- 投稿日:2024/10/02
- 更新日:2025/09/29

はじめに
今回は前回の
「人はなぜ盲信してしまうのか」の続きです。
一見関係ないようですが重要な共通点があります。
それは”人格と意見を切り離す”ことです。
実はコレなかなか難しいので、訓練が必要です。慣れてくると前回の盲信しないということだけでなく、反論をしたり、されたりすることが苦痛ではなくなってきます。
なぜ反論するのか?
人間は亜社会性の生き物です。社会をそつなく生きていくには、無暗に他者と対立するのは避けるべきでしょう。言いたいことも言えないこんな世の中じゃと思いながら、言いたいことばかり言っていると、私のように無職になってしまうというリスクがありますからね。気を付けましょう。
とはいえ、物事には限度があります。他者との一切の衝突なく、相手の思い通りに動いてしまっていては自分の人生を生きることは出来ません。そこで、反論することが必要なのですが、反論の効果は大きく以下の二つに分かれます。
✅自らの利益を守るため
✅自らと相手の利益を守るため
それぞれ解説していきましょう。
自らの利益を守るため(話が通じない相手のパターン)
世の中の人間、すべての人が話せばわかるとは限りません。
たまたまヒトの形をしていて、人語らしき音声を発する水風船か何かだと思うと良いでしょう。ヒトは50%以上がH2Oで構成されているのであながち間違いではないと思います。
話の通じない人については、下記のリベ大動画も参考にしてみてください。
関わってはいけない人と紹介されてますが、概ね話が通じない人たちです。
さて、こんな人達を相手にしたくないとは思いますが、相手の言うことを聞き続けるのもしんどいのでやむを得ずに反論するのも手段の一つとして持っておくといいと思います。
特に、私の経験上では自分と他人の境界線がない人は反論せざるを得ないパターンになることが多いです。
具体的には助けてあげると
✅助けてあげる⇒借りができた⇒自分をバカにしている⇒攻撃してやる
✅助けてあげる⇒自分のことを好きに違いない⇒何でも言うことを聞くだろう⇒過度な要求をしてくる
のようにおよそ常人には理解不能な思考回路をしているヒトも残念ながら存在します。
相手の利益も守るため(対話ができる相手のパターン)
さて、こちらのパターンが本記事の主題です。前パターンは相手と良好な関係を築くつもりが皆無なので、どのような伝え方をするかはさほど重要ではありません。どうせ仲が悪くなるので自分の精神衛生と身の安全だけに注意をしてください(過度に仲が悪くなると、物理的に害を受ける可能性にはお気を付けください)。
一方で、話が通じる相手に反論する場合は論点や伝え方を明確にする必要があります。いわゆる建設的なディスカッションってやつですね。
反論の7つの段階
プログラマーのポール・グレアム氏のエッセイによると反論は7つの段階に分類されます。
同氏によると下記の図の上に行くほど良い反論、下に行くほど悪い反論となります。順番に紹介していきます(図とは日本語表現を少し変更しています)。
出展|Wikipedia
Yuasan, Paul Graham - translated from File:Graham's Hierarchy of Disagreement-en.svg, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107026369による
レベル0 単純罵倒
最も悪い反論です。ただ単純かつ感情的に悪口を言っているのであり、反論ではありません。
例:「君は本当に頭が悪いね」
レベル1 人格攻撃
相手の主張の内容そのものではなく、相手の属性や人物像に対しての批判をする方法です。相手そのものを貶めることで、主張をも批判するという手法になります。
例:「君は普段仕事をサボってばかりだから、どうせ嘘をついているんでしょ?」
オレがたとえペテン師嘘つき…あるいは人殺しであろうと 真実は真実…
※残念ながら現実世界では誰が言ったかにより説得力、影響力に大きな差異が発生します。その影響があることを知ったうえで、なるべく上手に判断できるようになりましょう。
