合理』
まとめ
✅ 所有権の根拠は6つの物語にすぎない。
✅ それらは普遍的な真実ではなく、対立を生む要因である。
✅ 所有を理解することで、社会や人間関係を客観視できる。
富を生むとされてきた所有が、現代社会においては多すぎる、かつ、強すぎることにより、市場の「渋滞」(グリッドロック)を招き、イノベーションを停滞させる懸念がある
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
⇒ 所有権とは、私たちを無意識に支配する物語の集まりである。
タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない。
私立探偵 フィリップ・マーロウ
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆

