- 投稿日:2025/12/17
- 更新日:2025/12/17
【第38話】FIREについて研究してみた
~労働者は報酬に何を求めるのか?~
🔶 なぜ「お金」だけでは働き続けられないのか?
リベシティのみなさん、こんにちは!社会人大学院生のOGAです。
大学院で「FIRE(Financial Independence Retire Early)」をテーマに修士論文を書いた経験を、みなさんにも共有したいと思います。
人材紹介会社のパーソルキャリア(doda)が実施した調査によると、転職理由の1位は、4年連続で「給与が低い・昇給が見込めない」となっています。
この結果から、多くの労働者にとって、賃金水準が依然として大きな関心事であることが分かります。
一方で、私が修士論文の中でインタビューしたFIRE達成者の語りからは、「お金だけでは測れない報酬」というワードが浮かび上がってきました。
ここで、企業の立場に立って考えてみると、少し厄介な構図が見えてきます。
「給与を低く設定すれば、従業員は辞めてしまうのでは?」
しかし、
「高い給与を支払っても、FIREを目指して辞めてしまう人がいるのでは?」
――そんなジレンマです。
では、労働者は本来、仕事の報酬に何を求めているのでしょうか。
今回は先行研究をもとに、「労働」と「報酬」の関係について整理していきたいと思います。
1.報酬=賃金、だけでは説明できなくなっている
仕事の報酬と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは「給料」です。もちろん、賃金は今も重要です。
しかし、近年の研究では一貫して次の点が示されています。
賃金は「不満を防ぐ要因」ではあるが、
それだけで仕事満足や働き続ける意欲は説明できない。
田中氏(2020)は、日本の労働者を対象に「労働者は賃金で報われたいと思っているのか」を分析しました。その結果、賃金は重視されるものの、それ単独では仕事の評価にならないことが明らかにされています。
2.内発的報酬:やりがい・成長・専門性の発揮
研究で特に注目されているのが、内発的報酬です。
内発的報酬とは――
・自分の能力や専門性を活かせている感覚
・仕事を通じた成長実感
・意味のある仕事をしているという納得感
――を指します。
田中氏(2020)の分析では、専門職・女性・事務職を中心に、「賃金よりも、能力活用や専門性の発揮を報酬と感じる傾向」が確認されています。
さらに、年齢が上がるほど「専門性を発揮できること自体が報酬になる」傾向も示されています。
つまり、収入が一定水準を超えると、「いくらもらうか」より「自分は何を生み出しているのか」が重視されるようになるのです。
3.心理的報酬:尊重・承認・将来の見通し
もうひとつ重要なのが、心理的報酬です。
心理的報酬とは――
・組織から尊重されている感覚
・公平に扱われているという認識
・将来のキャリアを描ける見通し
野津氏(2024)は、日本型雇用の変容を「心理的契約」という概念から分析しました。心理的契約とは、企業と従業員の間にある、書面化されていない期待や信頼のことです。
雇用が流動化し、成果主義が進む中で、この心理的契約が弱まると、たとえ賃金が維持されていても、働き続けたい気持ちは低下することが示されています。
🔶 まとめ
今回紹介した研究のほかに、労働者が求める報酬として、次ようなものが挙げられます。
・金銭的報酬:賃金・安定収入
・内発的報酬:やりがい・成長・専門性の発揮
・非金銭的報酬:働き方・時間・自由度
・心理的報酬:尊重・承認・将来展望
現代の働き方では、これらの報酬を同時に満たすことが難しくなっている点が、大きな課題だとされています。
こうして整理してみると、やはりFIRE達成者は「働きたくないから会社を辞めるのではない」ということが、ここからも読み取れます。
むしろFIREは、従来の労働の中では得にくくなった報酬を、自分の手で取り戻そうとする試みと捉える方が実態に近いように感じます。
お金、時間、人とのつながり、やりがい──
その中で、自分は何を大切にしたいのかを問い直すこと。
それこそが、FIREという選択の本質なのだと思いました。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
次回も、研究で得た知見をわかりやすく紹介していきます!
・田中秀樹(2020)「労働者にとっての仕事の報酬―労働者は賃金で報われたいと思っているのか―」 ・野津創太(2024)「雇用システムの変容が従業員意識に及ぼす影響―心理的契約の内容による比較検討―」 ・転職サービス「doda」 転職理由1位は、4年連続で「給与が低い・昇給が見込めない」 https://www.fnn.jp/articles/-/831325?utm_source=chatgpt.com