レベル2 表現批判
主張そのものではなく、言い方や表現などに対して反論することです。要は文脈における内容ではなく、表現方法やしゃべり方などへの反論の仕方になります。
例:「そんなに偉そうな喋り方では、聞く気になりませんな」
レベル3 単純否定
自分の感覚や感情のみで否定することです。具体的に何が悪いのか、どう間違っているのか、などの指摘はありません。
例:「宇宙人が存在しないという意見は間違っている」
レベル4 反論提示
ここからがまともな反論です。単純否定に理由をしっかりと付け加えたものが該当します。しかし、このレベルでは理由の信憑性が欠けていたり、論理の飛躍が見られたりします。
例:「宇宙人が存在しないという意見は間違っている。何故ならば、宇宙はとても広いからだ」
レベル5 一部論破
明確に間違っている部分に対して、証拠を持って反論することです。具体的にどの部分がどのように間違っているかを示します。しかし、時には本題と関係がなく重箱の隅をつつくような反論の仕方になってしまう可能性もあります。
例:「(綱レベルの分類が必要な場合において)あなたはシロアリをアリとしてカウントしているが、シロアリはハチ目ではなくゴキブリ目であるため、アリの仲間ではない」
レベル6 主眼論破
一番レベルの高い反論の方法です。相手の主張の重要な部分に対して適切な理由を持って反論する形になります。
とはいえ実際には・・・
レベル3以下については中身は反論になっていないので、やってはいけないし、やられても取るに足らない意見として無視して良いでしょう。
では、あなたがレベル6~7くらいの精度の高い反論を相手にした場合に相手は諸手を挙げて喜んでくれるでしょうか?答えはおそらくNoでしょう。
反論と言えば論破?
ここ10年くらいは"論破"という言葉を良く聞くような気がします。
先に言っておきますがいわゆる論破をしてはいけません。論破とは対話というコミュニケーションにおける下策中の下策です。
なぜ論破をしてはいけないのか?
ここでいう論破とは昨今の日本語的な意味の
相手を言い負かすことを指します。
ではなぜ論破してはいけないのか?
それは単純に「言い負かされた相手が不快な思いをする」からです。それがたとえ主眼論破であっても、主張した側は多少の不快感はあるでしょう。
特に相手サイドが「自分の主張=自分自身」という風に思っている場合はとても気分を害することでしょう(多かれ少なかれ主張と人格の同一化の影響はあります)。
そうなってしまうと対話の目的である「着地点を探す」という行為が非常に困難になります。
もちろん裁判などの場合において、自分の主張を通すためには論破することも必要ですが、日常生活においてはやってはいけないということです。
丁寧にディスれ!
結局のところ、相手そのものではなく、相手の主張やコンテンツに対して反論しても、相手は多少は気分が悪くなると思います。
個人的に最近お気に入りの本
にも、批判するときは対象に愛と敬意が必要ってありましたからね。
たぶん大事です。
じゃあどうすればいいのさ?
長々と書いたのですが、なんやかんやで相手のお気持ち次第、人間は感情の生き物ですからね。
最も有効そうなのは相手に意見を聞いてもらえる関係性を築くという身も蓋もない結論に落ち着くことになります。とはいえ、やはり反論の仕方自体も重要なのは間違いないですので、良い反論を出来るようにしましょう。
加えて、自分が反論されたときもそれが良い反論なのか、悪い反論なのかを区別して、耳を傾けたり棄却したりしましょう。
まとめ
✅話が通じない相手には、自分の精神を守るために反論する
✅話が通じる相手には、相手そのものではなく主張に対して反論する
✅ディスるときは丁寧に
✅最終的には相手との関係性が重要
人間誰しも自分の主張と人格を同一視してしまいがちですが、この影響度が強い人ほど対話が困難になってしまいます。
とどのつまり上手に反論するのって難しいよねって話でした(笑)
次回は人格と意見を切り離す訓練についてを書く予定です。良いディスカッションをするには双方がこの訓練をしなければなりませんからね。