- 投稿日:2026/03/29
父の相続登記を自分でやってみた ~法律知識ゼロでもできた手続きの記録
そもそも「相続登記」って何?
まず、基本中の基本から説明します。
家や土地には「登記」という制度があります。簡単に言うと、「この不動産の持ち主は誰か」を国が公式に記録したものです。法務局という役所が管理しています。
親が亡くなると、その親名義の不動産はそのままでは名義が変わりません。放っておくと、ずっと亡くなった親の名義のままになってしまいます。
これを相続人(家族など、財産を引き継ぐ人)の名義に変更する手続きが「相続登記」です。
2024年から義務化されました
以前は「いつかやればいい」と先送りできましたが、2024年4月から相続登記が義務化されました。相続を知ってから3年以内に申請しないと、10万円以下の過料(罰金のようなもの)が課せられる可能性があります。
「そのうち売るときにやればいい」はもう通用しません。早めに動くことが大切です。
状況
父が9月11日に他界し、両親が住んでいた自宅が残りました。
相続人は母、長女(私)、長男の3人。子供2人はそれぞれ遠方に在住。
母はそのまま自宅に住み続けます。
母が単独相続することになり、私が代理人として書類作成することにしました。
約2ヶ月後の11月8日に登記完了の連絡が届き、その数日後に登記完了証と登記識別情報通知を受け取りました。
司法書士に頼もうか、少し迷いました
相続登記といえば司法書士(法律の専門家)に依頼するのが一般的です。私も最初は頼もうか迷いました。
費用を調べてみると、登記申請書の作成だけで7万〜10万円、遺産分割協議書(後述)の作成でさらに別途費用がかかる事務所も多く、登録免許税(税金)や書類取得費用を合わせると、トータルで10万〜20万円前後になることがわかりました。
司法書士に依頼すると、戸籍謄本などの書類収集も代行してくれる事務所が多いです。ただし、印鑑証明書は本人しか取得できないため、どこに頼んでも自分で準備する必要があります。また、書類収集を代行してもらう分、報酬に加算されるケースもあります。
費用と手間のバランスを考えて、「自分でやろう」と決めました。私には以前、行政書士事務所で法人登記の申請書を作成した経験があり、書類作成にある程度慣れていたことも背中を押しました。

実際にかかった費用
自分でやった場合、費用はシンプルです。
登録免許税(収入印紙で納付)数万円
戸籍謄本・住民票などの書類取得費用、約6,000円
郵送代約3,000円
司法書士に依頼した場合と比べると、少なく見積もっても10万円以上の節約になりました。
必要な書類は何?
「相続登記に必要な書類」と聞くと難しそうですが、種類ごとに整理すると意外とシンプルです。
亡くなった父に関する書類
戸籍謄本(出生から死亡まですべて) → 父の家族構成を証明するもの
住民票の除票(亡くなった後の住民票) → 亡くなった時点の住所を証明するもの
固定資産税評価証明書 → 不動産の価値を証明するもの。登録免許税の計算に使います
相続人(母・私・兄)に関する書類
戸籍謄本(現在のもの)
印鑑証明書(実印を登録している市区町村で取得。本人のみ取得可)
自分で作成する書類
遺産分割協議書 → 「この不動産は母が単独相続する」と相続人全員が合意したことを証明する書類
登記申請書 → 法務局に「名義を変えてください」と申請する書類
手続きの流れ:実際にこう進めました
ステップ1:まず全体像を把握する
法務局のホームページには、必要書類の一覧・申請書の作成例・固定資産税評価額から登録免許税の計算方法まで、かなり詳しく掲載されています。まずこれをひととおり読みました。
さらにAIやWEB検索も活用して、自分のケースで何が必要かを整理しました。最初に全体像をつかんでおくと、無駄な動きが減ります。
ステップ2:取れる書類から順番に集める
書類集めで一つ知っておきたいのが、父の住民票の除票(亡くなった後の住民票)はすぐには発行されないということです。
そのため、除票が取れるまでの間に、自分の地域で取れる書類(自分や母の戸籍謄本など)を先に集めておきました。
また、除票を待つ間に遺産分割協議書と登記申請書の作成も進めておきました。待ち時間を無駄にしない段取りが大切です。
戸籍謄本はコンビニや役所の窓口で取得できます。本籍地が遠くても、最寄りの役所で取れるケースが増えています。特にマイナンバーカードを取得していると便利です。
ステップ3:遺産分割協議書と登記申請書を作成する
遺産分割協議書とは、「誰が何を相続するか」を相続人全員で合意した内容をまとめた書類です。今回は母が単独で不動産を相続するため、内容はシンプルでした。
書類はPCで作成してOKです。「署名欄も含めてPC作成でよいか」を法務局に事前確認したところ、問題ないとのことでした。
作成したPDFを兄にメールで送り、内容を確認してもらいました。
⚠️ 【重要な注意点①】不動産の所在地は登記簿謄本で確認する
