- 投稿日:2026/01/27
- 更新日:2026/01/28
お父さん、お母さん、今日もお疲れ様です。
「どうして、こんなことをするの!」
「なんで約束を守れないの!」
一日が終わり、寝顔を見ながら一人反省会をする夜はありませんか。
本当はもっと優しく言いたかった。
でも、忙しい夕方の時間帯、何度言っても動かない我が子を前にすると、どうしても「なんで!」という言葉が鋭い刃物のように口から飛び出してしまう。
そして、怯えたような子どもの顔を見て、後から強烈な自己嫌悪に襲われる。
その苦しさは、あなたの性格がきついからでも、忍耐力が足りないからでもありません。
ただ、子どもを動かすための「ちょっとした技術」の引き出しが、まだ少ないだけなのかもしれません。
〈Before〉
「なんでお着替えできないの!」
〈After〉
「まだ着替えが終わっていないね。何かあった?」
1. なぜ「なんで?」は機能しないのか
① 大人社会で考えてみる
想像してみてください。
あなたが仕事でミスをした時、上司から眉間に皺を寄せてこう怒鳴られたらどうでしょう。
「なんでこんなミスをしたんだ?」
この問いかけに、素直に原因を分析して報告できるでしょうか。
おそらく、身体がこわばり、言い訳を探すか、「すみません」と思考停止して謝るのが精一杯なはずです。
いや、そもそもこの質問はおそらく、「なんで?」とは言っているものの、その文字通り「理由を聞いている」わけではなさそうに感じますよね。
「なんで?」は、質問の形をしていますが、実際には「非難」や「攻撃」として届きます。
大人でさえ萎縮する言葉を、経験の浅い子どもに投げかけても、建設的な答えが返ってくるはずがありません。
② 子どもはまだ脳のブレーキが未完成
子ども、特に幼児期は、衝動を抑えたり論理的に考えたりする脳の司令塔(前頭前野)がまだ未発達です。いわば、アクセル全開でブレーキが効かない車のような状態です。
例えばおもちゃを投げた時、そこに「ママを困らせてやろう」という明確な悪意や計算があることは稀です。
「おもちゃを投げると、すぐにパパやママが来てくれる」という誤った成功体験から行動してしまうケースもありますが、その多くは「ただムシャクシャした」「手が滑った」といった、本人にも説明できない突発的な衝動が原因です。
そこに大人の理屈で「なんでそんなことをしたの?」と理由を問い詰めても、子どもは答えを持ち合わせていません。
「答えられないことを責められる」という恐怖から、防衛本能として嘘をついたり、その場で黙り込んだりしてしまうのです。
2. なぜ「何かあった?」がうまくいくのか
解決策は、主語を「子ども」から「状況(環境)」に変えることです。
敵は「子ども」ではなく「トラブル」
「何かあった?」という問いかけは、子どもを責めるニュアンスを消し去ります。
「あなたは悪くないけれど、何かのトラブルが起きているようだね」という、共感と心配のメッセージとして伝わるのです。
これにより、子どもは「親は味方だ」と安心し、防御態勢を解くことができます。
具体的な成功イメージ
例えば、お風呂に入るのを渋っている場面。
×「なんで入らないの!」
これでは「入らないアナタが悪い」というメッセージになります。
○「お風呂の時間過ぎちゃったね。どうしたの?何かあった?」
こう聞かれると、子どもは冷静になります。
「まだこのパズルが終わらないの」
「いつもお湯が熱いのが嫌なの」
理由さえわかれば、「じゃあパズルをキリのいいところまでやろう」と交渉したり、温度を下げたりと、具体的な対策が打てます。
3. この手法の注意点
しかし、これは万能な魔法の言葉ではありません。
この手法にも、副作用や限界があることを知っておく必要があります。
感情が爆発している時は無効
子どもが癇癪を起こして泣き叫んでいる時は、どんな言葉も届きません。
脳がパニック状態にある時に「何かあった?」と冷静に聞いても、火に油を注ぐだけです。
その場合は、言葉による解決を諦め、落ち着くまで安全を確保して見守るのが最善手です。
親の「演技力」が試される
言葉だけ「何かあった?」と言い換えても、表情や口調が怒っていては意味がありません。
「(言ってみろよ)何かあった?」という威圧的なニュアンスになってしまえば、子どもは敏感に察知します。
親自身の怒りのボルテージが高い時は、まず深呼吸をして、自分の気持ちを落ち着けることが先決です。
善悪の判断が必要な時
人を叩いたり、危険なことをした直後に、優しく「何かあった?」と聞くのは不適切な場合があります。まずは短く「叩くのはダメ」と行動を制止し、毅然とした態度を示す必要があります。
普段は「どうしたの?」と優しく寄り添ってくれるママやパパが、本当に危険な時や人を傷つけた時だけは表情を変えて厳しく「ダメ!」と伝える。このギャップがあるからこそ、子供はハッとして「これは本当にやってはいけないことなんだ」と直感的に理解できるようになります。
逆に、日常の些細なことまで常に「なんでこんなことしたの!」と厳しく叱ってばかりいると、警告の重みが薄れ、子供は何が本当に重要な禁止事項なのかがわからなくなってしまいます。
「受容」と「やってはいけないこと」の境界線が曖昧にならないよう、親の態度に明確な区別を持たせることが大切です。
4. 未来への視点:「時間」という資産を守るために
この「何かあった?」への変換は、単にその場の着替えや片付けをスムーズにするだけのテクニックではありません。
将来、もっと大きなトラブルを防ぐための「投資」です。
小さいうちから「理由を聞いてもらえた」「困っていることを言えた」という経験を積み重ねる。
そうすることで、子どもは「困ったら親に相談していいんだ」という信頼感を獲得します。
これは、子どもが成長して学校での人間関係や、もっと複雑な悩みに直面した時、あなたにSOSを出せるかどうかの分かれ道になります。
「なんで?」と責められ続けた子は、親に失敗を隠すようになりがちです。
「何かあった?」の習慣は、未来の親子の信頼関係を守るための、小さな種まきなのです。
ちなみに、唯一「なんで?」を使っていい場面があります。
それは褒める時です。
「すごいね!なんでこんなに上手にできたの?」
これなら、子どもは嬉々として自分の工夫や努力を語ってくれるでしょう。
まとめ:まずはこれからやってみよう
・叱りたくなったら、「なんで?」を飲み込み、「何かあった?」に変換する。
・子どもが理由(事実)を話したら、まずは「そうだったんだ」と受け止める。
・「なんで(どうして)」を使うのは、子どもを褒める時だけにする。
(「どうしてこんなに上手にできたの?」と聞けば、子どもは得意げに工夫した点を話してくれます。)
終わりに
私は過去、保育業界に携わり、多くの子どもたちと一生懸命な保護者の方々を見てきましたが、現在では一人の親としても日々葛藤しています。
育児情報には「正解」らしきものが溢れていますが、科学的根拠や保育士向けの研修で望ましいとされるものでさえ、条件が変われば結果は変わります。
この記事で紹介した方法も、あくまで数ある選択肢の一つに過ぎません。
万人に100%効く方法なんて存在しません。
お子さんの個性、その日の体調、そして何より親御さん自身の余裕があるかどうかで、結果は違って当然です。
ですから、「絶対にこうしなきゃ」と自分を追い込まず、「実験してみよう」くらいの軽い気持ちで試してみてください。
もし合わなければ、すぐに損切りして別の方法を探せばいいのです。
この情報が、あなたの手札を一枚増やし、結果として親子の笑顔と「自分らしい時間」を守ることに繋がれば幸いです。