- 投稿日:2024/05/26
- 更新日:2025/09/29
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はじめに
初めまして。Kazukiと申します。
商業高校から約21年間にわたり簿記に携わってきましたので、少しでも今までの経験を皆様に還元できたらと思い、本記事の執筆を試みました。
本記事では、簿記3級受験者の学習に役立つ豆知識などをワンポイント情報として紹介していく予定です。
簿記学習者にとって初ボスとなる「借方・貸方」
簿記を学習し始めた方が最初につまずくポイントは、何といっても「借方・貸方」ではないでしょうか?
正直なところ、簿記アレルギーを発症させる最初の原因ではないかと私的には思っています。
貸付金は借方だし、借入金は貸方だし……???
巷のスクールなどでは、
「『かりかた』のりは左に払うから左」
「『かしかた』のしは右に払うから右」
なんて教えることもあるようですが、なかなか納得できない人も多いのではないでしょうか?
そもそも、なぜ「借方・貸方」なんて名称が設定されていているのでしょうか?
起源は15世紀イタリアまでさかのぼる
世界で最初に出版された複式簿記の文献としては、1494年にヴェネチアで出版された『算術・幾何・比及び比例全書』が挙げられます。
当時の帳簿記入は、債権や債務が発生した際、相手側の視点に立って記帳が行われていました。
具体的には、売掛金は相手が自分からお金を借りている状態なので借方、買掛金は相手が自分にお金を貸している状態なので貸方といった具合です。
ちなみに、商業や法律の世界では、支払を先送りしている状態=「相手から借金している状態」と捉えます。
例えば、クレジットカードの翌月決済の場合、消費者はカード会社から1か月間の借金をしていることになりますよね(厳密にいうとクレジット契約は3者間契約なので少々異なりますが、ここでは割愛します)
いずれにせよ、記録対象が債権・債務に限られていた中世ヨーロッパにおいては、「借方・貸方」という用語は本来の意味を持っていました。
しかし、歴史を経るに従い、会計の範囲は拡大していき、債権・債務のみならず固定資産・収益・費用なども記録することになり、「借方・貸方」という本来の意味は失われていきました。
福沢諭吉の葛藤
日本における複式簿記の起源は、福沢諭吉が西洋の簿記を翻案した『帳合之法』とされています。
福沢諭吉は、「debit」を「借方」、「credit」を「貸方」と翻訳しました。日本人に混乱を招くのではないかと福沢自身も心配したようですが、海外貿易を見据え、西洋式の名称に翻訳することとしたようです。
こうして、日本において「借方」と「貸方」という用語が普及していくこととなりました。
まとめ
「借方・貸方」という用語は、中世ヨーロッパの帳簿記入の慣習から広まっていきました。
そして、日本においては、福沢諭吉が未来を見据えて翻訳したのですが、皮肉なことに後世の簿記学習者を悩ます結果となってしまいました。
ただ、福沢諭吉が日本の将来のために葛藤した事実を踏まえるだけでも、「借方・貸方」という用語に対するイメージも少しは変わるのではないでしょうか?
今後も簿記に関する豆知識などをワンポイント情報として紹介していく予定ですので、もしよろしければブックマークやいいねをしていただけますと励みになります。