遺産分割協議書と登記申請書には不動産の所在地を正確に記載する必要があります。固定資産税評価証明書にも所在地が記載されていますが、これをそのまま信用しないでください。
面倒でも、必ず一度不動産の登記簿謄本を取り寄せて、そこに記載されている所在地を確認しながら書類を作成してください。登記簿謄本の記載が法的に正式な表記です。ここを間違えると申請が受理されない可能性があります。
ステップ4:兄との書類のやり取り
相続人全員の合意が必要なので、兄にも協力してもらう必要があります。
1.遺産分割協議書に実印を押してもらう
2.印鑑証明書を市役所で取得してもらう
3.戸籍謄本を取得してもらう
⚠️ 【重要な注意点②】相続人の住所は住民票と完全に一致させる
遺産分割協議書に記載する相続人の住所は、住民票に記載されている住所と一字一句同じでなければなりません。
私は事前に兄に正確な住所を確認してから協議書を作成しました。「〇丁目」「○番地」「○号」の表記など、住民票の表記と微妙に違うことがあるので、必ず住民票を見ながら書くか、本人に住民票通りの住所を教えてもらってから作成してください。
兄は書類に慣れていなかったので、「どういう書類が必要か」「どこに押印するか」を具体的にリストにして説明しました。
書類を送ってもらう際は、必ず簡易書留かゆうパックで送るようにお願いしました。
実印の押された協議書や印鑑証明書は、紛失すると大変なことになります。普通郵便は絶対に避けてください。
ステップ5:法務局に2回相談する
1回目:オンライン相談(約1時間)法務局のホームページを読んで疑問に思った点をまとめ、WEB予約を取ってオンラインで相談しました。自分のケースで何が必要かを確認でき、「何をどの順番で準備するか」の見通しが立ちました。
法務局への相談は無料です。気軽に活用してください。
収入印紙以外の書類をほぼすべて揃えた段階で、再度法務局に来局予約を取り、書類を持参して直接相談しました。
ここで知って安心したのが、申請先の法務局でなくても、最寄りの法務局で相談できるということ。父の不動産がある地域の法務局まで行く必要はなく、自宅近くの法務局で対応してもらえました。
書類を一通り見てもらい、「これで申請できそうだ」という手応えを得ました。一点補足しておくと、法務局の職員の方は「大丈夫です」とは言いません。確認・アドバイスをしてくれる立場なので、最終的な判断は自分でする形になります。それでも、専門家に書類を見てもらえた安心感は大きかったです。
ステップ6:郵送で申請する
法務局への申請は郵送で行いました。書類一式を書留で送り、返信用封筒も同封します。
窓口に何度も足を運ぶ必要がないので、遠方の方や平日に時間が取りにくい方にはおすすめの方法です。
ステップ7:登記完了の通知と書類の受け取り
申請から約2ヶ月後、登記完了の連絡が届きました。
完了後に法務局から送られてくる「登記識別情報」(昔でいう権利証にあたる重要書類)は、本人限定受取郵便で届きます。
この郵便は少し特殊で、
・受取人本人しか受け取れない
・マイナンバーカードなどの本人確認書類が必要(家族でも代理受取は不可)
不在だと再配達の調整が必要になります。届く時期が近づいたら、在宅できる日を意識しておくと安心です。
これが最後の「小さな関門」でした。
やってみて分かったこと
思ったより簡単だったこと
申請書の作成(定型の書式に記入するだけ)
法務局HPに記載例・計算方法が豊富に載っているAIやWEB検索で疑問点をすぐ確認できた法務局への相談が無料で、丁寧に教えてもらえた
面倒だったこと
1.書類が揃うまでに時間がかかる
2.兄との書類のやり取り(説明・郵送・確認)に気を使った
3.重要書類の郵送管理に神経を使った
「困った!」というほどの壁はなく、面倒なことが多い、という感じでした。ひとつひとつ丁寧に進めれば、必ず終わります。
自分でやるか、司法書士に頼むか
参考として、判断の目安をまとめます。
自分でやることをおすすめできる人
相続人が少なく、相続関係がシンプルな場合時間に余裕がある場合
費用を節約したい場合
専門家に頼んだほうがいい場合
相続人が多い、または相続関係が複雑な場合
複数の不動産が複数の地域にある場合
平日に時間がまったく取れない場合
相続人の間で意見が一致していない場合
迷ったらまず法務局に無料相談してみるのが一番です。「自分のケースで自分でできそうか」を聞いてみると、方向性が見えてきます。
まとめ:費用・期間・ポイント
総費用:登録免許税 + 約1万円(謄本等取得金額、郵送料)
期間:約2ヶ月(9/11〜11/8)
法務局相談:2回(オンライン1回・持込1回)
申請方法:郵送

これから手続きをする方へ
相続登記は「難しい手続き」ではなく、「手間のかかる手続き」です。
親が亡くなった直後は、書類のことを考える気力すら出ないこともあります。そんな時は少し休んでいいです。少し落ち着いてから、一歩ずつ進めれば大丈夫です。
最初の一歩は、法務局のホームページを見ることと、法務局にオンライン相談の予約を入れること。
それだけで、手続きは動き始めます。
あなたの手続きがスムーズに進むことを願っています。